2004.01.31

誤字等No.025

【シュミレーション】(替誤科)

Google検索結果 2004/01/31 シュミレーション:155,000件

これまでに登場した誤字等と比べても、トップクラスの勢力を誇る誤字「シュミレーション」の登場です。
この誤字は「simulation(シミュレーション)」の読み間違いですから、「外誤科」に分類することも考えました。
しかし、表記を文字として見た場合は「」と「」が入れ替わっているだけのことですから、ここでは「替誤科」の誤字とします。

この言葉も、「領布」と同様、「間違えて覚えている人」が多いようです。
しかしそれ以上に、「どっちが正解だったかよく分からなくなっている人」が多い誤字であるということが、大きな特徴となっています。
シュミレーション」と「シミュレーション」を混ぜて使う人も珍しくありません。
英語で綴る場合でも「sumilation」あるいは「sumiration」と表記してしまう人がいるくらいですから、それだけ間違えやすい言葉と言えます。

なぜ「シュミレーション」がこれほど大きな支持を集めているのでしょうか。

ひとつには、本家「シミュレーション」自体の登場頻度の高さが原因となっていると考えられます。
日本人はシミュレーションが大好きです。
実際に何かをする前に、模擬的にそれを試してみる。
あるいは、実際にはなかなかできないことを仮想的に体験してみる。
ゲームの世界でもシミュレーションはひとつのジャンルを形成し、古くから人気を博しています。
もはや「シミュレーション」は「日本語」としての地位を確固たるものにしているとみて間違いありません。
シミュレーション」の検索件数(904,000件)が、それを如実に物語っています。
本家の登場回数が多ければ、誤字の方にもそれだけ出場機会が増えるというものです。

他には、「単に、言いやすいから」という原因も考えられます。
雰囲気」を「ふいんき」と読んでいる人のように、「体育」を「たいく」と言っている人のように、あるいは「女王」を「じょうおう」としか発音できない人のように、より「言いやすい発音」に流れてしまう人は、どこにでもいるものです。
そのような人にとって、「シミュ」よりも「シュミ」の方が楽に発音できるのであれば、その人は「シュミレーション」という発音を使うようになり、いつのまにか「それが正しい」と思い込んでしまうことでしょう。

事実、「シミュレーション」には様々な表記バリエーションがあります。
特に「亜種」として後述する「シミレーション」や「シュミュレーション」は、結構な件数がヒットします。
正確には「外誤科」の亜種となりますが、このような誤字がたくさん存在することも、一部の日本人にとって「シミュレーション」が発音しづらい言葉であることの証かもしれません。
おそらく、「ミュ」という拗音が日本語本来の発音系統に馴染みにくいのでしょう。

誤字の原因となる「候補」は、まだあります。
趣味」という言葉の存在です。
シミュ」より「シュミ」が馴染みやすいという人がいる理由として、日本語に既存する言葉である「シュミ」の影響は無視できません。
事例としては、おそらくシャレのつもりでしょう、「趣味レーション」という表記をよく見かけます。
このような言葉遊びをする人は「本当はシミュレーション」であることを理解した上で楽しんでいるものと思われますが、やはり「気付かずに使っている」人も実在する模様です。

さらにもうひとつ。
似たような間違え方をされることの多い「communication(コミュニケーション)」の存在もあります。
これも、「コミニュケーション」と覚えている人が非常に多いですね。
シュミレーション」と肩を並べる、誤字等界の大御所といっても過言ではありません。
そして「シミュレーション」と「コミュニケーション」では、母音の「i」と「u」の順序が逆になっています。
このあたりを混同すると、「シミュ」だか「シュミ」だか「コミュニ」だか「コミニュ」だか、わけが分からなくなってしまいそうです。

[実例]

日本人とは、かくも「入れ替え」に弱いのでしょうか。
このような「入れ替え」が原因と思われる誤字等の品種を、「替誤科(かえごか)」と命名しました。

[亜種]

sumilation:63件
sumiration:16件
スミレーション:10件
シミレーション:1,500件
シュミュレーション:1,550件
シムレーション:96件

前 目次 次