考古学のおやつ/NEWSLINK

2022年4月30日（土）

ヨルダン: ペトラ（Petra）のシュカラト・エル・ファラス遺跡（Shkārat el-Faras）でナバテアの銘文2件発見。
cf. Zeyad al-Salameen, Mahmood al-Faqeer (2022) New Nabataean inscriptions from Shkārat el-Faras, north of Petra. Arabian Archaeology and Epigraphy. [Wiley Online Library]
トルコ: コジャエリ県（Kocaeli il）で、ラテン語で「皇帝の守護者」の銘文の入ったローマ時代の石棺。ディオクレティアヌス帝の護衛ツィアンポ（Tziampo）のもの。[Arkeonews]
イタリア: プラガット（Pragatto）の青銅器時代の集落から2017年に出土した銅合金の短剣10振を分析し、有機物の残滓を検出。コラーゲン、骨、筋肉、筋繊維が確認され、動物の死体を処理するために短剣を用いたと推定。また、レプリカによる実験で、短剣が死体処理に適していることも実証。銅剣は、武器を多数持つ男性の墓、いわゆる「戦士の墓」で出土することが多いため、アイデンティティや地位を象徴する葬送用の遺物とみなされることが多かった。あるいは武器または工具とする説もあった。
Research finally answers what Bronze Age daggers were used for[Newcastle University]
cf. Isabella Caricola, Alasdair Charles, Jacopo Tirillò, Fraser Charlton, Huw Barton, Francesco Breglia, Alberto Rossi, Maria Chiara Deflorian, Anna Maria De Marinis, Susanna Harris, Alessio Pellegrini, Federico Scacchetti, Paolo Boccuccia, Monica Miari & Andrea Dolfini (2022) Organic residue analysis reveals the function of bronze age metal daggers. Scientific Reports, volume 12, Article number: 6101. [Scientific Reports]

2022年4月29日（金）

相模原市: 中央区・当麻遺跡（たいまいせき：第3地点）で縄文時代の大規模集落。竪穴住居跡50軒。多摩川文化財研究所の調査。5/14現地説明会。
縄文時代集落跡の現地説明会[相模原市立博物館]
中国: 河北省涿州市松林店鎮艾潮村で、唐の開元通宝と北宋の政和通宝、合計4000枚の貨幣を埋納。土器に入れて埋められていたと推定。[中国新聞網]
中国: 安陽・殷墟の青銅器時代・商王朝（殷）のさまざまな遺物と、2009年に安陽・王裕口村M103号墓で2009年に出土した土壌サンプルを分析。遺物や棺内の土壌など、すべての赤色は辰砂（cinnnabar）によると判明。史料の記述も勘案して、装飾から葬送まで、辰砂の幅広い用途に対応するため、商時代に辰砂産業が骨器、玉器、青銅器に匹敵するほど拡大。
cf. Jhih-Huei Liu, Yuling He, Weiying Ke, Ming-chorng Hwang, Kuang Yu Chen (2022) Cinnabar use in Anyang of bronze age China: Study with micro-raman spectroscopy and X-ray fluorescence. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 43, June 2022, 103460. [ScienceDirect]
ウクライナ: マリウポリ（Маріуполь；Мариуполь；Mariupol）の博物館で、占領したロシア軍がアルヒープ・クインジ（Архип Куинджи）などの作品2000点以上を持ち去る。[The Insider]
アイルランド: スライゴ州（Sligo）のダートリー山脈（Dartry mountains）にある洞窟で、アイルランド内戦（Irish Civil War）のときの隠れ家から遺物200点以上。1922年にIRAのメンバーが6週間過ごした。[RTÉ]
エジプト: ピートリー博物館（Petrie Museum of Egyptian Archaeology）が所蔵する、古代エジプトの化粧品コール（kohl）11試料を分析。コールは不均質な混合物で、無機質が優勢のもの、無機物と有機物がの混合、不明の3グループに分けられる。無機物、有機物とも、多様な成分が検出。[Arkeonews]
cf. Marabel Riesmeier, Jennifer Keute, Margaret-Ashley Veall, Daniel Borschneck, Alice Stevenson, Anna Garnett, Alice Williams, Maria Ragan & Thibaut Devièse (2022) Recipes of Ancient Egyptian kohls more diverse than previously thought. Scientific Reports, volume 12, Article number: 5932. [Scientific Reports]
USA: テキサス州西部のビッグベンド地域（Big Bend Region）で、古期後半（Late Archaic）にトウモロコシ。従来、トウモロコシの利用は形成期以降とみなされていた。
cf. Bryon Schroeder (2022) Evidence of Late Archaic Maize Use in the Big Bend Region of West Texas. KIVA. [Taylor & Francis Online]

2022年4月28日（木）

滋賀県: 栗東市・北尾遺跡で、6～7世紀の方墳、18～20m。床面に石が敷き詰められた横穴式石室。棗玉出土。栗東市教育委員会4/27発表。[毎日新聞]
福岡県: 大野城市・瑞穂遺跡（みずほいせき）で、弥生時代の甕棺墓群。5/8現地説明会。
瑞穂遺跡発掘調査　現地説明会[大野城市]
▼瑞穂遺跡関連記事→2012年8月9日
鹿児島県: 日置市・一宇治城跡（いちうじじょうあと）で1990年に出土した粉青沙器の破片2点に龍のひれやうろこの文様。朝鮮半島の15世紀のものと推定。日置市教育委員会4/27発表。[南日本新聞]
ドイツ: ノルトライン＝ヴェストファーレン州（Land Nordrhein-Westfalen）ゾースト郡（Kreis Soest）エルヴィッテ（Erwitte）で、後期青銅器時代・紀元前300年～前800年の装身具工房。[Wissenschaft]
フランス: アルプ＝マリティーム県（Alpes-Maritimes）カンヌ（Cannes）沖のサント・マルグリット島（Sainte-Marguerite）の北で、ヘレニズム時代の沈没船「Fort Royal 1」が略奪行為に遭い、紀元前2世紀のアンフォラが盗まれる。[France bleu]
▼プロヴァンス＝アルプ＝コート・ダジュール地域圏（Provence-Alpes-Côte d'Azur）
メキシコ: チアパス州（Estado de Chiapas）・コマラパ洞窟（Cueva de Comalapa）に儀式用に多数の人骨を架けたツォパントリ（tzompantli）。900年～1200年のヒトの頭蓋骨150個。ほとんどが成人で、女性の方が多く、歯は1本もない。
Teorizan que existió un tzompantli en la Cueva de Comalapa, en Chiapas.[Instituto Nacional de Antropología e Historia]

2022年4月27日（水）

中国: 湖南省馬王堆漢墓で出土した帛書に、『刑徳』丙篇を確認。[新華社]
中国: 長江下流域の良渚文化の玉器について、風化などの後にも残存している地質情報に基づき、材料の軟玉（nephrite）の産地を推定。小梅嶺（Xiaomeiling）の軟玉に一致。余杭地域（Yuhang）の集落が軟玉の供給において支配的な立場に立っていたことを示す。
cf. Ping Li, Zongting Liao, Zhengyu Zhou (2022) The residual geological information in Liangzhu jades: Implications for their provenance. Proceedings of the Geologists' Association, Available online 27 April 2022. [ScienceDirect]
ウクライナ: ザポリージャ州（Запорізька область；Zaporizhzhia Oblast）メリトーポリ（Мелітопол；Melitopol）の自然史と考古学の遺跡、カミヤナ・モヒーラの丘（Кам'яна Могила；Kamyana Mohyla）近くでロシア軍が塹壕を掘削。カミヤナ・モヒーラの丘は第三紀のサルマート海の名残の砂岩で、石の下に洞窟65か所があり、後期旧石器時代～中世の岩絵が描かれている。[Радіо Свобода]
イタリア: ベローナ（Verona）のセミナリオ・ヴェスコヴィレ（Seminario Vescovile）で見つかった後期鉄器時代・紀元前3～前1世紀のケノマニ人（Cenomani Gauls）49人（男性23人、女性17人、非成人9人）について同位体分析し、性別、年齢、葬送時の取り扱いと比較。1人は非在地で、ほか5人も非在地の可能性があるが、性別や葬送時の取り扱いによる統計的な差は見いだせず。大半の被葬者は地元出身で、移動性は低いとみられるが、少数の外来者はアルプス出身の可能性がある。
cf. Zita Laffranchi, Arsenio Granados-Torres, Sandra Lösch, Albert Zink, Irene Dori, Antonio Delgado-Huertas, Marco Milella (2022) “Celts” up and down the Alps. Insights on mobility patterns in the pre-Roman/Celtic population from Verona (NE Italy, 3rd–1st c. BCE): A multi-isotopic approach. American Journal of Biological Anthropology.[Wiley Online Library]
▼セミナリオ・ヴェスコヴィレ関連記事→2019年4月18日
スペイン: アンダルシア州（Comunidad Autónoma de Andalucía）セビリア県（Provincia de Sevilla）オスナ（Osuna）で紀元前5～前4世紀の保存の良いフェニキア人（Phoenician）の墓地。石灰岩に刻んだ地下墓8基と階段などを発見。内陸部でのフェニキア人墓地は珍しい。[The Guardian]
UK（イングランド）: ハートフォードシャー州（the county of Hertfordshire）ビショップス・ストートフォード（Bishop's Stortford）で、ローマ時代の人骨と槍先やまきびし「カルトロップ」（Caltrop）。ローマ時代の道路や神殿も。[HertsLive]
北米大陸: 北米大陸における銅の使用に直接関連する76の放射性炭素年代について検討。5500年前（cal BP）と3300年前（cal BP）に銅の使用料のピークがある。北米大陸では9000年前（cal BP）に銅が利用されていたと推定されており、世界で最初に実用の道具製作に銅が利用されたと考えられている。
cf. Michelle R. Bebber, Briggs Buchanan, Jacob Holland-Lulewicz (2022) Refining the chronology of North America’s copper using traditions: A macroscalar approach via Bayesian modeling. PLoS ONE, 17(4): e0266908. [PLOS ONE]
マーシャル諸島: クェゼリン環礁（Kwajalein Atoll）で、第二次世界大戦当時の日本軍の銃や弾薬、兵士の遺体など。クェゼリン環礁は、1944年のフリントロック作戦（Operation Flintlock）で日本兵8000人が死亡した場所。[The Shawnee News-Star]

2022年4月26日（火）

イラン: ファールス州（Ostān-e Fārs）のペルセポリス（Persepolis）にあるタチャラ宮殿（Tachara Palace）で、文様が刻まれた石や浮彫の破片。洗練された水道施設なども。[Tehran Times]
パレスチナ（ヨルダン川西岸地区）: エルサレム（Jerusalem）のアルメニア庭園（Armenian Gardens）で出土した、マムルーク朝（Mamluk）・11～12世紀の円錐形土器の破片4点の内面に残る遺存物を分析して土器の内容物を推定。4点は、装飾、製作技法、型式の違いを反映し、それぞれの機能を持つ。1点には油、1点には香料か薬品、1点は薬品、もう1点は化学物質または爆発物を入れた。
cf. Carney D. Matheson, Cory R. Vickruck, Chris J. McEvoy, Kim K. Vernon, Robert Mason (2022) Composition of trace residues from the contents of 11th–12th century sphero-conical vessels from Jerusalem. PLoS ONE, 17(4): e0267350. [PLOS ONE]
パレスチナ（ガザ地区）: ハーン・ユーニス（Khan Younis）で、紀元前2500年の石灰岩製のアナト女神（Anat）の顔を表した像。[The Times of Israel]
フィンランド: 北ヨーロッパの石器時代・6000年前に大量に作られた粘板岩製の環状装身具は、完形で出土することが稀。加工痕を調べた結果、目的意識をもって折られ、別々に使用された。狩猟採集民によって、社会的な関係の維持や、物々交換、祭祀行為のため用いられた。一部のものはロシアのオネガ湖（Онежское озеро；Lake Onega）で製作され、長距離交易でフィンランドにもたらされた。Friendship ornaments from the Stone Age[Helsingin Yliopisto]
cf. Marja Ahola, Elisabeth Holmqvist & Petro Pesonen (2022) Materialising the Social Relationships of Hunter-Gatherers: Archaeological and Geochemical Analyses of 4th Millennium BC ‘Slate Ring Ornaments’ from Finland. Journal of Archaeological Method and Theory. [SpringerLink]
UK（ウェールズ）: ペンブルックシャー州（Pembrokeshire）ハバーフォードウエスト（Haverfordwest）で、中世の聖救世主修道院（Friary of St Saviours）跡。中世のタイルはフランスからの輸入品。修道院と関連した人骨17体出土。修道院は別の場所に創立され、1258年にこの地点に移転した。[BBC]
エジプト: 北シナイ県（North Sinai Governorate）のテル・エル＝ファラマ遺跡（Tell el-Farama）＝古代都市ペルシウム（Pelusium）でゼウス・カシオス神殿。ペルシウム砦（Pelusium Fort）と教会の間に位置。ゼウス・カシオスは、ゼウス神と、シリアのカシオスが融合したもの。門は大地震で破壊。銘文によると、ローマ帝国のハドリアヌス帝が神殿を修築した。[Asharq Al-Awsat]

2022年4月25日（月）

韓国: 京畿道龍仁市処仁区二東邑西里・龍仁西里高麗白磁窯跡で高麗時代・10世紀後半～11世紀初めの王室用の祭器30点。中国・宋時代の文献「三礼図」や「高麗図経」に登場する「宝」や「籄」に当たる。また、焼成の時に用いる匣鉢も出土。西京文化財研究院の調査。[聯合ニュース]
中国: 鄭州市（Zhengzhou）・青台遺跡（Qingtai）で2015年に出土した新石器時代・仰韶文化の日干し煉瓦積み建物について、日干し煉瓦と、建物内のそのほかの土試料を分析し比較。日干し煉瓦の密度は2.12g/cm。硬度は91HAで、踏み固められた床に次ぐ固さ。日干し煉瓦は植物繊維13.2%を含み、粘土セメントは粒度0.075mm以下のものが90%。ある程度の圧力を加えて作られたもので、同じ建物内のほかのサンプルとは材料も異なる。
cf. Wenjing Hu, Xiaobin Liu, Shiqiang Fang, Xueqiang Chen, Wanfa Gu, Qingli Wei (2022) Research on the building materials of adobe house in the Neolithic period at the Qingtai site, China. Archaeometry. [Wiley Online Library]
▼河南省鄭州市滎陽市広武郷
イラン: ザグロス山脈（Zagros Mountains）のDeh Dumen遺跡で出土した、後期青銅器時代のヒトの大腿骨23試料を分析。性ごとに特有の牧畜行動や、険しい地形での歩行経験を示す。
cf. Justyna J. Miszkiewicz, Tahlia J. Stewart, Reza Naseri, Arkadiusz Sołtysiak (2022) The lifestyles of Bronze Age Zagros highlanders at Deh Dumen, Iran: insights from midshaft femur cross-sectional geometry and histology. Archaeometry. [Wiley Online Library]
イラン: テペ・サグザバード遺跡（Tepe Sagzabad）にあるガレ・テペ（Qareh Tepe）の墓地で出土した鉄器時代II期～III期の円筒印章40点はいずれもファイアンス（faience）製で、在地様式（Local）と新アッシリア様式（Neo-Assyrian）に分けられる。在地様式も、新アッシリア様式の影響下で作られた。多くは女性の墓から出土し、一部は子供の墓から見つかっていることから、鉄器時代III期初めには行政上の使用から離れ、個人用の装身具として用いられ、信仰上の意味も与えられたと推定。
cf. Mostafa Dehpahlavan & Zahra Alinezhad (2022) The Cylinder Seals of Qareh Tepe in Sagzabad, Iron Age II and III. Iran. [Taylor & Francis Online]
スーダン: ヌビア地域（Nubia）のファラス遺跡（Faras）、ガバティ遺跡（Gabati）、メロエ遺跡（Meroe）で出土したメロエ時代（Meroitic Period）・紀元前350年～紀元後350年のガラスを鉛同位体分析。エジプトやレヴァントのガラスやそのほかの遺物、ギリシャやトルコの鉱山試料と鉛同位体比が重なり、ヌビアのガラスが東地中海地域につながる可能性。
cf. Juliet V. Spedding (2022) Lead Isotope Analysis of Meroitic Period Glass from Nubia with LA-MC-ICP-MS. Archaeometry. [Wiley Online Library]

2022年4月24日（日）

中国: 湖南省・馬王堆漢墓から出土した未整理の遺物の中に、未知の刺繍文様が施された織物。[新華社]
▼馬王堆漢墓関連記事→2002年4月29日
ヨルダン: ペトラ遺跡（Petra）にあるナバテア（Nabataea）の岩窟墓8基から得られた試料を分析。コムギ（Triticum sp.）、オオムギ（Hordeum vulgare）、レンズマメ（Lens culinaris）、ブドウ（Vitis vinifera）、イチジク（Ficus carica）、オリーブ（Olea europaea）、ナツメヤシ（Phoenix dactylifera）などの食物を検出。葬送時の食事か、または死者への供物として植物が利用された。
cf. Jennifer Ramsay & Megan Perry (2022) Funerary dining or offerings for the dead? An archaeobotancial analysis of remains from shaft tombs in Petra, Jordan. Levant. [Taylor & Francis Online]
トルコ: アイドゥン県（Aydın il）ナズィッリ郡（Nazilli）の古代都市マスタウラ（Μάσταυρα；Mastaura）で、1800年前の下水道網。人が容易に内部を歩ける大きさで、古代都市全体に及ぶ。[Hürriyet Daily News]
▼マスタウラ遺跡関連記事→2021年2月12日
UK（イングランド）: ケンブリッジシャー州（the county of Cambridgeshire）リットルジー（Whittlesey）で、ローマ時代・2000年前の墓地。火葬墓と土葬墓の都合20基を検出。また、同州ピーターバラ（Peterborough）で、初期青銅器時代の墳丘墓。溝で囲まれ、紀元前2350年～前1600年の襟付土器（collared urn）を用いた火葬墓を伴う。[Cambs Times]

2022年4月23日（土）

長野県: 安曇野市・金掘塚（かなほりづか）から1918年に出土した柄頭に火焔状文の象嵌。鉄に銀線を埋め込む。穂高古墳群の円墳。[市民タイムスWEB]
京都府: 宇治市・ウトロ平和祈念館が4/30開館に備えて、警備費の不足のためクラウドファンディングで寄付を募る。[朝日新聞]
長崎県: 諫早市・千々石ミゲル墓所推定地（第4次調査）で出土した人骨は男性と判明し、墓石に刻まれた年代、出土遺物の年代から、この墓所を千々和ミゲル夫妻の墓と確定。調査した団体が4/23発表。[共同通信]
パプアニューギニア: 本島から200km東にあるブルッカー島（Brooker Island）で、3480年前～3060年前のラピタ人（Lapita）により導入された動物骨や黒曜石。この時点でラピタ人の移動が広範囲に及んでいたことを示す。ラピタ人はアジアに由来し、リモートオセアニア地域に最初に移住した人類として知られている。ビスマルク諸島を経由して、3,100�3,350年前にニューギニア島北東海岸に到達。土器やブタ、ニワトリ、オーストロネシア語を伝えたとされていた。[The Guardian]
cf. Ben Shaw, Stuart Hawkins, Lorena Becerra-Valdivia, Chris S. M. Turney, Simon Coxe, Vincent Kewibu, Jemina Haro, Kenneth Miamba, Mathieu Leclerc, Matthew Spriggs, Karen Privat, Simon Haberle, Felicitas Hopf, Emily Hull, Alana Pengilley, Samantha Brown, Christopher E. Marjo, Geraldine Jacobsen & Brooker and Panaeati Island communities, Papua New Guinea (2022) Frontier Lapita interaction with resident Papuan populations set the stage for initial peopling of the Pacific. Nature Ecology & Evolution. [Nature Ecology & Evolution]
イスラエル: ガリラヤ湖近くのコラジン遺跡（Korazim）で、タルムード時代（Talmudic period）・1500年前の精巧な耳飾りや、青銅製のフォーク。[The Times of Israel]
スイス: ヴァレー州（Canton du Valais；Kanton Wallis）グテット＝フェッシェル（Guttet-Feschel）で、ローマ時代・2000年前の集落。[SRF]
スペイン: アストゥリアス州（Principado de Asturias）エルマソ洞窟（El Mazo）の貝塚遺跡で出土した1500年間の貝類について、酸素の安定同位体分析により海面温度の変化を推定。8200年前の8.2ka寒冷化イベント（8.2 ka event）前後で海面温度が低下し、消費される貝の種類が変化。軟体動物の大きさが減少したことから、人類の軟体動物利用が増加したことがうかがわれる。急激な気候変動に対して大西洋岸が内陸からの避難所になり人口が増加。
Marine mollusc shells reveal how prehistoric humans adapted to intense climate change[Universitat Autònoma de Barcelona]
中石器時代（Mesolithic）
cf. Asier García-Escárzaga, Igor Gutiérrez-Zugasti, Ana B. Marín-Arroyo, Ricardo Fernandes, Sara Núñez de la Fuente, David Cuenca-Solana, Eneko Iriarte, Carlos Simões, Javier Martín-Chivelet, Manuel R. González-Morales & Patrick Roberts (2022) Human forager response to abrupt climate change at 8.2 ka on the Atlantic coast of Europe. Scientific Reports, volume 12, Article number: 6481. [Scientific Reports]
UK（イングランド）: ハドストック（Hadstock）にある聖ボトルフ教会（St. Botolph’s church）のドアに打ち付けてあった、11世紀のヴァイキングの侵略者から剥がされた皮膚とされていたものは、実際は家畜の革。ほか3か所も含めてDNA分析し、いずれもヒトのものではなかった。[IFLScience]

2022年4月22日（金）

和歌山県: 九度山町・入郷遺跡で、鎌倉時代～室町時代の掘立柱建物跡やかまど跡など。中国製青磁碗や羽釜の破片出土。公益財団法人和歌山県文化財センターの調査。[毎日新聞]
中国: チベット自治区（Tibet；西蔵）シガツェ市（日喀則市）リンプン県（仁布県）で早期の岩絵「夏瓦昌岩画」。[中国新聞網]
フランス: ノルマンディー地域圏（Normandie）フルーリー＝シュル＝オルヌ（Fleury-sur-Orne）の中期新石器時代・セルニ文化（Cerny culture）・紀元前5000年のモニュメントの埋葬人骨19体を分析し、14体のゲノムデータを得る。最も古い個体は予想された西ヨーロッパの新石器時代の多様性の範囲内であるが、紀元前4000年以降、遺伝的な外れ値を持つ外来の個体3人が埋葬されており、数世紀にわたって遺伝的に異なる家族または氏族が同じ墓地を利用。分析された14人のうち男性が13人であり、同じ墓に父と息子が埋葬された例もあるなど、父系社会とみられる。残る1名も男性を象徴する遺物を副葬しており、モニュメントに埋葬されるには死後に男性ジェンダーを獲得する必要があったことを示す。
cf. Maïté Rivollat, Aline Thomas, Emmanuel Ghesquière, Adam Benjamin Rohrlach, Ellen Späth, Marie-Hélène Pemonge, Wolfgang Haak, Philippe Chambon, and Marie-France Deguilloux (2022) Ancient DNA gives new insights into a Norman Neolithic monumental cemetery dedicated to male elites. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119 (18) e2120786119. [PNAS]
▼ノルマンディー地域圏（Normandie）カルヴァドス県（Calvados）
スペイン: ブルゴス県（Provincia de Burgos）アタプエルカ（Atapuerca）のエル・ポルタロン・デ・クエバ・マヨール遺跡（El Portalón de Cueva Mayor）で、新石器時代から青銅器時代まで、日常生活と葬送の両方の文脈で出土したイヌの骨130点に、人類による行動の痕跡。長期にわたってイヌの肉を消費していた証拠。新石器時代には例が少ないが、銅石器時代、青銅器時代には頻繁になる。
Halladas evidencias de consumo de perro en Atapuerca
Evidence of dog meat consumption found at Atapuerca[Centro Nacional de Investigación sobre la Evolución Humana, CENIEH
cf. M.Ángeles Galindo-Pellicena, Nohemi Sala, Ignacio De Gaspar, Eneko Iriarte, Raquel Blázquez-Orta, Juan Luis Arsuaga, José Miguel Carretero & Nuria García (2022) Long-term dog consumption during the Holocene at the Sierra de Atapuerca (Spain): case study of the El Portalón de Cueva Mayor site. Archaeological and Anthropological Sciences. volume 14, Article number: 84. [SpringerLink]
▼エル・ポルタロン・デ・クエバ・マヨール関連記事→2021年5月29日
UK（イングランド）: イングランドのアングロ・サクソン時代・5～11世紀の埋葬人骨2023体を分析。同位体比と、副葬品、埋葬姿勢・方向などからみた社会的地位とを比較。社会的地位と蛋白質の消費量に相関関係なし。高位の人物、特に男性ほど肉の多い食べ物を食べていたという想定に反論。[Heritage Daily]
cf. SAM LEGGETT and TOM LAMBERT (2022) Food and Power in Early Medieval England: a lack of (isotopic) enrichment. Anglo-Saxon England, Accepted manuscript, pp. 1 - 33. [Cambridge Core]
USA: フィラデルフィア（Philadelphia）のデラウェア川（Delaware River）近くで古い造船所跡。出土遺物から見て、ウィリアム・ペン（William Penn；1644～1718年）の時代にさかのぼる可能性。[CBS Philly]
▼ペンシルバニア州（Commonwealth of Pennsylvania）

2022年4月21日（木）

東京都: 港区・高輪築堤（たかなわちくてい）について、一部を現地保存するとJR東日本が発表。[時事通信]
▼高輪築堤関連記事→2021年4月21日
神奈川県: 厚木市・及川伊勢宮遺跡（おいがわいせみやいせき）で、中世から近世の地下式抗など。公益財団法人かながわ考古学財団の調査。5/14発掘現場見学会。
【2022年5月14日開催】厚木市「及川伊勢宮遺跡」発掘現場見学会[公益財団法人かながわ考古学財団]
岐阜県: 瑞浪市・竜吟峡の遊歩道で、室町時代・15世紀の古瀬戸の鉄釉四耳壺。瑞浪市教育委員会5/22発表。[岐阜新聞]
京都府: 宇治市・神楽田遺跡（かぐらでんいせき）で、弥生時代後期・3世紀前半の集落。宇治市教育委員会4/5発表。[朝日新聞]
沖縄県: 今帰仁村・百按司墓（むむじゃなばか）から琉球人遺骨を旧京都帝国大学の人類学者が昭和初期に持ち帰ったとして、被葬者の子孫と主張する原告が京都大学に返還を求めた訴訟で、京都地裁が4/21原告の訴えを棄却。[京都新聞]
韓国: 全羅北道長水郡長渓面三峰里の加耶古墳で、石槨墓からかすがい（鎹）、蛇のような装飾のある土器、有蓋長頸壺など。被葬者が高い地位にあったと推定。[聯合ニュース]
オーストラリア: 西オーストラリア州（Western Australia）キンバリー地域（Kimberley）のカーペンターズ・ギャップ（Carpenter’s Gap）とリウィ（Riwi）で、完新世中期（mid-Holocene）～完新世後期（Late Holocene）の先住民の作った繊維の撚糸19点。髪の毛や動物の皮、植物性の材料、鳥の羽毛などを使用。
cf. Jane Balme, Sue O’Connor, Tim Ryan Maloney, Kim Akerman, Ben Keaney & India Ella Dilkes-Hall (2022) Fibre technologies in Indigenous Australia: Evidence from archaeological excavations in the Kimberley region. Australian Archaeology. [Taylor & Francis Online]
リトアニア: シャウレイ（Šiauliai）の十字架の丘（Kryžių kalnas）で火災。放火の可能性も排除できず。[LRT]
ポーランド: ドルヌィ・シロンスク県（Województwo dolnośląskie；Dolny Śląsk；Lower Silesia）ヴァウブジフ（Wałbrzych）で、土器に入った大量の中世・13世紀前半のブラクテアト（bracteate）。ブランデンブルク、ザクセン、シロンスクに由来。イヌのカイトゥシュ君が飼い主との散歩中に発見し掘り出す。過去100年で発見された中では最大の埋納銭。ブラクテアトは薄型の硬貨。[The First News]
▽元記事タイトルの「Howl about that!」って、「ここ掘れワンワン」みたいなニュアンスなのかな？
フランス: タルヌ＝エ＝ガロンヌ県（Tarn-et-Garonne）のモンタストリュック岩陰遺跡（Montastruc）で出土した後期旧石器時代後半・マドレーヌ文化（Magdalenian）の刻線のある石灰岩製のプラケット（stone plaquette）50点を分析。加熱の痕跡を分析した結果、光が少ない条件下で、炉の近くに置かれていた可能性。線刻と揺らめく光でモチーフがダイナミックで生き生きと見えた可能性。
cf. Andy Needham, Izzy Wisher, Andrew Langley, Matthew Amy, Aimée Little (2022) Art by firelight? Using experimental and digital techniques to explore Magdalenian engraved plaquette use at Montastruc (France). PLOS ONE, 17(4): e0266146. [PLOS ONE]
▼オクシタニー地域圏（Occitanie）
USA: 北米大陸の氷床（ice sheets）の南側に人類が到達した年代を調べるため、米国各地の8遺跡について、13000年前以前と以後の土層を比較。氷床より北、ベーリング海地域の初期の遺跡では、14200年前～13000年前の層にヒトの痕跡が現れるが、氷床の南では13000年前以降のクローヴィス文化（Clovis Culture）より以前に土層の乱れは起こっていなかった。したがって、13000年前以前にヒトが氷床を越えて北米大陸を南下したことはないと推定。
UW-Led Study Challenges Theories of Earlier Human Arrival in Americas [University of Wyoming]
cf. Todd A. Surovell, Sarah A. Allaun, Barbara A. Crass, Joseph A. M. Gingerich, Kelly E. Graf, Charles E. Holmes, Robert L. Kelly, Marcel Kornfeld, Kathryn E. Krasinski, Mary Lou Larson, Spencer R. Pelton, Brian T. Wygal (2022) Late date of human arrival to North America: Continental scale differences in stratigraphic integrity of pre-13,000 BP archaeological sites. PLoS ONE, 17(4): e0264092. [PLOS ONE]

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