考古学のおやつ/NEWSLINK

2019年3月20日（水）

大阪市: 中央区・大坂城三ノ丸跡で、秀吉配下の武将・佐竹義宣の大名屋敷とみられる大型建物跡や佐竹氏の家紋「扇に月丸紋」の瓦が出土。鋳型に鉛を注いだ「鋳バリ」がついたままの火縄銃の玉も出土。大阪府教育委員会と公益財団法人大阪府文化財センター3/20発表。3/23現地説明会。[朝日新聞]
兵庫県: 赤穂市・みかんのへた山古墳で、古墳時代中期初頭に築かれたとみられる円墳1基を新たに確認。みかんのへた山2号墳。直径12m。赤穂市教育委員会3/20発表。3/24現地説明会。[赤穂民報]
島根県: 浜田市・浜田城で二ノ門の礎石と炭化した柱の一部が出土。二ノ門の遺構を確認するのは初。浜田市教育委員会3/19発表。3/24現地説明会。[山陰中央新報]
香川県: 高松市・勝賀城跡の現地見学会は、予定していた3/21の天候不良が予想されるため、3/23に延期。[高松市]
佐賀県: 伊万里市・大川内鍋島窯跡の日峯社下窯跡で、鍋島焼の初期の陶片80点。伊万里市教育委員会の調査。3/24現地説明会。[佐賀新聞]
韓国: 高霊池山洞古墳群で、5世紀後半の大加耶の小型石槨墓から、絵が描かれた土製鈴。男性器、カメの甲羅、冠をかぶった男、踊る女性などを描く。三国遺事に収録された駕洛国記が記す建国説話を表すと推定。加耶の一国・大加耶の墳墓。[聯合ニュース]
イラン: シャフリ・ソフタ遺跡（Shahr-i Sokhta）で4000年前に、地位の象徴であるアカゲザル（Rhesus macaque）を、ヒトの小児と同様の土坑に、ヒトの小児の埋葬に用いられる土器とともに埋葬。ペットの最古の例の一つ。
A pet monkey was buried some 4,000 years ago with same rites as humans[Nature]
▼シスタン・バルチスタン州（Ostān-e Sīstān-o Balūchestān）
イスラエル: エルサレム（Jerusalem）ダビデの町（City of David）で、エジプトのベス神（Bes）の顔を表したペルシャ時代・紀元前5～前4世紀の土器片（Bes-Vessel）。同種の土器がエルサレムやその周辺で発掘により出土するのは初。[The Jerusalem Post]
イスラエル: エルサレム（Jerusalem）の城壁群（Old City Walls）の下の地下トンネルの発掘調査により、初期イスラーム時代のウマイヤ朝の建物が破壊される懸念。[Haaretz]
トルコ: 15000年前以降の人骨8体の遺伝子を分析。アナトリアの最初の農耕民は、同地域の狩猟採集民の遺伝子を引き継ぐ。ほかの地域からの人の大規模移動ではなく、狩猟採集民が農耕を取り入れた生存戦略。メソポタミアで11000年前に発展した農耕は、紀元前8300年ごろにアナトリア（現在のトルコ）に及ぶ。アナトリアの農耕民はその後ヨーロッパ全土に移動し農耕を伝えた。
First Anatolian farmers were local hunter-gatherers that adopted agriculture[Phys.Org]
イタリア: カンパニア州（Regione Campania）チェッロレ（Cellole）、バイア・ドミツィア（Baia Domizia）でローマ時代・紀元前3世紀の男性の墓。[VesuvioLive]
▼カンパニア州（Regione Campania）カゼルタ県（Provincia di Caserta）
チェコ: ウヘルスケー・フラディシュチェ郡（Uherské Hradiště）で、9～13世紀の75体の人骨のY染色体を調査した結果、現在郡内に住む男性11名が、大モラヴィア王国（Veľka Morava；Great Moravian Empire）の貴族の現存する子孫と11世紀ぶりに判明。大モラヴィア王国は830年ごろスラヴ人指導者モイミール1世（Mojmír I）が建国。[Radio Praha]
▼ズリーン州（Zlínský kraj）
ドイツ: エアディング郡（Landkreis Erding）で、新石器時代・アルトハイム文化（Altheimer Kultur）・紀元前3800年～前3400年の集落。[Süddeutsche Zeitung]
▼バイエルン州（Freistaat Bayern）
フランス: ストラスブール（Strasbourg）でローマ時代・2世紀の墓地。土器棺や副葬品、火葬跡、薪など。[The Connexion]
フランス: ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏（Pays de la Loire）ルゼ（Rezé）のサン・ピエール広場（Place Saint-Pierre）で中世前期の墓地。[Ouest-France]
▼ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏（Pays de la Loire）ロワール＝アトランティック県（Loire Atlantique）
フランス: ヴァール県（Var）トゥーロン（Toulon）の大聖堂（Notre-Dame-de-La-Seds）の中庭で洗礼堂跡。[Var-Matin]
▼プロヴァンス＝アルプ＝コート・ダジュール地域圏（Provence-Alpes-Côte d'Azur）
UK（イングランド）: ノーサンバーランド州（the county of Northumberland）ウーラー（Wooler）のタンカービルアームズホテル（Tankerville Arms Hotel）の建設工事で、青銅器時代の石棺から4000年前の屈葬された人骨。[Northumberland Gazette]
UK（イングランド）: ヨーク（York）のクイーン・ストリート（Queen Street）で1877年まで使われた鉄道の駅跡を発見。プラットフォーム、ターンテーブル、排水溝などが遺存。鉄道王ジョージ・ハドソン（George Hudson）が提案、ジョージ・タウンゼント・アンドリュース（George Townsend Andrews）が設計、鉄道の父ジョージ・スチーブンソン（George Stephenson）が建設。[Minster FM]

2019年3月19日（火）

イエメン: サヌア（Sana’a）で2000年前の青銅の板。見つかったサバ語の銘文は、未知の神「Athtar Harman」に捧げられた未発見の神殿について記す。[LiveScience]
ドイツ: マクデブルク（Magdeburg）でマクデブルク中央駅のトンネル建設現場から、様々な傷を負った人骨。16～17世紀の土器や、発射されたマスケット銃の弾を伴い、30年戦争当時の遺体と推定。[Deutsche Presse-Agentur]
▼ザクセン＝アンハルト州（Land Sachsen-Anhalt）
フランス: ポルト・ダヴァル（port d’Aval）でアミアン（Amiens）の城壁。[Courrier Picard]
▼オー＝ド＝フランス地域圏（Hauts-de-France）ソンム県（Somme）アミアン郡（Arrondissement d'Amiens）
UK（イングランド）: カンブリア州（Cumbria）コッカーマス（Cockermouth）ブライドカーク（Bridekirk）でローマ時代・2～3世紀の硬貨、土器、窯、さらに床暖房システム「ハイポコースト」（hypocaust）に用いるタイル。近くのパップキャッスル（Papcastle）にあったローマ時代の集落に供給するタイルを製造した場所か。がれきの中に中世のものとみられる保存の良い人骨。CFA Archaeologyの調査。[Cumbria Crack]
エジプト: ルクソール（Luxor）の墳墓TT123で、4m以上の深い井戸の下で別の墓。第3中間期～古代エジプト末期。7体の遺体出土。これまでに記録されていない墓であるが、20世紀の遺物も出土し、20世紀に発掘した墓の可能性。[MENAFN]

2019年3月18日（月）

奈良県: 奈良市・平城京跡の左京六条三坊十二坪で、東堀河を行き交った船の荷揚げ場「舟入(ふないり)」とみられる奈良時代の遺構。奈良市埋蔵文化財調査センターの調査。[奈良新聞]
韓国: 蔚山市北区大安洞の製鉄遺跡で、炉や送風施設のほかに、石を平らに敷いて鉄を鋳造するための型を固定する施設を確認。蔚山発展研究院の調査。[聯合ニュース]
オーストラリア: B型肝炎ウイルス（Hepatitis B virus）の遺伝子情報により、オーストラリアへの人類の移動時期を推定。オーストラリア大陸とほかの地域の初期人類とは5万9千年前に分かれ、ティウィ諸島（Tiwi Islands）あたりからオーストラリアに入った。[EurekAlert]
イラク: クルディスタン地域（Kurdistan）のクナラ遺跡（Kunara）で紀元前2200年ごろの裕福な集落。楔形文字を記す粘土板出土。ルルビ人の首都の可能性。Archéologies et sciences de l’Antiquité (ArScAn)の調査。
Une riche cité découverte aux portes de la Mésopotamie[CNRS Le Journal]
イスラエル: コラジン遺跡（Korazim National Park）でタルムード時代（Talmudic Period）・4～6世紀のモザイク床のあるワイン圧搾場。[The Jewish Press]
オーストリア: ブルゲンラント州（Burgenland）アイゼンシュタット＝ウムゲーブング郡（Bezirk Eisenstadt-Umgebung）ミュレンドルフ（Müllendorf）でローマ時代の集落跡。[BVZ]
UK: キャドバリー社（Cadbury）の「金属探知機を手に取り」宝を掘りだそうというキャンペーン企画が、違法な発掘を是認しているという考古学者たちからの批判は続く。キャンペーンでは金属探知機の使用に対して厳しいアイルランドの遺跡を引き合いに出し、それでいて遺跡の写真が別遺跡という場合も。キャドベリー側は、違法行為を促す意図はなく、その事実を反映するようにウェブサイトを書き換えると釈明。[BBC]
エジプト: マルサ・マトルーフ（Marsa Matruh）沖の地中海からヘレニズム時代から20世紀までの様々な大きさ・様式の石・鉄・鉛製などの碇。北アフリカ、エジプト、ギリシャ、イタリア、スペイン、パレスチナの土器。[Luxor Times]

2019年3月17日（日）

富山県: 富山市・水橋池田舘遺跡で、中世末～江戸時代初めごろの屋敷地。二重の堀や井戸、柱穴などを確認。財団法人富山県文化振興財団の調査。[中日新聞]
インドネシア: パプア州（Papua Province）のスロブ山（Mount Srobu）の、石灰岩の岩盤に掘り込み、貝塚で覆った巨石文化・3000年前の墓地に、装飾的な石彫人物像。高さ3フィート程度。巨石文化の人体表現は概して単純なのに対し、この人物像は異例に複雑。しゃがんだ姿勢はパプアの首長のミイラにも通じ、先祖の重要人物を表した可能性。Papua Archaeological Centerの調査。[Archaeology Magazine]
オマーン: ハラニヤート諸島（Al Hallaniyah）のソドレ難破船遺跡（Sodré）で、ポルトガルのバスコ・ダ・ガマ（Vasco da Gama）の艦隊から2014年に出土した円盤は、16世紀初め、世界最古の航海用の天体観測器アストロラーベ（Astrolabe）と判明。An Early Portuguese Mariner's Astrolabe from the Sodré Wreck‐site, Al Hallaniyah, Oman[Wiley Online Library]
ヨルダン: アル・ラムサ（Al Ramtha）のSheikh Khalilat Al Turrahで、オスマン朝・19世紀のモスクが豪雨のため壁が崩れる。ドームを支える柱の一部に、ラメセス2世の治世・紀元前1272年のヒエログリフの入った石材を再利用。[The Jordan Times]
ロシア: クバン（Kuban）でボスポロス王国（Bosporan kingdom）・27～28年のスタテル金貨出土。ボスポロス王国は、クリミア半島東部、アマン半島、アナパ、ノヴォロシースク、クバン川下流、東アゾフ地域、ドン川のデルタ地域を支配した。[Archaeology News Network]
イタリア: プーリア州（Puglia）バーリ県（Provincia di Bari）チェーリエ・デル・カンポ（Ceglie del Campo）で紀元前4世紀のギリシャ人の墓地。[Archaeology News Network]
ベルギー・ドイツ: 骨のコラーゲンに含まれる炭素、窒素、硫黄の同位体比を分析。ネアンデルタール人と現代人の食生活は似ている。[Archaeologie Online]
UK: チョコレートメーカーのキャドバリー社（Cadbury）が企画したリアル宝探し企画について、考古学者のエミリーさん（@emilyrjohnston）が、考古学的成果や遺跡保護などを考慮せず、遺跡破壊を子供たちにそそのかすような内容であるとして批判。さらにHeritage Daily（ @HeritageDaily ）をはじめとして、いくつも疑問や抗議の声が挙がる。
エジプト: ナイル川床の失われた都市トニス・ヘラクレイオン（Thonis-Heracleion）で見つかった難破船が、ヘロドトス（Ηρόδοτος；Herodotus；前485ごろ～前420年ごろ）が紀元前450年ごろにエジプトを訪れた時の記述に合致。[The Observer]
▼ヘロドトス『歴史』巻2 §96に該当

2019年3月16日（土）

北海道: 伊達市・だて歴史文化ミュージアム4/3開館。[北海道新聞]
香川県: 丸亀市・丸亀城南西部の石垣のうち、斜面上部に残された石を撤去する応急工事に3/14着工。2018年10月に崩落。本格復旧工事は2023年度完了見込み。[朝日新聞]
▼丸亀城関連記事→2018年10月9日
高知県: 南国市・若宮ノ東遺跡で、東西方向に並ぶ高床倉庫跡3棟。条里制地割と並行。柱穴から出土した土器は8～9世紀。古代の郡衙の「正倉」跡と推定。南国市教育委員会3/15発表。3/17現地説明会。[高知新聞]
▼若宮ノ東遺跡関連記事→2018年10月13日
フランス: ジェール県（Gers）オーシュ（Auch）で、中世の宗教建築の柱頭。[La Dépêche]
▼オクシタニー地域圏（Occitanie）
訃報: ギュンター・ドライヤー博士（Dr Günter Dreyer）3/12死去。エジプト、アッシリア、中東の考古学。[Deutsches Archäologisches Institut]

2019年3月15日（金）

長野県: 高森町・新井原遺跡で銅銭「富寿神宝」。高森町教育委員会3/14発表。[南信州新聞]
堺市: 堺区・大仙遺跡で、室町時代の溝跡。堺市の調査。3/17現地公開。[堺市]
鹿児島県: 天城町・下原洞穴遺跡（したばるどうけついせき：第3次調査）で、奄美最古の隆帯文土器と、同時代の生活跡出土。放射性炭素年代で1万3820年前。天城町教育委員会3/15発表。3/17現地説明会。[奄美新聞]
▼下原洞穴遺跡関連記事→2016年3月15日
韓国: 大田市儒城区・道安地区で、アパート新築予定地から、青銅器時代から朝鮮時代にかけての出土遺物が調査されたものの、文化財庁への報告手続きを終えず、保存如何が最終決定する前に、モデルハウスを開館して分譲の広報が始まる。[聯合ニュース]
▼文化財庁は2024年5月17日から国家遺産庁
台湾: 高雄市・鳳山県旧城（左営旧城）で、4000年前の台湾原住民の遺物。成功大学考古学研究所の調査。[中央通訊社]
オーストラリア: ヴィクトリア州（The Crown State of Victoria）ウォーナンブール（Warrnambool）のモイジル遺跡（Moyjil）で、間氷期・13万年前～11万5千年前にヒトが生活した可能性。貝殻の堆積や焼けた石。従来考えられていたオーストラリアの人類到達時期よりはるかに古い。[Deakin University]
▼モイジル遺跡関連記事→2019年3月5日
ヨルダン: マケラス（Machaerus）の砦が、50年に及ぶ発掘を終え、修復事業へ。聖書に登場する、エルサレムを守る砦。[The Jordan Times]
マルタ: シャーラ（Xagħra）にあるブロホトルフ・サークル（Brochtorff Circle）の放射性炭素年代からみて、マルタ島の新石器文化がゼブージ期（Żebbuġ）・紀元前4000年から神殿文化（Temple culture）・紀元前2500年までの繁栄と安定の後に突然終焉を迎えた。タルシーン期（Tarxien period）・紀元前3150～前2500年にウシやヒツジの遺存体や漉し器、土器が豊富なことは、ミルクやチーズの生産を示す。[Malta Today]
ドイツ: ウッカーマルク郡（Landkreis Uckermark）プレンツラウ（Prenzlau）で中世のダムなど、古い港の遺構。[Nordkurier]
▼ブランデンブルク州（Land Brandenburg）ウッカーマルク郡（Landkreis Uckermark）
ベルギー: ゴイエ洞窟群（Grottes de Goyet；Grotten van Goyet；Goyet caves）第3洞窟、スピー洞窟（Grotte de Spy；Cave of Spy）の出土人骨が含む安定同位体によって、ヨーロッパの最後のネアンデルタール人と最初の現代人の食生活と移動性が明らかに。
Stable isotopes reveal patterns of diet and mobility in the last Neandertals and first modern humans in Europe[Nature]
フランス: マンシュ県（Manche）シェルブール＝アン＝コタンタン（Cherbourg-en-Cotentin）ノートル＝ダム広場（la place Notre-Dame）で中世・11世紀の墳墓から保存の良い人骨。周辺に10世紀～11世紀の墓地がある可能性。また、ガロ＝ローマ時代の石造りの大規模な遺構2基が並行。ローマ時代のタイル、土器、イノシシの牙、貝殻など。古代都市Corialloにおける公共建築物。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。[La Manche Libre]
▼バス＝ノルマンディー地域圏（Basse-Normandie）マンシュ県（Manche）
イベリア半島: イベリア半島の紀元前6000年～紀元後1600年の人骨約403体、ほかの地域の古人骨1000体、現代人2900人の遺伝子を調査。その結果、青銅器時代・紀元前2500年以降は中央ヨーロッパの鐘状ビーカー文化（Bell Beaker culture）の人が到来し男系の遺伝子が100%入れ替わっていた。暴力が用いられた明らかな証拠はないが、男性中心の社会構成になった可能性。また、イスラーム勢力がイベリア半島を占めていた時代（711～1492年）は出自が北アフリカとイベリア半島とで半々の場合が多いが、現在では北アフリカの出自は5％。現在のイベリア半島のヒトの50％は新石器時代の農耕民、25％は狩猟採集民、20％はステップ地帯のヒトに出自。[BBC]
UK（スコットランド）: オーバン（Oban）沖で、ロボットにより沈没船2隻を調査。1942年に沈んだタリア号（Thalia）と1918年に沈んだマダム・アリス号（Madame Alice）。Scottish Association for Marine Scienceの調査。[BBC]
▼アーガイル（Argyll）
アイルランド: オファリー州（County Offaly）ノックドリン（Knockdrin）で、青銅器時代・紀元前1750年に沼地にバターを保存。従来の知見よりも1500年古い。ほかにも4か所の青銅器時代にさかのぼる例を確認。沼地は低温で酸素が少なく酸が強い環境が、食糧の保存に適す。[The Irish Times]
アイルランド: アイルランドのボグ・バター（bog butter）について、安定同位体分析（stable Isotope analysis）と放射性炭素年代測定（radiocarbon dating）。乳脂肪（dairy fat）は動物性で、大半は反芻動物由来。ボグ・バターの伝統は初期青銅器時代・紀元前1700年から17世紀まで3000年に及ぶ。ボグ・バターはアイルランドやスコットランドに見られ、容器などに入れたバターを人為的に沼地に埋めたもの。
Jessica Smyth, Robert Berstan, Emmanuelle Casanova, Finbar McCormick, Isabella Mulhall, Maeve Sikora, Chris Synnott & Richard P. Evershed "Four millennia of dairy surplus and deposition revealed through compound-specific stable isotope analysis and radiocarbon dating of Irish bog butters" Scientific Reports. volume 9 [Scientific Reports]
USA: メリーランド州（State of Maryland）アナランデル郡（Anne Arundel County）のベルヴォア・プランテーション（Belvoir plantation）で出土した200年前のパイプから得られた女性DNAは、西アフリカ、シエラレオネ（Sierra Leone）のメンデ族（Mende）に一致。ベルヴォアの奴隷の子孫たちとも比較したが、血縁者は見つからず。[WTOP]
▼メリーランド州（State of Maryland）アナランデル郡（Anne Arundel County）クラウンズビル（Crownsville）
農耕と発音: 農耕が始まって軟らかい食べ物を食べることで、顎の形や歯並びが変化し、遅くとも4000年前には「f」や「v」などの唇歯音（labiodental）が発音できるようになった。言語学者の故チャールズ・ホケット氏（Charles Hockett）が1985年に発表した、狩猟採集民に唇歯音がなかったとする仮説をコンピュータ・シミュレーションで証明。また狩猟採集民と農耕民の間で唇歯音の頻度を比較して傍証。
Ancient switch to soft food gave us an overbite - and the ability to pronounce ‘f’s and ‘v’s[Science]

2019年3月14日（木）

韓国: 国立海洋文化財研究所、済州島民俗自然史博物館、釜山海洋自然史博物館が、海洋文化遺産の活用と公共機関社会貢献事業活性化のための学術交流業務協約を締結。それぞれが所在する木浦、済州、釜山の海洋文化遺産の価値を積極的に普及。共同展示、共同学術調査研究・保存事業、学術情報の交流・諮問、施設協力など。[WP]
中国: 内モンゴル自治区西部の春秋戦国・秦・漢時代の長城のうち、現存するもの主に漢代のもの。[新華社]
インドネシア: フローレス島（Flores）・リアンブア洞穴（Liang Bua）で出土したネズミの骨の大きさの変化により、ホモ・フロレシエンシス（Homo floresiensis）が生息した10万年前から6万年前にかけて周囲の環境が変化したことがわかる。[EurekAlert]
ヨルダン: ネボ山（Mount Nebo）にあるビザンティン時代・491～640年の修道院で、遺体の歯のエナメル質を同位体分析。47％が地元の人ではないと判明。巡礼地としてさまざまな人を受け入れていたことを実証。
cf. Margaret Judd, Lesley Gregoricka and Debra Foran "The monastic mosaic at Mount Nebo, Jordan: biogeochemical and epigraphical evidence for diverse origins" Antiquity, Volume 93, Issue 368, pp. 450 - 467 [Cambridge Core]
イスラエル: ネゲヴ（Negev）のハルザ（Halutza）で300年ごろのギリシャ語の銘文。この都市の歴史的な地名「エルサ」（Elusa）を記す。遺跡自体からこの名の考古学的証拠が見つかったのは初。[Israel Ministry of Foreign Affairs]
フランス: オクシタニー地域圏（Occitanie）ガール県（Gard）ユゼス（Uzès）で直径76mの環状列石（cromlech）。敷石は280～300枚と推定。南フランスでは最大級。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。[ViàOccitanie]
デンマーク: シェラン島（Sjælland；Zealand）北西部で、Google Earthの衛星画像により柵、墳墓、工房、ロングハウスなど。このうちロングハウスはヴァイキング時代に典型的なデザイン。遺構に用いた木材が腐っても、地表の色の違いとなって表れている。Museum Vestsjællandの調査。[The Copenhagen Post]
UK（イングランド）: ヘンリー8世の軍艦メアリー・ローズ（Mary Rose）内で発見された、フランスに対するソレントの戦い（Battle of the Solent、1545年）で死んだ人骨8体を分析。2名は地中海地域、2名はアフリカ系。うち「ヘンリー（Henry）」と名付けられた1名は、骨の化学分析により英国で生まれ育ったが、遺伝子分析からは少なくとも片親がモロッコまたはアルジェリアの出身と推定。また、英国人とみられていた射手の遺体もアフリカ系と判明。テューダー朝の国際性が明らかに。メアリー・ローズ博物館（The Mary Rose）の研究。[The Independent]
▼軍艦メアリー・ローズ関連記事→2015年9月9日
UK（イングランド）: ウィルトシャー州（the county of Wiltshire）ダーリントン・ウォールズ（Durrington Walls）で見つかった、後期新石器時代・紀元前2800年～前2400年の饗宴で用いられたブタ131体を同位体分析した結果、ブリテン各地からのブタであることが判明。ストーンヘンジ（Stonehenge）周辺の饗宴に全ブリテンから参加者が集まっていたことが明らかに。
Multi-isotope analysis reveals that feasts in the Stonehenge environs and across Wessex drew people and animals from throughout Britain[Science Advances]
UK（イングランド）: グロスタシャー州（the county of Gloucestershire）グロスター（Gloucester）で中世・1268年に建てられ16世紀に解体された建物跡。[BBC]
同位体比: ストロンチウム（Strontium）の豊富なライムを、カルシウムが乏しい、またはない地域で栽培すると、その地域の地表の水や植物のストロンチウム同位体比が根本的に変化すると判明。現代の地域ごとのストロンチウム同位体比は、先史時代とは大きく異なっている可能性。ストロンチウム同位体比は、遺物の由来や、人の移動の推定に利用されているが、誤った前提の上で利用されていたことになる。例として、デンマークの青銅器時代のエクトヴィズガール（Egtvedpigen；Egtved Girl）とSkrydstrupの女は、分析によってデンマークから遠く離れた土地の出身とみなされてきたが、実際には埋葬地から10km以内のストロンチウム同位体比を示している可能性がある。デンマークのオーフス大学（Aarhus Universitet；Aarhus University）の研究。
Strontium isotope maps are disturbed by agricultural lime[ScienceDaily]

2019年3月13日（水）

名古屋市: 名古屋市博物館が、展示・収蔵容量不足や施設の老朽化が進んでいるため、拡張を含めた再整備へ、名古屋市の方針。[中日新聞]
堺市: 大山古墳（だいせんこふん：仁徳天皇陵）の第1堤の東南部で、年内の手がかりとなる円筒埴輪出土。430年ごろ。宮内庁と堺市の調査。[読売新聞]
▼大山古墳関連記事→2018年11月22日
奈良県: 大和郡山市・平城京南方遺跡で、平城京の区画と同じ東西方向に延びる道路跡。平城京の「十条」の可能性。大和郡山市教育委員会3/13発表。[共同通信]
▼平城京南方遺跡関連記事→2018年6月8日
福岡県: 飯塚市・内野宿御茶屋跡（第9次調査）で、建物の礎石や井戸など。飯塚市教育委員会の調査。3/16現地説明会。[NHK]
韓国: 慶尚南道昌原市鎮海区薺德洞で薺浦倭館の跡を発見。地形が階段状に整形され、建物跡や陶磁器・瓦を確認。日本との交易のため自由貿易地帯として1407年～1544年の間設置された機関。三浦倭館のうち、遺構が発見されたのは唯一。頭流文化研究院の調査。[東亜日報]
中国: 河南省安陽市で金時代・1159年の高僧の壁画墓。[新華社]
中国: 貴州省貴安新区高峰鎮岩孔村・招果洞遺跡で、3万8千年前から4000年前に至る古人類の活動の痕跡。[中国青年網]
フランス: グラン・テスト地域圏（Grand Est）マルヌ県（le département de la Marne）フォ＝フレネイ（Faux-Fresnay）で、新石器時代・紀元前5000年～前2000年の狩猟用の落とし穴、青銅器時代・紀元前1100年～前900年の集落跡2か所。鉄器時代・紀元前450年～前350年の貯蔵庫、墳墓、祭祀跡。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives]
スペイン: トルカル・デ・アンテケーラ自然保護区（El Torcal de Antequera）のエル・トロ洞窟（El Toro）で出土した新石器時代・紀元前5000年の骨に、歯の跡や、削り取ったり加熱した跡。ヨーロッパ最古の農耕社会で食人が行われていたことを示す。ヨーロッパでこれまでの同様の例は知られているが、マドレーヌ文化・紀元前15000年～前10000年にさかのぼるものだった。
https://www.sciencesetavenir.fr/archeo-paleo/archeologie/en-espagne-il-y-a-7000-ans-des-agriculteurs-cannibales_132077[Sciences et Avenir]
▼アンダルシア州（Comunidad Autónoma de Andalucía）マラガ県（Provincia de Málaga）アンテケーラ（Antequera）
デンマーク: シェラン島（Sjælland；Zealand）スラーエルセ（Slagelse）のBøstrup村で銀貨25枚。大半はデンマークの1587～1650年のもので、デンマーク王フレデリク3世（Frederik III）の治世を含む。そのほかはオランダ、オーストリア＝ハンガリー、ドイツなどの都市や公国に由来。持ち主は不明だが、裕福な商人か司祭の可能性。1656年のこの地域のペストで所有者が死んだか、スウェーデンのシェラン島侵入のため、硬貨を回収できなかった可能性。[The Local]
ケニア: ケニアがユネスコの水中文化遺産保護条約（UNESCO Convention on the Protection of the Underwater Cultural Heritage；2001 Unesco Convention）を批准し、モンバサ（Mombasa）またはマリンディ（Malindi）に同国初の水中文化遺産研究所を設置へ。[The Star]

2019年3月12日（火）

インド: グジャラート州（Gujarat）カッチ県（Kutch District；Kachchh District）ラクパト（Lakhpat）のKhatia村で、ハラッパー文化・5200年前～4600年前の300m×300mの方形の墓地。グジャラートの従来の同様の墳墓は円形か半円形で、方形は初。250基の埋葬。うち26基を発掘し、5000年前の完全な人骨1体を発見。[The Times of India]
トルコ: ニーデ県（Niğde il）アルトゥンヒサル区（Altunhisar district）クヌク（Kınık）で、耕作中にビザンティン時代後期の巨大な壺ピトス（πίθος；pitos）を発見。穀物や食料を貯蔵。[Daily Sabah]
イタリア: パエストゥム（Paestum）で、古代ギリシャの神ポセイドンのドーリア式神殿の近くを発掘調査。紀元前5世紀の建物に属する井戸。井戸から土器、獣骨、炭化木材など、日常生活を表す遺物。[Archaeology News Network]
▼カンパニア州（Regione Campania）サレルノ県（Provincia di Salerno）カパッチョ＝ペストゥム（Capaccio Paestum）
ドイツ: キッツィンゲン郡（Landkreis Kitzingen）レッペレンドルフ（Repperndorf）で紀元前5千年紀前半の若い男の人骨。[Main Post]
▼バイエルン州（Freistaat Bayern）
スペイン: カタルーニャ州（Cataluña）プリウラート（Priorat）マルガレフ（Margalef）のオルト・デ・ラ・ベケーラ（Hort de la Bequera）で、旧石器時代・12500年前の、ヒトと鳥（ツル）を描いた線刻画。これまでのヨーロッパで、旧石器時代のヒトと鳥を描いた絵画は3例しか知られていなかった。[Universitat de Barcelona]
▼カタルーニャ州（Cataluña）タラゴナ県（Província de Tarragona）
ジャージー島: ノワールモン（Noirmont）のラ・ウーグ・ド・ヴァンド遺跡（La Hougue de Vinde）の新石器時代・5000年前のドルメンが、金属探知機で遺跡探しをする人によって毀損される。墓室の中央に金属探知の後に埋め戻した穴。ドルメン全体に狸掘りの跡。ジャージー・ヘリテージ（Jersey Heritage）発表。[Jersey Heritage]

2019年3月11日（月）

台湾: 高雄市・左営旧城で新石器時代中期・牛稠仔文化の土器や、清代の鳳山県旧城の200年前の水門。成功大学の調査。[聯合新聞網]
中国: 広東省河源市東源県藍口鎮・大頂山古墓群は商代後期～西周の古墓群。[人民網]
中国: 貴州省瓮安県銀盞鎮飛練社区の飛練湖明墓の3基のうち1基で、保存状態の良い彩色絵画を持つ漆棺。四神（青龍・白虎・朱雀・玄武）と八卦、双鳳朝陽、盆景花卉、仙鶴などの彩色絵画。買地券も出土し、万暦9年（1581年）の紀年。金属製装身具も出土。[新華社]
ドイツ: ノルトライン＝ヴェストファーレン州（Land Nordrhein-Westfalen）ホーホザウアーラント郡（Hochsauerlandkreis）アルンスベルク（Arnnsberg）で、大戦末期の1945年3月20日から3月23日の間ににナチ部隊によって、武装したポーランド人とロシア人の労働者208人が殺害された遺跡。[euronews]
UK（イングランド）: コルチェスター（Colchester）のマーキュリーシアター（Mercury Theatre）の地下でローマ時代・2世紀の建物基礎とモザイク床、床下暖房施設。そのさらに1m近に、ローマ時代・1世紀のバラック2棟や砦。Colchester Archaeological Trustの調査。[Current Archaeology]
▼エセックス州（the county of Essex）

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