荻上 紘一 蝉時雨その日暮らしの我が身にも
初日の出西の空には去年の月
日出づる処の天子黄砂舞ふ
尺玉を遠くに聞いて庭花火
神ぞ知る磐井の墓か月かなし
このわたをうるかと宗祇戻し橋 天和
・裏庭に干さぬ蕎麦だにあるものを鯉を食ひなむ菜こそ欲しけれ
・梓弓春まだ浅き信濃路に花より早き桜鍋かな
・つかまれて六腑吐き出す海鼠かな五臓残して元の姿に
・芋は今喉元辺り五臓六腑七転八倒九死一生
・この綿をいくらで売るか言はしたい深酒醒めたら鴉見に来い
・飲めばまた飲む程縮むこの命避けよ避けよといはれながらも
・露おかぬかたもありけり夕立の空より広き武蔵野の原 太田道潅
・庭の面はまだかわかぬに夕立の空さりげなく澄める月かな 源頼政
・世の中に人の来るこそうるさけれとはいふもののお前ではなし 蜀山人
・世の中に人の来るこそうれしけれとはいふもののお前ではなし 百鬼園
荻上紘一
ogiue@niad.ac.jp
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