雑俳

初日の出西の空には去年の月
門松も小さくなりぬ自然保護
祿なくて何の己が福寿草
禄の無き家の庭にも福寿草 
七草も新暦なれば雪の中
虎の子を確かめてみる今朝の春
虎の尾を踏みて危うし今朝の春
今朝の春虎穴に入れど虎児を得ず
初春の楽の音聴くやドナウ河
一夜明け身の引き締まる今朝の春
羽黒山黒山の人初詣
素晴らしい世紀を告げる初日の出
日本を歩き尽くして初日の出
瓢箪の駒が頼みのおらが春
去る者は日々に疎しと寝正月
去る年は未年なり多岐亡羊
去る年や聞鶏起舞が夢のあと
書き初めは「聞鶏起舞」と寝正月
元日に作る今年の辞世の句
去る年の辞世の歌が無駄になり
申年が来る年になる初日の出
七草もハウス育ちの寒さかな
海老三尾目出度くもあり寝正月 
餅食へば腹囲増すなり八王子 
七草で風邪もコロナも寄せ付けず 
風流の初めや今朝の粥の味 
ものぐさを早起きさせる今朝の粥 
去る年を憂しと嘆きて寅になり 
寄福田秀樹:来ただけの甲斐があったと初滑り 
初富士を見返る峠日本晴 

春立つ日富士に二重の雲の笠 
白梅や鐘は墨絵の上野山
香りにて雪と見分ける梅の花
梅の花それとも見えず雪景色
梅を見る間に逆転の棋王戦 
河津では梅より早き桜かな
梅ヶ香や倭王讃珍済興武
金印が春風を呼ぶ志賀島
ニイハオと春風招く鴻臚館
都府楼の春風今に倭の五王
天照に譲りし国の春霞
日出づる処の天子黄砂舞ふ
黄砂舞ふ卑弥呼の国になゐ猛る
国引きのロマンが香る蜆汁
後世に豆腐残して祖来の忌
なまくらの刀を磨く光悦忌
高熱で一日休む清盛忌
今日だけは割り勘にする清盛忌
満開の桜に積もる牡丹雪 
時ならぬ雪に「いいね」と掃部殿 
甲斐の道すもももももも花盛り
甲斐路では桃と桜が咲き競ひ
咲く花を追ひかけ作句昨日今日 
庭の桃始めて笑う暖かさ
桜餅去年の香と今日の味
遠山の桜を賞でし江戸の民
政宗も愛でし三春の滝桜
吹く風や勿来の関の山桜
忠義なり「天勾践・・・」と桜の木
「サクラチル」後一年は駿河台
総長の式辞や花の武道館
春うらら桜こじゃんと工科大
風誘ふ花を遺して泉岳寺
爛漫の花を送るや多摩の丘
清明に桜満開いとをかし 
さても絵にかきおとりする桜かな
花開耶伊都国佐々禮石の宮
外は花前に電脳大欠伸 
石を割る桜が告げる春の音
「日本一最古の桜」弘前城
黄砂舞ひ道も狭に散る桜花 
花筏めだかの上を通り過ぎ
桃咲くや南朝四百八十寺
啄木鳥が柳あをめる川に啼き
「春よ来い」と富士山麓にオウム鳴く
スモッグも句に詠まれれば春霞
春の風邪花粉症かと人は問ふ
若者が愛でるを見れば翁草 
マムシよりコブラに似たり蝮草 
毒のなき花であれかし金鳳花 
海棠の眠り足らざる昼下がり
佐久街道抜けて小諸の花海棠 
春なれや遊女も拝む芭蕉の碑
古寺や甘茶でかっぽれ花祭
街道の躑躅の陰にねずみとり
大小の手鞠揃ふや多摩の丘 
阿漕とて東へ下る西行忌
美女ありて命なりけり西行忌
野点する花の下にて西行忌
五十まで生きて恥ずかし兼好忌
禁客寺日没閉門百間忌
散り残る桜ちらほら四稜郭
藤棚の甘き香りや五稜郭
富山では薬立山蜃気楼
正則も蛙に負ける岩松院
果てしなきよもぎの大地家二軒
壁何処春風渡る国境 
国境を小舟で往き来のどかなり 
麗らかやリオ・グランデの野天風呂 
雪解けを待ち侘びて越す分水嶺
記念碑の谷にナバホの風光る
塩の原直線道路蜃気楼
死の谷の花に恵の春の雨 
春の雨悪魔ゴルフの手を休め 
ブライスの谷の松籟残り雪 
頂上にすばる訪ねて残り雪 
東風吹きて登れぬウルル仰ぎ見る 

衣川緑あふれて義経忌
新緑を食べた毛虫を百舌が食べ
カネモチと見れば垣根がカナメモチ 
名も知らぬ花も立夏の散歩道 
漱石も驚く今の五月祭
業平も三河に来ればかきつばた
機械化で今は聞かれぬ田植え唄
田植え唄下から読んでもたうえうた
田一枚植ゑてしばしの柳かげ
紫陽花の花がきれいなコロナれど 
ワクチンを接種した日の薔薇一輪 
梅雨空に天下が動く寒さかな
梅雨空に眠気を誘ふ蹴鞠かな
梅雨空に蹴鞠眺めて夜もすがら
梅雨空に平家を偲ぶ壇ノ浦
無惨やな梅雨が暴れて愚陀仏庵
はまなすの岬に休む渡り鳥
烏賊釣りの漁火遠く最終便
花かつみ色も形も知らねども
卯の花は咲けど未だに夏は来ず
卯の花や唐紅の瓦屋根
隠元の花咲く頃や禅師の忌
上水で蛍の光見えるまで 
上水に光映して蛍飛ぶ 
ヤマモモもすももも桃も実る里 
寄超高級苺:美人姫一期一会のおもてなし 
昼寝から目覚めてみれば日は西に 
長谷寺や牡丹の陰に観世音
はらはらと牡丹の散りし昼下がり
はらはらと牡丹散りぬるお墓かな
牡丹散って舞台は回る浜松屋
牡丹散って後は野となれ浜松屋
芍薬を愛で百薬の長を飲む 
白鷺の城に牡丹と揚羽蝶
長江に六月無しと人は言ひ
六月の山のドライブ雪の壁 
星繁く昼の熱さを愁ふかな
今日もまた鯖の味噌煮か無縁坂
鳳来寺月が鳴いたか仏法僧
水団を食べて油団に大あぐら
蛇蠍駱駝驢馬猿好吃ロ馬
てんぷらをこはごは食べる家康忌
梔の花は静かにものをいひ
待ち針に名前残して小町の忌
傾城の眠れる墓に虞美人草
天が下時利あらず光秀忌
海の日に山登りする寒さかな
海の日に山登りする天邪鬼
宗匠を迎へて夏の文部省
夕立の空より高き都庁かな
夕立の空突き抜けし都庁かな
暑さ足り栗の実育つ夏のうち 
白き雲遊子は何処千曲川 
涼しさを田の面に映す佐久路かな 
大木に蝉集まりし昼下がり
桐の花月と坊主は今何処
閑さや大国主と夏木立
大樟が語る応神宇美の宮
信玄の国に鮑の干物かな
山の宿朝寝許さぬ蝉時雨
蝉時雨その日暮らしの我が身にも
二声は星が鳴いたか青葉木菟
瓜売りの声懐かしき昼下がり
尺玉を遠くに聞いて庭花火
野辺山に星を見上げる月見草
国のため散りし乙女や仏桑華
朝顔と暑さ喜ぶ仏桑華 
今もなほナバホ緑の地平線
山が呼ぶシェーンの姿大雪渓
雪残る山に「シェーン」が谺して 
バイソンに先導されて夏の旅
バイソンに道ふさがれて夏野かな
湖で遊ぶ篦鹿華氏百度 
雷か加洲の巨木黒焦げに 
山燃えてハーフドームが霞む夏 
記念碑の谷に涙の虹の橋
ユッカ咲く白き砂丘にキノコ雲
蝙蝠の群待つ日暮鍾乳洞
熱砂の地出臍の如き岩ひとつ 
南風吹きて登れぬウルル蠅が飛ぶ 
西空を茜に染めて夏逝きぬ 

七夕の笹に重たき願ひ事
稲妻が大峡谷に架ける橋 
加洲ではブドウオレンジアーモンド 
台風はどこ吹く風と多摩の丘 
朝顔も恐れ入谷の鬼子母神
朝顔は一輪のみとわびの道
秋の句を五線譜に書き友逝きぬ
神々の国に鱸の奉書焼
赤壁の賦に松江の鱸かな
武蔵野は空より広し道灌忌
不覚なり今朝の御膳か盛遠忌
天高く牛馬のどかに大草原
澄む空に響く音色の馬頭琴
西瓜にて喉を潤す休肝日 
梨もげば二十世紀は去年の味
素魚の踊念仏一遍忌
無花果と山吹互に笑ひ合ひ
竜胆の峠に馬の鈴の音
猪の鼻をくすぐる萩の花
鹿の群異国の丘の湯のけむり
龍野には小さき城あり赤とんぼ
龍野なる宿禰の墓に赤とんぼ
葉は何処御仏に問へ曼珠沙華
話する阿礼の宮に曼珠沙華
長崎の鐘常しへに曼珠沙華
川沿ひに彼岸花やら此岸花 
彼岸にも此岸にも咲く曼珠沙華 
文学と古城の街にかんなかな 
台風が吹き清めたる富士の山 
富士の嶺を望む峠に式部の実 
嵐過ぎ紫式部峠道 
近頃は見られぬ大和の女郎花
仁徳も喜びたまふ七竈 
空近く蜻蛉群飛ぶ蔵王釜
花巻の蕎麦が美味しい賢治の忌
龍さんも寅さんもゐて土佐の秋
長城の影を映して月清し
名月が照らす歴史の盧溝橋
天高く嶺を連ねて伏せる龍
天高く馬も我等も飽極了
頤和園の水面を渡る秋の風
広場には毛の写真と菊の花
京劇の空に飛び交ふ流れ星
秋風に吹かれて険し磐錘峰
西安でふりさけ見れば今日の月
名月に凝脂を洗ふ華清の湯
名月を吹き飛ばす気かこの台風
名月を雲と屋根との隙間から 
嵐過ぎ青と茜の江戸の空 
雲の上昇る満月照る夕陽 
満月が照らす峡谷ナバホの地
天の川果つる処に十字星 
神ぞ知る磐井の墓か月かなし
景行を偲ぶ浮羽の秋の風
なにはさへゆめのまたゆめ太閤忌
九十九に一つ加えて定家の忌
宇津谷の団子懐かし許六の忌
その昔秋刀魚獲れたか目黒川
白居易の酒煖めし紅葉かな
寂しさや鹿無き山の紅葉狩
時節柄何を祝ふか水引草 
金木犀昔厠の臭ひ消し 
宗匠を迎へる紅葉多摩句会 
独眼が見下ろす丘の紅葉かな 
ピラミッド逆ピラミッド秋句会 
富士の嶺を軒端にぞ見る秋句会 
句会待つ亀甲竹と萩の花 
かりん植えて句会を祝ふ多摩の丘 
萩咲ける多摩に名句の山築く 
この丘に木口小平のやうな柿 
榠樝の実数へてみれば十三個 
武蔵野は明日も晴れるや落葉風 
春桜十月桜二度さくら 
紅葉の初めや多摩の片田舎 
鴨遊ぶ池に紅葉の映える午後 
知恵伊豆の墓に鴉が集ふ秋
この寺の名前借りたか禅寺丸
柿の実が鐘の音を聞く王禅寺
黄金田にバッタぞなもし蝗跳ね
見つけられ運か不運かこの浮塵子 
蟷螂が土下座して待つ散歩道 
もたいなや踏みつけて行く茶碗蒸し 
一位の実小さき祈り二位の尼
そぞろ寒朝雲暮雨の神女峰
そぞろ寒もっと光を窓の内 
そぞろ寒昭和は遠くなりにけり 
コロナなど知らぬ昔の紅葉かな 
往き来する人まばらなり去来の忌
鈴を振る張合もなし宣長忌
秋の日の暮れ残してや光堂
秋風の吹き残してや富士の山 
鹿仰ぐ崖に四人の大統領
栗鼠遊ぶ悪魔の塔に秋の風
くたばってしまへと眠る蘭の国 

大鷲が渡る峡谷ナバホの地
白頭の鷲悠々と分水嶺 
門守る獅子の頭に散る落ち葉
霜月に咲けど皐月は五月かな 
コロナなど飛ばしてしまへやつでの葉 
寒空に天狗の団扇花盛り 
用ありてちとあの世まで宗鑑忌
芭蕉忌に句を作るこそむなしけれ
東山寝たる姿や嵐雪忌
一日は壁に向かひて達磨の忌
業平の心は何処都鳥
寄山本眞一先生:牛肉を鱈腹食べる神の留守 
空白み時雨しと降る山の宿
山刀伐の子宝地蔵初時雨
このわたをうるかと宗祇戻し橋
このわたをいくらでうるか迷ひ箸
このわたをいくらでうるかいわしたひ
木枯らしが山けふ越えて飛鳥川
冬枯れや考古学者が夢のあと
十国を見渡す峠枯れ野の日
天地の分かれしあたり冬茜
吉良の忌にいつしか雪の南部坂
枯れて尚存在感増す樹冠の葉 
もたいなや鳥も食べずに残る柿 
荒海や佐渡をいろどる波の花
狸汁飲めば思はず腹鼓
昨今は書生が走る年の暮れ
不景気で今年は休む神の旅
漱石も諭吉も走る年の暮
宇宙よりカプセル還り朗人逝く 
寒くても「きぼう」が見える今朝の空 
檀林の僧マスクして修行かな 
神の旅石仏にも会釈して
不景気で底が見えてる社会鍋
寄紅梅の早咲:間違へて師走のうちに灰を撒き 
首筋にトクホンを貼る歳の暮れ
煤掃きを目の前にしてあせるなり
行く年を惜しむ暇さへなかりけり
東山雲こそかかれ義政忌
とどめしは小町の姿遍昭忌
みすずかる信濃路に咲く桜鍋
信濃では鹿を交えて桜鍋
譲られつ譲りつ入る柚子湯かな 
つかまれて六腑吐き出す海鼠かな
八甲田賽の河原の雪だるま
灰ならで雪降り積もる桜島
長野では氷の上のみずすまし
長野では雪と氷とみどりの聖火
珍しや卑弥呼の国の雪景色
景行は何処筑紫の雪景色
大雪やそれでも地球温暖化
新世紀目指しはばたけ都鳥
有明の声聞く今朝の寒さかな
雪吊りを忘れ一枝金木犀
極楽へ急ぎ候大晦日
日の本を巡り尽くして除夜の鐘
除夜の鐘駄句打ち出して子年

一族は紐と虫とに名を残し
下田にて松陰芯まで疲れ果て
芋は今喉元辺り四苦八苦
長岡や無法の誉花楽居士
目出度さもちう位也千年紀
先づ蛇が扉を開く新世紀
日大の正体見たりアメフット 
埃及の埃及ぶやいわきまで 
今日も朝来たを喜び朝ご飯 
明日も朝来るを願つて夕ご飯 
コロナより先に消えるか安と菅 
安も菅も五月に消えろ民の声 
支持率が落ちて彼等の春が逝く 
「忖度」を普通語にした総理去る 
理想 : 国民に尽くした人が親分に 
現実 : 親分に尽くした人が親分に 
石橋を外して菅を植える秋 
菅笠が二階に集ふ船出かな 
初めての所信表明目次録 
カメラより紙等が頼り菅総理 
勝とうにもまともに受けぬ二階席 
コロナでもまだ庭園は閑かなり 
幸くものは花ばかりなりコロナの世 
木星と土星接近金曜日 
信濃には海こそなけれ海ノ口 
二度で済む「かな」を四度も叩く「KANA」 
年俸と年度で暮らす偉い人 
月給と曜日で暮らす只の人 
菅邸と府省不随になりにけり 
人を喰ふ人が食む牛草を食む 
菅下りて株が上がった金曜日 
町田の酒 : 尾根桜太古のめざめ禅寺丸 
まさかやぁ告訴変じて国葬に 
寄カナダ産松茸:食卓の香りは遥かカナダより 
日本では大人が騒ぐハロウィーン 
寄皆既月食:道長も驚く今日の夜の月 
来る者を捕らえてみれば何と猿 
諸物価は値上げ庶民は音を上げる 
天道が照らす地道な人の道 
地蔵様南無冥土in安楽寺 
寄山本眞一先生 in Glasgow:外つ国で青岛啤酒Glass-go