2004.08.05

誤字等No.101

【コミニュケーション】(替誤科)

Google検索結果 2004/08/05 コミニュケーション:49,900件

無事、100回を突破した誤字等の館。
ここはひとつ「原点回帰」ということで、メジャー級の大御所にご登場いただきましょう。
以前に「シュミレーション」の回で軽く言及した、「コミニュケーション」です。

「情報伝達」「意思疎通」などの意味を持つ言葉として一般的に使われている外来語ですが、「コミニュケーション」だか「コミュニケーション」だか分からなくなっているという人は、非常に多いです。
英語でのつづりは「communication」ですから、「コミュニケーション」の方が正解ですね。
ミュ」が拒絶され、小さい「」だけが別の文字に付いてしまう変化は、「シミュレーション」が「シュミレーション」になる現象と同じです。
とかく日本人にとっては、「ミュ」という発音は、どうにも馴染めないようです。

検索結果の中には、「コミニュケーション」と「コミュニケーション」の両方が記載されているページもたくさんあります。
その原因は、単なる打ち間違い以外にも、両者の違いに気付いていない、どっちでも同じだと思っている、など色々と考えられます。

反対に、終始一貫して「コミニュケーション」に統一している人もいます。
それが「正しい表記」であると確信しての行動でしょう。
下手をすると、他人の書いた「コミュニケーション」に対して「間違っている」と指摘していたりもするかもしれません。

特に真面目な「研究論文」で「コミニュケーション」が連続しているのを見ると、どうしても「そこはかとない」哀愁が漂ってしまいます。
研究者なら海外の文献を参考にすることも多いはずなのですが、気付かないものなのでしょうか。
いつか自分の間違いに気付いたとき、その人がどのような反応をするのか、見てみたいような気もします。

ところで、正解が「コミュニケーション」であることを知っていながら、いまひとつ「自信がない」という人も多いと思われます。
ここは、「迷わずに済む方法」をいくつか考えてみましょう。

まず、「駄洒落」を利用する方法があります。
シミュレーション」が「趣味レーション」になったり、「手持ちぶさた」が「手持ち豚さん」になったりするような「下手な駄洒落」は間違いである、と覚えるのです。
コミニュケーション」の場合、酒の力で本音を語る「飲みニュケーション」という駄洒落が存在します。
これは、本来の「コミュニケーション」から発想すると「飲みゅニケーション」という「変な言葉」になってしまいますので、明らかに「コミニュケーション」の方を母体としています。
これにより、「飲みゅニケーション」を「下手な駄洒落」と認識すれば、「コミニュケーション」が「間違い」であると覚えられます。
…ちょっと、まわりくどいですね。次行きましょう。

二番目の方法は、「英語での発音」を意識することです。
英語の「communication」のアクセント位置は「a」ですが、「u」の部分にも小さなアクセントがあります。
なので、その部分を少し伸ばして発音すると、「それらしく」なります。
「コミューケイション」といった感じですね。
さらにその発音を極端にカタカナ化して、「コミウニケイション」としてしまいましょう。
「日本語」として、はっきり「混み・雲丹・経書・ん」と発音して構いません。
流れるように読めば、これで意外と本当の「communication」に近い発音になったりするものです。
このリズムを覚えておくと、「コミュニケーション」が正解であることは自然と理解できます。
コミニュケーション」ではリズムが崩れてしまうので、間違いだと感じられるようになるわけですね。
…納得できませんか?なら、もうひとつご紹介しましょう。

三番目の方法は、「近縁の言葉」を覚えることです。
「共同社会」を意味する「コミュニティー(community)」、「共産主義」に関わる「コミュニズム(communism)」や「コミュニスト(communist)」、「公式声明」という意味のフランス語「コミュニケ(communiqué)」などなど、「コミュニケーション」の仲間と呼べる単語はたくさんあります。
この中のひとつでも確実に覚えておけば、冒頭が「コミュ」となることに自信を持てます。
特に「コミュニズム」と「コミュニスト」は、「ヒューマニズム」や「ピアニスト」などといった馴染み深い外来語と同じ語尾となりますので、抵抗なく受け入れられるものと思われます。
ただし、世の中には「コミニュティー」「コミニュズム」「コミニュスト」などと普通に表記してしまう人もいますので、そういった人にとっては効果がないかもしれません。
そんなときにおすすめなのは、「地方自治体」といった意味を持つ言葉「コミューン(commune)」です。
フランスの民衆が打ち立てた革命政権「パリ・コミューン」などは、歴史の時間に習った記憶がある人もいることでしょう。
そういった歴史は、知らなくても構いません。「コミューン」という言葉さえ覚えれば良いのです。
そこから連想すれば、「コミュニケーション」で間違っていないことが疑いなく理解できるはずです。
無理に「コミニュケーション」と関連付けようとすれば「コミーン」になってしまいますので、「間違い」であることが一発で分かります。
筆者自身、この関連を意識するようになってからは、「コミニュケーション」か「コミュニケーション」かで迷うことはなくなりました。

シュミレーション」と「コミニュケーション」は、並べて語られることも多い、誤字の「定番」です。
正しい表記がどちらなのか、どうしても覚えられない、という人は「カタカナ語」全般に対して苦手意識を持っているかもしれません。
しかし、定番だからこそ、「気付かれやすい」誤字とも言えるのです。
多くの人が指摘しているにもかかわらず自らの間違いに気付くことのできない人は、「言葉」に対する感性が不足しているとみなされかねません。
その文章を公開する前に、一度冷静になって見直してみてください。
その表記、本当に合っていますか?

[実例]

日本人とは、かくも「入れ替え」に弱いのでしょうか。
このような「入れ替え」が原因と思われる誤字等の品種を、「替誤科(かえごか)」と命名しました。

[亜種]

comminucation:184件
communucation:1,290件
comminication:227件
cominucation:69件
comunucation:10件
cominication:106件
コミニュケイション:246件
コミニュケィション:12件
コミニケーション:19,400件
コミヌケーション:11件
コムニュケーション:21件
コミュニュケーション:3,620件
コミネケーション:2件
コニミュケーション:54件
コニュミケーション:221件
コニミケーション:20件
コニュミュケーション:3件
コミニュティー:924件
コミニュティ:5,550件
コミニュズム:10件
コミニュスト:19件
コミニティー:4,340件
コミニティ:3,250件
コミニズム:72件
コミニスト:90件

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