★配偶者説明責任を果たしましょう-W杯後日談-

 う1年以上前の話になってしまいますが、トホ妻といわんやは昨年6月、W杯日韓大会の2試合のチケットを入手するという幸運に恵まれ、仙台と静岡に観戦ツアーを実行致しました。この観戦旅行の詳細につきましては、すでにトホホ世界紀行にも観戦記を掲載しておりますし、1年以上たった今さらまた新たにW杯ネタ…?と皆様がお思いになるのも当然。しかしその後日談ネタというのが存在することが先頃発覚したわけでございまして…。

 て、御存知の方もおられましょうが、トホ妻の勤務先は外資系。同じグループの会社は日本だけでなく、アジア・アメリカ・ヨーロッパなどに多数存在しております。このようにワールドワイドな事業展開を行っている企業ともなりますと、いわゆる社内報というのもたいそう国際的でございまして、世界中のグループ企業の動向やトピックなどが英語の冊子としてまとめられた、まことに立派な「ワールド社内報」とでも申すべきもの。記事で取り上げられている社員の顔写真をみても実に様々な国、様々な人種が含まれているのでございます。

 の「ワールド社内報」を編集・制作しているのはもちろん日本ではなく、欧州某国にある本社なのですが(たぶん)、その某国本社の社内報制作担当者からW杯タケナワの昨年6月終わり頃、日本支社に向けて連絡がございました。その連絡というのは

1.次のワールド社内報に日韓W杯を観戦した社員の話題を載せたい。

2.ついては、日本支社内でW杯の試合を観にいった者に簡単な観戦記を書いてもらいたい

3.その社員がW杯観戦を楽しんでいる写真があれば送って欲しい

というものでございました。確かにサッカーは世界的にもファンの多いスポーツでございますし、「世界の●●グループの皆さん、お元気ですかー?御存知のように、今ニポーンとコリアではサッカーW杯が開かれてまーす。日本支社に勤めるワタシも先日観戦してきましたー!」といった感じの記事は「ワールド社内報」で扱うにはピッタリと申せましょう。

 本支社内にはW杯観戦経験者が数人いたらしゅうございますが、もちろんトホ妻が仙台で「メキシコ×エクアドル戦」、静岡で「ドイツ×カメルーン戦」を観戦したことも社内では知られておりましたから、「ワールド社内報・W杯観戦記執筆者」の一人としてトホ妻にも白羽の矢が立ったわけでございます。

トホ妻 「ねぇ、それでさぁ、写真も欲しいって言ってんだけど、どうしよう」

いわんや「今回はデジカメで撮った写真があるからバッチリだぜ。添付で送ってやるよ。ドレにする?」

トホ妻 「うーん…そりゃまぁ…やっぱ、いかにもワールドカップーッ!って感じの出てる写真がいいんだろうね。一応、社員であるアタシも写ってないとダメなのかな?」

いわんや「それなら『外国サポーターと交歓するトホ妻』なんてイイじゃん。仙台で撮ったコレとかさ…」

写真1:観戦記にも載せた、メキシコサポーターとハジケるトホ妻

トホ妻 「うーん…これもいいけど、スタジアムとか、観客席とかが写ってるのも送ろうよ」

いわんや「おお、それならこれだ。社員の顔も仙台スタジアムのフィールドもバッチリ写ってるぜ」

写真2:これは初公開の、仙台スタジアムで風に吹かれるトホ妻

トホ妻 「これ…なんか風か吹いて髪の毛が乱れててやだー」

いわんや「うるせーなーもうー。ほんじゃ決定版のコレだな。社員の顔、スタジアム、緑の芝生、しかも照明が輝いてて、いかにも夜の試合って気分出てて、これぁイイ写真だぜー」

写真3:試合開始前の静岡スタジアム最前列でノサバるトホ妻

トホ妻 「まぁコレは送ってみてもイイかもね。とにかく何枚か渡せば向こうで選ぶだろうし。あとホラ、エクアドルサポーター入団儀式のヤツとかさ、仙台で誰かに頼んで撮ってもらったヤツもあったじゃない」

いわんや「でもこれはどっちもオレの顔も写ってるぜ。配偶者の顔まではいらんだろ」

写真4:観戦記にも載せたエクアドルサポーター入団儀式

写真5:仙台スタジアムでオチャラケるトホ妻

いわんや「これは夕方撮ったから少し暗いなぁ…大体、この姿勢は何なんだよ?オレにひっついてオチャラケたポーズとってるコレは?」

トホ妻 「あー、この時はね、風が強くてアタシ吹き飛ばされそうになってたのよ。大変だったんだから」

 …といった調子で写真選びでギャアギャア騒いだ挙げ句、とりあえず目についた写真をフロッピーに落としてトホ妻に渡したのでございますが、その中からトホ妻がどの写真をセレクトして会社に渡したのか、その写真がその後社内でどのような回覧を経た末に、どのように某国に送られたのか、ワタクシが知る由もございません。ワタクシとトホ妻は極秘ジミ婚を実行しておりますから、トホ妻の会社内でワタクシの顔を知ってる人はごく少数。上に掲げました写真4写真5などを見せればたちまち「コレがいわんやサンのダンナさんの顔だ」ということが広くバレてしまうのではないか?とも思ったのですが、まぁトホ妻の社内でナニがバレようとワタクシに影響はございませんし、放っておいたわけでございます。

 の後、日韓W杯の記事が載ったワールド社内報をワタクシもチラリと読ませてもらいましたが、結局最終的に採用されたのは写真3だったはずでございまして、トホ妻の観戦レポートに添える形で小さく掲載されていた…と記憶しております。まぁそれ自体は特にドウということはございません。「ふうん…」という感じでワタクシも送った写真のことなど完全に忘れ、その後ナニゴトもなく1年以上の月日が経過致しました。

 がしかし!この時トホ妻の会社内では恐るべき誤解が生じていたことが最近になって発覚致しました。この誤解が生じた原因はイチにもニにもトホ妻にございます。いやー…人間、ウソをついて人をダマすことも可能ですが、何も言わないことによっても十分に人をダマせるのでございますねぇ…。以下、トホ妻の告白を元に、その“恐るべき誤解”のテンマツを整理致しますと…。

 ールド社内報に載せる候補の写真をフロッピーごとトホ妻が会社の担当者に渡し、その写真をデジカメプリントで出力したものを担当者が机の上に置いていた2002年の夏のある日。“わんやサンのダンナさんの顔”を知っているごく少数の同僚のうちの一人…仮にA子サンと致しましょう、A子さんがその写真をたまたま発見し、その中にある写真4を見て「あ、これ、いわんやさんといわんやダーリンの写真ですね」と言ったところから全ての誤解はサラケ出されたのでございます。

同僚1 「ええッ?!どれどれ?ドレがいわんやサンのダンナさん?」

A子さん「え?だからホラ、これ。このいわんやサンの左にいる、メガネかけた人ですよ」

その時モンダイとなった写真4(再掲)

同僚1 「うそぉーッ!このヒト日本人だったのぉーッ?!アタシ、てっきりこの人もエクアドルから来たサポーターなんだと思ってたー!!」

同僚2 「アタシもそう思ってたー!この隣のヒト、エクアドル人じゃなかったの?」

A子さん「違いますよー!いわんやダーリンですよーこのヒトは」

同僚3 「えええッ?!アタシも、いわんやサン一人がエクアドル人に囲まれてるんだと思ってたー!」

同僚4.5.6…「アタシもーッ!アタシもーッ!!!(同様の驚きの声多数)」

 …ええ、ええ、そりゃね?確かにワタクシはあまり日本人っぽくない顔でしょうし、「これがアタシのダンナよ」と同僚に自慢できるようなシロモノでもございませんよ。ドロボウヒゲなんか生やしてる上に背だけはミョ〜に高く、おまけに頭の生え際も後退して…え?それは関係ない?いやそんなことはどうでもイイのです!ここで問題にされなければならないのは、最初に写真を渡す時、トホ妻が何の説明も加えずにこの写真を渡したという事実なのでございまして、そこには「何も言わずに写真を渡せば、みんなは自分の亭主のことをエクアドル人だと勝手に勘違いしてくれるかも…」というシタタカな計算があったことをワタクシは信じて疑いませぬ。

 かにトホ妻の性格から考えて、「えー?いわんやサンのダンナさんの写真?見せて見せてー」などと周りから言われるのはウザい、と考えるであろうことは十分予想されること。しかしだからと言って、同僚たちに自分の亭主をエクアドル人だと思い込ませておこう…などと大胆なことを考えますか?フツー。そこまでして「これがアタシの亭主である」という“配偶者説明責任”を回避するとは、何という曲がりくねった根性であることか!しかもらはウソつきの汚名を着ることなく、意図的に“配偶者説明責任”を回避することによってこれだけ多くの人をダマしてしまうとは…何という陰湿な手口!

いわんや「かーッ!信じらんねー!じゃナニか?会社の連中がオレのことをエクアドル人だと思い込んでるのを知ってて『しめしめ…』と思ってたのかよ!」

トホ妻 「別に『しめしめ』なんて思ってないわよ!アタシは何も言ってないし、何も誘導してないんだから。みんなが勝手にそう思い込んだだけよ。そう思い込ませる顔してるアナタが悪いのよ」

いわんや「…かっ…くっ…!」

 タクシはこの話を聞いて以来、自分の中に猜疑心が芽生えたのをイヤでも自覚しないわけにはまいりませぬ。ひょっとするとトホ妻は過去、スペイン旅行で撮った写真を会社で見せる時はワタクシをスペイン人と思わせ、タンジールで撮った写真ではワタクシをモロッコ人、バリ島で撮った写真ではバリ人と思わせることで「配偶者説明責任を回避」していたのではないでしょうか?トホ妻の亭主としての“存在の耐えられない軽さ”を痛感する今日この頃なのでございます…。

   

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