2022年1月31日(月)
- 長野県
- 千曲市・本誓寺遺跡で2020年に出土した、古代の水田遺構の上の洪水砂に埋もれた木材は、放射性炭素や酸素の同位体から、9世紀の建築部材。仁和の洪水(888年)で埋もれたとみられる。埴科郡衙や有力寺院の建築部材だった可能性。[信濃毎日新聞]
- 京都市
- 下京区で調査された御土居(おどい)の濠跡から、江戸幕府が鋳造した銀貨「慶長丁銀」に押された偽造防止用の公印「極印」の鑽が出土。銀座からの持ち出しが禁じられ、廃棄する場合は溶解処分されており、実物の発見は初。公益財団法人京都市埋蔵文化財研究所の調査。[産経新聞]
- 兵庫県
- 丹波市・春日町黒井で、古墳時代後期・6〜7世紀の円墳。[丹波新聞]
- アフガニスタン
- バーミヤン遺跡(Bamiyan)で、タリバンが大仏立像周辺を掘削。地中に仏教寺院跡が存在する可能性を指摘される場所。「近くに宝物が埋まっているとの情報があり掘った」。[共同通信]
- アラブ首長国連邦
- ジュベル・ファヤ遺跡(Jebel Faya)で、21万年前から12万年前までの間に、4度にわたり人類が居住。人類の居住は、主要な湿潤期に限られるわけではない。短期間の降水量の増加でも、人類の居住は可能となった。中期更新世末〜後期更新世初めに、人類の退避地ができるようなモザイク状の環境があったことを示す。
cf. K. Bretzke, F. Preusser, S. Jasim, C. Miller, G. Preston, K. Raith, S. J. Underdown, A. Parton & A. G. Parker (2022) Multiple phases of human occupation in Southeast Arabia between 210,000 and 120,000 years ago. Scientific Reports, volume 12, Article number: 1600 [Scientific Reports] - トルコ
- カフラマンマラシュ県(Kahramanmaraş il) バウラルバシュ(Bağlarbaşı)の古代都市ゲルマニキア(Γερμανίκεια;Germanicia)で、1500年前のモザイク、50平方メートル。屋外での饗宴を描写。[Daily Sabah]
- UK(イングランド)
- オックスフォード(Oxford)で、セント・メアリーズ・カレッジ(St Mary's College)の16世紀の石灰岩製の壁の基礎。解体された獣骨や炭化物が近くで出土し、キッチンの跡とみられる。17世紀の石製容器や、骨製の櫛、銀貨、中世の装飾タイルも出土。Oxford Archaeologyの調査。セント・メアリーズ・カレッジは1435年に聖アウグスチノ修道会士が学ぶ拠点として設立。[Oxford Mail]
- UK(イングランド)
- ダービーシャー州(the county of Derbyshire)・ホイットウェルのロングケルン(Whitwell Long Cairn)で出土した初期新石器時代・紀元前3720〜前3650年(cal BC)のヒト3人の歯6例(うち4例は歯髄結石あり)のコラーゲンを安定同位体分析。陸上型の食生活。
cf. Brett Ostrum, Darren R. Gröcke, Janet Montgomery (2022) A comparison of dietary isotopes in pulp stones and incremental dentine from Early Neolithic individuals of the Whitwell Long Cairn, England. American Journal of Biological Anthropology [Wiley Online Library]
2022年1月30日(日)
- 沖縄県
- 沖縄戦を指揮した旧日本軍第32軍司令部に所属する人のうち、県出身者だけをまとめた「留守名簿(沖縄)」には398人を記載。10代と20代の若者が6割を占める。10代半ばの住民や女性まで戦場に駆り出された実態を裏付け。[沖縄タイムス]
- イラン
- ザグロス山脈(Zagros Mountains)Ghar-e Boof遺跡で出土した後期旧石器時代(Upper Palaeolithic)初めのロスタム期(Rostamian sequence)・42000年前〜35000年前(cal BP)の動物遺存体を分析。幅広い種類の動物を利用しているが、やや年取った有蹄動物を好んで利用している。解剖学的にみて、運搬したとは見られず、遺跡の近くで狩猟。皮をはぎ、解体や内臓のじょこを行ったほか、骨髄を取り出した。
cf. Mario Mata-González, Britt M. Starkovich, Mohsen Zeidi, Nicholas J. Conard (2022) New zooarchaeological perspectives on the early Upper Paleolithic Rostamian sequence of Ghar-e Boof (southern Zagros Mountains, Iran). Quaternary Science Reviews, Volume 279, 1 March 2022, 107350 [ScienceDirect]
2022年1月29日(土)
- 富山県
- 富山市・旧八人町小グランドから、渋沢栄一が設立に携わったれんが製造会社「品川白煉瓦」が1899〜1924年に生産した耐火れんが。富山市埋蔵文化財センター1/28発表。[毎日新聞]
- 佐賀県
- 上峰町・鎮西山城跡で、主郭部を囲む堀や土塁を確認。12〜13世紀の磁器や土師器など出土。戦国時代に山城として使用されたと推定されるが、それ以前にも寺や山岳修験の施設があった可能性。上峰町の調査。2/11、3/12現地説明会。[佐賀新聞]
▼鎮西山城跡関連記事→2021年2月12日 - 中国
- 平頂山学院の陶磁工芸技術陳列館のコレクションの中で、大量の陶磁製のボールと半製品、さらに製作用の型を確認。唐、宋、元、明、清の各時代におよび、大半は直径5cm程度。棒で球を打ち、穴に入れるゴルフのような球戯「捶丸(Chuiwan)」に使用。ポロのような競技「歩打玉」に起源。コレクションの多くは平頂山市魯山県の段店窯、宝豊県の清凉寺窯、汝州の臨汝窯で作られた。[新華社]
- オーストラリア
- エーア湖盆地(Lake Eyre Basin)の先住民による石組み(stone arrangements)に対し、光刺激ルミネセンス(optically stimulated luminescence)と放射性降下物(fallout radionuclides)による年代測定。1959〜1981年の間に建設されたと推定。
cf. Justine Kemp, Jon Olley, Justin Stout, Timothy Pietsch, Mithaka Aboriginal Corporation (2022) Dating stone arrangements using optically stimulated luminescence and fallout radionuclides. Geoarchaeology [Wiley Online Library] - トルコ
- イズミル県(İzmir il)の古代都市スミュルナ(Σμύρνα;Smyrna)で、2000年前の劇場の観客用通路ウォミトリウム(vomitorium)。長さ26m、幅4mで「L」字形。[Arkeonews]
▼スミュルナの劇場関連記事→2021年11月4日 - オーストリア
- フランツハウゼンI遺跡(Franzhausen I)の前期青銅器時代の埋葬から12歳以下の子供75人の歯のエナメル質を分析し、70人について判定。子供の性別と埋葬方法の関係を検証。98.4%で、子供の性別が埋葬姿勢に対応。未成人の男女は、成人男女とと同様に葬られた。子供は成人前から男女に分類された。側面性(右を下にするか、左を下にするか)と頭位方法で性別との対応が矛盾する場合、ほかの側面性の方が性別により強く相関。後期新石器時代〜前期青銅器時代・紀元前2900年〜前1600年の中央ヨーロッパの大部分では、左を下にするか右を下にするかで男女を埋葬し分けていると考えられていたが、この習慣が子供にも適用されているか、生物学的な男女と埋葬葬法が正しく対応しているかどうかは、わかっていなかった。
cf. Katharina Rebay-Salisbury, Patricia Bortel, Lukas Janker, Marlon Bas, Doris Pany-Kucera, Roderick B. Salisbury, Christopher Gerner, Fabian Kanz (2022) Gendered burial practices of early Bronze Age children align with peptide-based sex identification: A case study from Franzhausen I, Austria. Journal of Archaeological Science, Volume 139, March 2022, 105549 [ScienceDirect] - ベルギー
- ブリュッセル(Brussels)の中世後期(late Middle Ages)・15世紀初めの銅合金製品の製作工房について、粘土や材料の分析。るつぼに用いる耐火土はマース川流域(Mosan valley)からブリュッセルに運搬。衣服のアクセサリーなどを主に真鍮(brass)で製造した工房で、15世紀のヨーロッパでは稀な大量生産。
cf. Lise Saussus, Eric Goemaere, Nicolas Thomas, Thierry Leduc, Thomas Goovaerts, Michel Fourny (2022) Practices, recipes and supply of a late medieval brass foundry: The refractory ceramics and the metals of an early 15th century AD metallurgical workshop in Brussels. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 42, April 2022, 103358 [ScienceDirect] - UK(イングランド)
- エセックス州(the county of Essex)コルチェスター(Colchester)のレックスデン・ロード(Lexden Road)にある旧エセックス・カウンティ病院(Essex County Hospital)で、ローマ時代の建物や塔、竈、墓。また、馬車競争を描いた土器など。コルチェスターで行われた馬車競争の記念品か。[Daily Gazette]
2022年1月28日(金)
- 群馬県
- 高崎市・多胡碑周辺で、古墳時代前期・4世紀の鳥頭四獣鏡系銅鏡1面。高崎市教育委員会1/27発表。[上毛新聞]
- 愛知県
- 豊川市・三河国分寺跡(みかわこくぶんじあと)の伽藍北辺の調査区で北側出入り口を示唆する溝の途切れ目を確認。また、講堂跡北側の調査区では、大型掘立柱建物の大きさを新たに確認。豊川市教育委員会の調査。[東日新聞]
1/30現地説明会。
史跡三河国分寺跡の発掘調査について[豊川市]
▼三河国分寺跡関連記事→2021年1月25日 - パプアニューギニア
- 中部の南海岸のガリー・リーチ(Galley Reach)で出土したラピタ土器(Lapita)の土器に鋸歯状の押圧文(dentate-stamped decoration)。コーション・ベイ(Caution Bay)のラピタ遺跡に近く、何らかの関係が想定されるが、コーション・ベイよりも古い可能性がある。メラネシア島嶼部のラピタ遺跡と比較すると、形態や装飾が中期〜後期ラピタ遺跡に該当。
cf. Christophe Sand, Kenneth Miamba, Alois Kuaso, Nick Araho, Jim Allen (2022) A dentate-stamped Lapita dish from the central south coast of Papua. Archaeology in Oceania [Wiley Online Library] - パキスタン
- スワート県(Swat)バリコット(Barikot)で、インド・グリーク朝(Indo-Greek Kingdom)・メナンドロス1世(Μένανδρος Σωτήρ;Menander I)・紀元前150年ごろまたはその後継者が建てた仏教寺院。それ以前の建物も確認され、マウリヤ朝(Maurya)・紀元前3世紀までさかのぼる可能性も。
Italian mission discovers ancient Buddhist temples in Gandhara, Pakistan[Università Ca' Foscari] - ヨルダン
- ジェベル・カルハ地域(Jebel Qalkha)の遺跡から出土した、中部旧石器時代〜上部旧石器時代の石器石材を分析。石器が次第に小型化した上部旧石器前期(4〜3万年前頃)に使われた石器石材は、表面が滑らかで透明度が高い。小型石器の製作に適した特徴を持っているとみられる。
旧石器時代の石材利用の変化を解明 〜小型石器と滑らかなチャート石材の結びつき〜[名古屋大学]
cf. Eiki Suga, Natsuki Ichinose, Kazuhiro Tsukada, Seiji Kadowaki, Sate Massadeh, Donald O. Henry (2022) Investigating changes in lithic raw material use from the Middle Paleolithic to the Upper Paleolithic in Jebel Qalkha, southern Jordan. Archaeological Research in Asia, Volume 29, March 2022, 100347 [ScienceDirect] - トルコ
- カラマン県(Karaman ili) プナルカヤ(Pınarkaya)で、古代都市テバサ(Thebasa)を発見。テバサはローマ時代のプリニウスが、タウルス山脈内にあり、リュカオニア(Lycaonia)の主要都市と言及。[Anadolu Ajansı]
- ロシア
- オネガ湖(Онежское озеро;Lake Onega)のユジュニ・オレニ島(Южный Олений остров;Yuzhniy Oleniy Ostrov)で、1930年代に発掘された前期完新世(early Holocene)/中石器時代の墓177基の放射性炭素年代は8250年前〜8000年前(BP)の100年〜300年間程度。8200年前の寒冷化に伴い短期間に造営されたと判明。8200年前の寒冷化で社会的なストレスが高まり、大規模墓地を作ることで集団のメンバーシップを確定し、資源をめぐる対立を緩和。気候が温暖化すると再び分散。[EurekAlert]
cf. Rick J. Schulting, Kristiina Mannermaa, Pavel E. Tarasov, Thomas Higham, Christopher Bronk Ramsey, Valeri Khartanovich, Vyacheslav Moiseyev, Dmitriy Gerasimov, John O’Shea & Andrzej Weber (2022) Radiocarbon dating from Yuzhniy Oleniy Ostrov cemetery reveals complex human responses to socio-ecological stress during the 8.2 ka cooling event. Nature Ecology & Evolution [Nature Ecology & Evolution]
▼カレリア共和国(Республика Карелия;Republic of Karelia)
▼ユジュニ・オレニ島関連記事→2021年5月27日 - ポーランド
- ソビボル強制収容所(Konzentrationslager Sobibor)跡のうち、ガス室に向かう前の脱衣所跡で、「イスラエルよ、聞け」(Shema Yisrael)の文字と「モーセと十戒の石板」の図像を表した東欧製のペンダント。ソビボル強制収容所は、ラインハルト作戦(Operation Reinhard)の一環として、ドイツが占領中のポーランド総督府(Generalgouvernement;General Government)治下のソビボル村に設置した絶滅キャンプ。[Heritage Daily]
- フランス
- ブルターニュ地域圏(Région Bretagne)イル=エ=ヴィレーヌ県(Ille-et-Vilaine)レンヌ(Rennes)の市庁舎広場で、中世と金代の遺構。中世初期の石棺や、1720年の大火の跡など。国立予防考古学研究所(INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives)の調査。
Des pans de l'histoire de Rennes révélés en plein cœur de ville (Ille-et-Vilaine)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives] - UK(イングランド)
- ウィルトシャー州(the county of Wiltshire)ピュージー・ヴェイル(Pewsey Vale)で、中世・1150年〜1350年の金のブローチ。ラテン語とヘブライ語、ロンゴバルド語(Lombardic)の銘文。[This is Wiltshire]
- ペルー
- アマソナス県(Amazonas)バグア郡(Provincia de Bagua)ラ・ペカ区(a Peca)のサン・イシドロ村(San Isidro)で、形成期(época formativa;Formative period)・バグア文化(cultura Bagua)の人骨と土器。[Andina]
2022年1月27日(木)
- 韓国
- 忠清南道 公州市 ・「武寧王陵と王陵苑」(宋山里古墳群)にある百済の古墳、29号墳の入り口から出土した磚に、銘文「造此是建業人也」。「建業」は南京を指し、中国・南朝の都。百済の磚室墓が南朝の影響で作られたことを実証。国立扶余文化財研究所の調査。[聯合ニュース]
- 韓国
- 澗松美術館が、1/27競売にかけた国宝の仏像2点、癸未銘金銅三尊仏立像と、金銅三尊仏龕に対し、応札者はなかった。[聯合ニュース]
▼澗松美術館関連記事→2022年1月14日 - イラン
- ヌール市(Noor)のカスピ海(Caspian Sea)で碇を発見。漁師の網にかかる。長さ3.6m。木と鉄でできており、戦艦のものと推定。[Tehran Times]
マーザンダラーン州(Ostān-e Māzandarān) - カタール
- カタールで3600年以上前の集落遺跡「Makhfia」。2km×3kmに及ぶ長方形の遺構。遺跡内では地形を改変し、農業や灌漑を行っていたとみられ乾燥地帯においても水を確保していた。
Evidence of 3600 + Year Old Settlement Uncovered in Eastern Arabian Peninsula[University of Southern California]
cf. Essam Heggy, Jonathan Normand, Elizabeth M. Palmer, Abotalib Z. Abotalib (2022) Exploring the nature of buried linear features in the Qatar peninsula: Archaeological and paleoclimatic implications. ISPRS Journal of Photogrammetry and Remote Sensing, Volume 183, January 2022, Pages 210-227 [ScienceDirect] - イスラエル
- ガリラヤ湖(Sea of Galilee;Lake Kinneret)のオハロII遺跡(Ohalo II)で出土した終末期旧石器時代(Epipaleolithic)・23000年前の動物骨20000点を調査。大型動物の狩猟のほか、魚、小動物、植物など多様な食材を得ていた。気候の変化を背景に、新たな食の恵みを享受。[EurekAlert]
cf. Tikvah Steiner, Rebecca Biton, Dani Nadel, Florent Rivals, Rivka Rabinovich (2022) Abundance or stress? Faunal exploitation patterns and subsistence strategies: The case study of Brush Hut 1 at Ohalo II, a submerged 23,000-year-old camp in the Sea of Galilee, Israel. PLoS ONE, 17(1): e0262434. [PLOS ONE]
▼オハロII遺跡関連記事→2017年2月16日 - トルコ
- メルスィン県(Mersin il)ウズンジャブルチ(Uzuncaburç)にある古代都市ディオカエサレア(Διοκαισάρεια;Diocaesarea)の塔の内部から、6世紀末〜7世紀初めの人骨や装身具などの遺物19点。遺体は司祭のものと推定。[Arkeonews]
- キプロス
- キティオン遺跡(ΚίτιονKition)パンプーラ地区(Παμπούλα;Pampoula)で、石灰岩製のフェニキア文字の銘板や、石柱、三段櫂船(triremes)を収容した船小屋が出土。[Greek Reporter]
- ドイツ
- メクレンブルク=フォアポンメルン州(Mecklenburg-Vorpommern)プレロー(Prerow)のバルト海(Ostsee;Baltic Sea)沿岸にあるダルス(Darß)西海岸で中世のものとみられる木造船。[Nordkurier]
▼メクレンブルク=フォアポンメルン州(Mecklenburg-Vorpommern)フォアポンメルン=リューゲン郡(Landkreis Vorpommern-Rügen) - USA
- グレート・ベイスン(Great Basin)のロックアート4か所について、マンガンと鉄の面密度を利用した年代測定。更新世/完新世の移行期に始まり、歴史時代まで継続しており、さまざまな時期にロックアートが描き直されていることから、数千年も同じモチーフが使用されていたことがわかる。
cf. Meinrat O. Andreae, Tracey W. Andreae (2022) Archaeometric studies on rock art at four sites in the northeastern Great Basin of North America. PLoS ONE, 17(1): e0263189. [PLOS ONE]
2022年1月26日(水)
- 韓国
- 埋蔵文化財発掘調査現場での安全管理を強化し、現場での調査者や地域住民の事故を防ぐため、「発掘調査安全保健管理体系」を推進へ。先月行われた発掘調査安全管理公聴会での意見を反映。[聯合ニュース]
- イラク
- ハトラ遺跡(Hatra)にある2世紀のアッラートの神殿(Temple of Allat)のまぐさのフリーズに表された、王に向かって座る2頭のラクダは、従来はフタコブラクダ(Camelus bactrianus)とみなされていたが、フタコブラクダとヒトコブラクダ(Camelus dromedarius)の交雑種とみられる。サナトゥルク1世(Sanatruq I)とみられる王はアラブのアッラート女神(Allat)への信仰を支援し、中央アジアとの交易も管理していた。ハトラ遺跡をダーイッシュ(Daesh)=いわゆるISISによる破壊後に修復する中で得られた知見。
cf. Massimo Vidale, Stefania Berlioz and Rowaed Mohammed (2022) Iconographic evidence of hybridisation between Camelus bactrianus and Camelus dromedarius at second-century AD Hatra, Iraq. Antiquity, First View, pp. 1 - 8 [Cambridge Core] - パレスチナ(ヨルダン川西岸地区)
- サマリア(Samaria)のエバル山(Mount Ebal)にあるヨシュアの祭壇(Joshua's altar)で、ヘブライ語の銘文が入った護符。[The Jerusalem Post]
- フランス
- ガール県(Gard)ボーケール(Beaucaire)で、ローマ時代・1〜3世紀の床下暖房(hypocauste)をもつ建物跡と多数のアンフォラ。[Midi Libre]
▼×オクシタニー地域圏(Occitanie) - フランス
- オー=ド=フランス地域圏(Hauts-de-France)エーヌ県(Aisne)ヴィレ=コトレ(Villers-Cotterêts)の城内で、ルネサンス時期の住居の下層に、12世紀と、14〜15世紀の2時期にわたる城郭遺構。
Les châteaux du Moyen Âge de Villers-Cotterêts (Aisne)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives] - UK(イングランド)
- ケンブリッジシャー州(the county of Cambridgeshire)アルコンベリー(Alconbury)で、ローマ時代後期・301〜425年の、骨や角を加工して生じたごみ300点。調度品を装飾する象嵌などの工房跡と推定。優れた腕前を示す。MOLA Headland Infrastructureの調査。[Peterborough Telegraph]
- UK(イングランド)
- ベッドフォードシャー州(the county of Bedfordshire)テンプスフォード(Tempsford)で、中期鉄器時代の大型円形建物2棟を含む集落。集落は拡大しつつローマ時代まで継続。穀物を乾燥して醸造用のモルトを作る窯が見つかり、農業を行っていたことは確実。ローマ時代の土器窯と焼成失敗品、新石器時代と青銅器時代のフリント製石鏃も出土。Museum of London Archaeology (Mola)とCambridge Archaeological Unitの調査。[Bedford Today]
- USA
- ヴァージニア州(Commonwealth of Virginia) ジェームズタウン(Jamestown)・ジェームズ要塞(James Fort)で2006年に発掘された2号井戸から出土した獣骨などの遺物を分析。野生動物から家畜への移行を反映しており、1607年の入植以後数年間の入植者の生活が判明。ジェームズタウン再発見財団(Jamestown Rediscovery Foundation)の調査。[The Virginia Gazette]
▼ジェームズ要塞関連記事→2018年6月5日
2022年1月25日(火)
- 兵庫県
- 加古川市・上村池遺跡(うえむらいけ)で、奈良時代ごろとみられる大型建物跡7棟以上が南北に整然と並ぶ。加古川市教育委員会の調査。1/29現地説明会。[神戸新聞]
▼上村池遺跡関連記事→2022年1月19日 - 奈良県
- 明日香村・高松塚古墳(たかまつづかこふん)から1972年に出土した木棺片と円形金具の3D画像を比較した結果、双方に残ったくぎ跡などが一致する組み合わせがあることがわかった。奈良県立橿原考古学研究所と奈良文化財研究所1/25発表。[共同通信]
- 香川県
- 高松市・勝賀城は、戦国時代末期、羽柴秀吉の配下の大名が長宗我部氏との戦いに備え、「陣城」に改修した可能性。[NHK]
- 日本
- 博士課程を修了した人の翌年度の年収は、男性で最も割合が高い層は「400万〜500万円未満」だったのに対し、女性は「300万〜400万円未満」。人文科学分野の年収が低いことが一因。[朝日新聞]
- 韓国
- 忠清北道 清州市 清原区 栗陽洞 ・牛岩山近隣公園の造成敷地内で、朝鮮時代と推定される住居跡1棟を発見。[NEWSIS]
- 韓国
- 忠清北道 丹陽郡・スヤンゲ遺跡6地区で出土した遺物は46000年前を上限とし、古い年代を取るならば、特に後期旧石器時代の有茎尖頭器は世界最古の可能性。[東亜日報]
- 韓国
- 全羅南道 高興郡 蓬莱面 泗洋里の烽火山で、朝鮮時代の瞭望跡と、関連遺構2基。海洋関防の手がかり。[聯合ニュース]
- 中国
- 陝西省 岐山県 京当鎮 王家嘴村・周原遺跡で、先周時代(京当型商文化晩期〜先周文化晩期)の大型の版築基壇。[人民網]
- イラン
- セムナーン州(Ostān-e Semnān)エイヴァーネケイ(Eyvanekey)で、中期旧石器時代のルヴァロワ技法の石器。[Tehran Times]
▼セムナーン州(Ostān-e Semnān)ギャルムサール郡(Garmsar)エイヴァーネケイ(Eyvanekey) - イラン
- ホルモズガーン州(Ostān-e Hormozgān)ミーナーブ郡(Minab)で、サファヴィー朝(Safavid)・300年以上前とみられる墓石出土。[Tehran Times]
- オマーン
- 南バーティナ行政区(South Al Batinah Governorate) ア・ルスターク州(Wilayat of A’Rustaq)のアッ・ティーカー遺跡(Al-Tekha)で、初期青銅器時代(Early Bronze Age)・ウンム・アン=ナール文化(Umm Al Nar culture)・紀元前3千年紀の大規模集落。公共施設や巨大な塔を含む。[Oman News Agency]
- イタリア
- ローマの共和政ローマの集会場クリア・ポンペイア(Curia Pompeia;Curia de Pompeyo)に、中世までのいくつかの建築段階。建築部材のモルタルの材料の産地を推定し、初築時の紀元前55年、アウグストゥス帝の治世・紀元前19年の改築、最後に中世の改築が行われたと推定。最初はローマ内陸部の火山性堆積物を利用したが、第2期以降は火山ガラスが見られ、都市化に伴って遠隔地から材料を調達。
La arqueometría también demuestra que la Curia de Pompeyo en Roma tuvo varias fases constructivas[Universidad de Córdoba]
cf. Fabrizio Marra, Ersilia D'Ambrosio, Mario Gaeta, Antonio Monterroso-Checa (2021) Petrographical and geochemical criteria for a chronology of Roman mortars between the first century bce and the second century ce: The Curia of Pompey the Great. Archeometry [Wiley Online Library] - ポーランド
- 西ポモージェ県(Województwo zachodniopomorskie)スタルガルト郡(Powiat stargardzki)の捕虜収容所(POW camp)シュタラークII-D(Stalag II-D Stargard)跡の集団墓のうち1基から捕虜64人の遺体が出土。1941年12月の連続する4日間に死亡しており、大半は赤軍兵士。死因を研究へ。[Nauka w Polsce]
- ドイツ
- ハイルブロン郡(Landkreis Heilbronn)バート・フリードリヒスハル(Bad Friedrichshall)で、後期新石器時代・縄目文土器文化(Schnurkeramik-Kultur;Corded Ware culture)・紀元前3千年紀の墓14基。屈葬で、多くは単葬。土器、石斧、フリントや骨製の道具などを副葬。[Die Zeit]
▼バーデン=ヴュルテンベルク州(Land Baden-Württemberg) - オランダ
- ナイメーヘン(Nijmegen)で、ローマ時代・2000年前の青色のガラス碗。[Hyperallergic]
- 東アフリカ
- 東アフリカの260万年前〜120万年前の59遺跡から出土した、石器で切られた獣骨データから、肉食の証拠を分析。ホモエレクトゥス(Homo erectus)出現後に肉食の証拠が持続的に増加するわけではない。従来、ホモエレクトゥス以降の大きな脳などは肉食の影響で生まれたとされていた。
New Study Calls Into Question the Importance of Meat Eating in Shaping Our Evolution[The George Washington University]
cf. W. Andrew Barr, Briana Pobiner, John Rowan, Andrew Du, and J. Tyler Faith (2022) No sustained increase in zooarchaeological evidence for carnivory after the appearance of Homo erectus. Proceedings of the National Academy of Sciences. February 1, 2022 119 (5) e2115540119. [PNAS]
2022年1月24日(月)
- 中国
- 重慶市 合川区・釣魚城遺跡で、宗教施設と生産施設を初めて発見。釣魚城遺跡は1259年にモンゴル帝国のモンケ・ハーンの軍が駐屯した。[青年網]
▼釣魚城遺跡関連記事→2007年8月20日 - 中国
- 重慶市 万州区 周家壩街道・天生城遺跡で、新石器時代、商・周、漢から南朝、宋、明、清〜民国の遺構・遺物。特に漢〜六朝のものは初の発見。[中国新聞網]
- エジプト
- サッカラ(Saqqarah;Saqqara)で、新王国時代(Nouvel_Empire;New Kingdom)のセティ1世、ラメセス2世のころの将軍Iwlkhyの墓。[Le Figaro]
2022年1月23日(日)
- 年輪年代法
- 年輪年代法に用いる年輪幅の基礎データの開示を求めた市民団体の情報公開請求に対し、奈良文化財研究所が調査研究への支障を理由に不開示としていた。市民団体は提訴の方針。[産経新聞]
▽型式名になるような標識遺跡で未報告のところとかは……(以下略) - インドネシア
- アチェ(Aceh)のラムレ遺跡(Lamreh site)にあるイスラームの墓碑を、形態と銘文から研究。13〜15世紀に比定され、外国の記録で9〜16世紀に登場する地名、「ラムリ」(Lamuri)に関連。碑文には、2人のスルターン(Sultan)、7人のマリク(Malik)、1人のアミール(Amir)、1人のシャイフ(Shaykh)、1人のカーディー(Qadhi)と、称号のない6人が確認され、イスラームのスルターンによる統治システムが確立されていたことを示す。ラムリ・スルターン国(Kesultanan Lamuri;Lamuri sultanate)は、東南アジアで最も古いイスラームのスルターン国のひとつであったとみられる。
cf. Husaini Ibrahim, Razali Abdullah, Syarifuddin Hasyim, Amir Husni, Mokhtar Saidin (2022) Early Islam of Lamuri site based on archaeological evidence. Archaeological Research in Asia, Volume 29, March 2022, 100350 [ScienceDirect] - USA
- メリーランド州(State of Maryland)のセント・メアリー砦(St. Mary’s Fort)の跡から、1650年ごろのカラバカの十字架(Caravaca cross)出土。横木が2本ある十字架で、スペインの同名の都市で作られたと考えられている。カトリック関係の遺物。セント・メアリー砦はメリーランドで最初の恒久的な英国植民地(1634年)で、米国内でも最古級。プロテスタントの迫害を避けてきたカトリック信者も多かった。英国植民地だったこの場所にスペインの遺物がある理由は不明で、スペイン人の布教により十字架を得たネイティヴアメリカンから交易で英国人カトリック信者に渡った可能性も。[The Washington Post]
▼セント・メアリー砦関連記事→2021年5月1日
2022年1月22日(土)
- 中国
- 重慶市 奉節県 白帝鎮 紫陽村・白帝城遺跡で、明時代の瞿塘衛右千戸所の建物跡を発見。重慶では明時代の衛所跡の確認は初。[中国新聞網]
▼白帝城遺跡関連記事→2019年1月27日 - ドイツ
- ノルトライン=ヴェストファーレン州(Land Nordrhein-Westfalen)シュタインフルト郡(Kreis Steinfurt)ライネ市(Rheine)で、地磁気測定により、シュヴァーネンブルク城(Schwanenburg)の位置を確認。シュヴァーネンブルク城は1343年に破壊されるまで100年程度存在した。[Archaeologie Online]
- ペルー
- クスコ県(Región Cusco)マチュピチュ(Machu Picchu)のチャチャバンバ遺跡(Chachabamba)で石造りの運河網。儀式に用いられたと推定。[Andina]
cf. Sieczkowska Dominika, Ćmielewski Bartłomiej, Wolski Krzysztof, Paweł B. Dąbek, José M. Bastante, Wilczyńska Izabela (2022) Inca water channel flow analysis based on 3D models from terrestrial and UAV laser scanning at the Chachabamba archaeological site (Machu Picchu National Archaeological Park, Peru). Journal of Archaeological Science, Volume 137, January 2022, 105515 [ScienceDirect]
2022年1月21日(金)
- 韓国
- 忠清南道 扶余郡 草村面・鷹坪里の百済古墳で、横穴式石室に葬られた被葬者は地方官僚か地方首長と推定。6世紀末に1次埋葬、7世紀初めに追葬。国立扶余文化財研究所の調査。[聯合ニュース]
▼鷹坪里古墳関連記事→2021年7月2日 - セルビア、ルーマニア
- セルビア東部とルーマニア西部にまたがるバナト地域(Banat)のサルマタイ人(Sarmatian)の墓地遺跡20か所179基を分析。半数以上が埋葬後に暴かれている。遺跡間、遺跡内の違いはなく、性別・年齢による違いもない。墓暴きには3パターンあり、上半身を移動する場合、全身を切断し移動する場合、遺体や副葬品を無秩序に移動する場合である。骨の風化から見て、掘り起こした墓から骨が掘り出され、そのまま埋め戻しもされなかった。墓暴きは、埋葬から数年後の骨化が完了したころに行われた。同世代のサルマタイ人や地域社会、子孫によって行われ、その動機は副葬品を奪うこととみられる。カルパチア盆地での墓荒らしは1世紀から5世紀前半にサルマタイ人の墓地で行われることが知られている。
cf. Tamara Pavlovic, Lavinia Grumeza, Mirjana Roksandic, Marija Djuric (2022) Taking from the dead: grave disturbance of Sarmatian cemeteries in the Banat region. International Journal of Osteoarchaeology [Wiley Online Library] - チェコ
- 中央ボヘミア州(Středočeský kraj;Central Bohemia)テティーン(Tetín)のテティーン城(Tetín castle)近くにある聖カタリナ教会(Church of St. Catherine)で発掘された初期中世の墓から、アフリカ系黒人女性の頭蓋骨。40〜50歳。[Radio Praha]
▼ベロウン郡(okres Beroun) - フランス
- イル=ド=フランス地域圏(Île-de-France) エソンヌ県(Essonne)オランヴィル(Ollainville)で、ガロ=ローマ時代・1〜4世紀の集落。硬貨、銅製品、土器片など出土。国立予防考古学研究所の調査。
Une occupation antique à Ollainville (Essonne)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives] - フランス
- バイヨンヌ(Bayonne)のボナ・エルー美術館(Musée Bonnat-Helleu)の敷地で、13〜18世紀のドミニコ会修道院の跡や中世の遺跡。中世の遺跡。国立予防考古学研究所(INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives)の調査。[Le Journal des Arts]
▼ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏(Nouvelle-Aquitaine)ピレネー=アトランティック県(Pyrénées-Atlantiques) - アイルランド
- ダブリン県(County Dublin) シャンキル(Shankill)で、新石器時代末・4500年前のカリックゴローガン楔形墓(Carrickgollogan wedge tomb)が崩壊。2021年後半に天井石が崩落。[The Journal]
▽楔形墓(wedge tomb)は、アイルランドの新石器時代から青銅器時代に見られ、墓室の立面形の一端が広く、一端が狭いためにその名がある。
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