考古学のおやつ/NEWSLINK

2022年3月31日（木）

仙台市: 青葉区・仙台城跡で、3/16の地震で崩落した石垣は、修復に少なくとも3年かかる見通し。[河北新報]
令和4年3月16日に発生した福島県沖の地震による仙台城跡の被害状況と今後の見通しについて[仙台市]
韓国: 京畿道金浦市大串面大陵里・大陵里土城で、城壁の造成技法と、南門跡。統一新羅時代に築造され、高麗時代まで使用されたとされる土城。[聯合ニュース]
中国: 淮河流域の韓井遺跡で調査された中期新石器時代の植物遺体や食物残滓、水田状の遺構を分析。8000年前に稲作が始まっていたと推定。難脱粒性（non-shattering）のイネの小穂（spikelet）や、イネの植物珪酸体の増加から見て栽培化したイネが存在。
cf. Zhenwei Qiu, Lina Zhuang, Huiyun Rao, Liugen Lin & Yijie Zhuang (2022) Excavation at Hanjing site yields evidence of early rice cultivation in the Huai River more than 8000 years ago. Science China Earth Sciences, volume 65, pages910–920. [SpringerLink]
▼江蘇省宿遷市泗洪県梅花鎮
スペイン: ビスカヤ県（Bizkaiko Probintzia；Provincia de Vizcaya）バリカ（Barrika）のアランバルツァII遺跡（Aranbaltza II）で出土したシャテルペロン文化（Châtelperron）・43500年前の石器5000点を分析。この地域のムスティエ文化の石器とは技術的な継承関係にない。ホモサピエンスの到達以前に、ムスティエ文化のネアンデルタール人が滅亡してシャテルペロン文化のネアンデルタール人が外（おそらく南フランスから）から来て入れ替わる現象が起きていた。
La industria lítica de Aranbaltza ofrece pistas sobre la extinción de los neandertales en la península ibérica
The lithic industry at Aranbaltza offers clues to Neanderthal extinction in the Iberian Peninsula[Centro Nacional de Investigación sobre la Evolución Humana, CENIEH]
cf. Joseba Rios-Garaizar, Eneko Iriarte, Lee J. Arnold, Laura Sánchez-Romero, Ana B. Marín-Arroyo, Aixa San Emeterio, Asier Gómez-Olivencia, Carflos Pérez-Garrido, Martina Demuro, Isidoro Campaña, Laurence Bourguignon, Alfonso Benito-Calvo, María J. Iriarte, Christelle Lahaye, Illuminada Ortega (2022) The intrusive nature of the Châtelperronian in the Iberian Peninsula. PLoS ONE, 17(3): e0265219. [PLOS ONE]
UK（イングランド）: ベッドフォードシャー州（the county of Bedfordshire）で、ローマ時代・2000年前のビール生産の証拠。炭化したスペルトコムギと、麦芽製造用の竈。[BBC]
UK（イングランド）: ハートフォードシャー州（the county of Hertfordshire）セント・オールバンズ（St Albans）のヴェルラミアム公園（Verulamium Park）で、ローマ時代の火葬骨壺。ローマ都市ウェルラミアム（Verulamium）に当たる場所。
Cremation urn found during excavation work at site of ancient Roman town[St Albans City and District Council]
USA: アラバマ州（State of Alabama）のリトル・ベア・クリーク遺跡（Little Bear Creek Site）の5000年前～3000年前の墓に葬られた男性の額に孔。頭蓋骨に開いた楕円形の孔の状態から見て、脳の腫れを緩和するために人為的に開頭。手術後も1年生存。北米大陸の最古の頭蓋手術。[ScienceNews]
ペルー: ラ・リベルター県（Región La Libertad；La Libertad region）トルヒージョ郡（Provincia de Trujillo；Trujillo Province）ワンチャコ（Huanchaco）のラス・ロマス（Las_Lomas）にあるパンパ・ラ・クルス遺跡（Pampa La Cruz）で、サリナール文化（Cultura salinar）・紀元前400年からチムー（Chimú culture）・1450年まで、1000年間のヒトの居住を確認。[Andina]

2022年3月30日（水）

埼玉県: 行田市・北大竹遺跡（きたおおたけいせき）で、古墳時代・6～7世紀の子持勾玉45点など祭祀道具大量出土。公益財団法人埼玉県埋蔵文化財調査事業団3/30発表。[共同通信]
▼北大竹遺跡関連記事→2020年7月13日
パレスチナ（ヨルダン川西岸地区）: エルサレム（Jerusalem）のダビデの町（City of David）で出土した、新バビロニア王国（Neo-Babylonian Empire）による破壊（紀元前586年）当時の土器を分析。一部の土器には把手にロゼット文が押捺され、ユダ王国（kingdom of Judah）の王室経済との関連を示す。ワイン、オリーブ、バニラの存在を示す分子を検出。バニラが検出された壺にはワインも検出されており、ワインをバニラでを香りづけしていた。第一神殿時代のユダ王国のエリート層はワインを消費しており、アラビア南部と国際貿易をしていたことを示す。[The Times of Israel]
cf. Ayala Amir, Israel Finkelstein, Yiftah Shalev, Joe Uziel, Ortal Chalaf, Liora Freud, Ronny Neumann, Yuval Gadot (2022) Residue analysis evidence for wine enriched with vanilla consumed in Jerusalem on the eve of the Babylonian destruction in 586 BCE. PLoS ONE, 17(3): e0266085. [PLOS ONE]
UK（ウェールズ）: ベール・オブ・グラモーガン（Vale of Glamorgan）のバリー（Barry）にあるファイヴ・マイル・レーン（Five Mile Lane）で、ローマ時代の傭兵の墓、鉄器時代の農具など。Rubicon Heritage Services Ltdの調査。[Barry&DistrictNews]
UK（スコットランド）: オークニー諸島（Orkney）ウェストレー島（island of Westray）のリンクス・オブ・ノルトランド遺跡（Links of Noltland）について、後期新石器時代と青銅器時代の間に住民が大幅に入れ替わったことを葬送儀礼から分析。地元出身の男性と外部から来た女性が同じ墓地に葬られる。
cf. Hazel Moore, Graeme Wilson, Mairead Ni Challanain, Maeve McCormick, Peter D. Marshall, Katharina Dulias, M. George B. Foody, Pierre Justeau, Maria Pala and Martin B. Richards (2022) Migration and community in Bronze Age Orkney: innovation and continuity at the Links of Noltland. Antiquity, First View, pp. 1 - 19. [Cambridge Core]

2022年3月29日（火）

浜松市: 中区・浜松市博物館で、職員が収蔵資料を紛失した事実を隠し、確認検査をすり抜けていた問題を巡り、浜松市が第三者委員会を立ち上げへ。[静岡新聞]
▼2024年1月1日から浜松市中央区
中国: 近年知られるようになった新石器時代・竜山文化期の瓦についての形態や出土状況を概観。平瓦では横断面凹字形の瓦が新石器時代の陝西や甘粛に由来する。東アジアの瓦は中原地域ではなく黄土高原に起源する。建物としての上部構造の特徴や強度が影響している可能性。また、降水量や他の建築部材の供給量の違いに起因することも考えられる。
cf. 齊藤希 (2022) 中国における最古級の瓦とその分布について. 考古学論攷第45冊, pp.11-20 [奈良県立橿原考古学研究所]
インド: アッサム州（Assam）ディマハサオ県（Dima Hasao）で、巨大な石製の壺を新たに4個発見。
cf. Tilok Thakuria, Uttam Bathari & Nicholas Skopal (2022) An archaeological survey of the Assam stone jar sites. Asian Archaeology. [SpringerLink]
UK（スコットランド）: エディンバラ（Edinburgh）近郊のクラモンド（Cramond）で1975年に発見された中世初期・6世紀の遺体9体を同位体分析。6人は地元出身だが、2人（男女）はスコットランドの各地の出身。また、暴力的に殺された遺体もあり、当時の世相を示す。
The face of a medieval wanderer[the University of Aberdeen]
cf. Orsolya Czére, John A. Lawson, Gundula Müldner, Jane Evans, Angela Boyle & Kate Britton (2022) The Bodies in the ‘Bog’: A Multi-Isotope Investigation of Individual Life-Histories at an Unusual 6th/7th AD Century Group Burial from a Roman Latrine at Cramond, Scotland. Archaeological and Anthropological Sciences, volume 14, Article number: 67. [SpringerLink]
ケニア: ルケニヤヒル（Lukenya Hill）のシランガ遺跡（Silanga：GvJm52）で、磁気データと発掘調査により、後期牧畜新石器時代（Pastoral Neolithic）・1900年前～1600年前（BP）の建物と貝塚の存在を推定。タンザニアのルクスマンダ遺跡と集落構造が類似。東アフリカに多い、家畜スペースを中心に置くやり方とは対照的。
cf. Lorraine Hu, Zachary McKeeby, Mulu Muia, John Munyiri & Charles M. Nelson (2022) Examining Late Pastoral Neolithic Settlement at Silanga (GvJm52), Lukenya Hill, Kenya. Azania: Archaeological Research in Africa. [Taylor & Francis Online]
USA: フロリダ州（State of Florida）マイアミ（Miami）で、先史時代の人骨。先住民テケスタ族（Tequesta）のものと見られる。[The Wall Street Journal]

2022年3月28日（月）

ヨルダン: ジュネネ（Jneneh）で出土した鉄器時代2期（Iron Age II）の土器に残るバオマーカーを分析。襟形装飾のついた土器の中身は蜂蜜と植物油。小型の瓶には反芻動物に由来する乳脂。
cf. Abdulraouf Mayyas, Khaled Douglas, Mahmoud Al-Qudah, Fardous Al-Ajlouny, Dima Kreshan (2022) Lipid markers in archaeological pottery vessels excavated at Jneneh Site, in North-Central Jordan. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 43, June 2022, 103410. [ScienceDirect]
トルコ: チョルム県（Çorum）でヒッタイト時代・紀元前13世紀の腕輪。チョルムはヒッタイトの都市ハットゥシャ（Hattuşa）に当たる。[Daily Sabah]
ドイツ: バイエルン州（Freistaat Bayern）デッゲンドルフ郡（Landkreis Deggendorf）シュテファンシュポシング（Stephansposching）で鐘状ビーカー文化（Glockenbecherkultur；Bell Beaker culture）・4500年前の戦士の墓。成人男性の人骨とともに、土器や鞆を副葬。[BR24]

2022年3月27日（日）

公務員採用: 2021年度の公務員採用を巡り、全国で少なくとも7道県市が「健康診断の結果によっては採用されない場合がある」などと、難病患者や障害者を排除するような受験案内を出していた。[毎日新聞]
キルギス: 天山山脈（Tian Shan）のChap-1遺跡で出土した、終末期青銅器時代（Final Bronze Age）・紀元前1065年～前835年（cal BCE）のヒツジやヤギについて炭素と酸素の安定同位体分析。夏季には標高の高い牧草地に移動。家畜の出産時期は秋冬に集中しており、肉や乳の入手可能性を拡大するための戦略。
cf. Taylor R. Hermes, Clemens Schmid, Kubatbek Tabaldiev, Giedre Motuzaite Matuzeviciute (2022) Carbon and oxygen stable isotopic evidence for diverse sheep and goat husbandry strategies amid a Final Bronze Age farming milieu in the Kyrgyz Tian Shan. International Journal of Osteoarchaeology. [Wiley Online Library]
アイルランド: リフォード橋（Lifford Bridge）近くのフォイル川（River Foyle）で、新たに中世の丸木舟2隻。[BBC]

2022年3月26日（土）

北海道: 厚沢部町・館城跡（たてじょうあと）の礎石建物の周辺で金属探査。探査区域内に推定されている2棟の建物に挟まれた領域は金属反応の分布が少ない。東側建物の南北に高密度の反応分布。金属反応の集中は建物の北東部と南東部、南西部に見られる。『館築城圖』と比較すると、北東部は藩主家族に仕える女性たちの空間、南東部は藩主の日常生活空間、南西部は中�上級藩士らが日中所在する空間。
科学の力が解き明かす館城のすがた�金属探査編�[厚沢部文化遺産調査プロジェクト]
▼北海道檜山郡厚沢部町
▼館城跡関連記事→2010年3月15日
長野県: 朝日村・氏神遺跡で縄文時代中期から平安時代の土器や遺構。朝日村の調査。[市民タイムスWEB]
浜松市: 中区・浜松市博物館が収蔵資料6点を紛失した問題で、再調査の結果、このうち1点「東海道名所図会」が2021年12月に見つかった。同館収蔵の別資料の中に混在していた。一方、現在も所在不明の5点のうち1点「浜松城二の丸絵図」は2018年までに紛失の事実が判明していたが、担当職員が紛失していないかのように偽り、当時の上司や館長ら少なくとも3人が紛失を把握していた。浜松市3/25発表。[静岡新聞]
▼2024年1月1日から浜松市中央区
▼浜松城二の丸絵図などの紛失問題関連記事→2021年11月30日
中国: 山西省運城市稷山県東渠村・東渠遺跡で、夏文化の遺跡。住居跡1基、土器窯2基、灰坑16基。土器、玉石器、骨器など出土。[中国新聞網]
中国: 山西省運城市垣曲県英言鎮北白鵝村・北白鵝墓地で、春秋時代早期の大型・中型墓9基。うち、男性を葬るM3号墓と女性を葬るM2号墓は距離が近く、貴族夫婦の異穴合葬墓の可能性。[中国新聞網]
中国: 湖南省澧県・孫家崗遺跡（Sunjiagang）で、新石器時代晩期～夏早期・4200年前～3800年前の石製武器。社会の緊張状態や紛争・戦争を示すか。[新華社]
▼孫家崗遺跡関連記事→2021年4月27日
パキスタン: スワート県（Swat）バリコット（Barikot）の古代都市バジラ（Bazira）で、南西の城壁に、同市2番目の門を発見。インド・グリーク朝～クシャーン朝・サーサーン朝のころのバジラの都市構造の手がかり。バジラは、紀元前327年にアレクサンドロス大王が征服した都市。[Dawn]カイバル・パクトゥンクワ州（Khyber Pakhtunkhwa）
▼バジラ関連記事→2021年12月20日
ヨルダン: タル・ジラア（Tall Zirā´a）で出土した動物遺体に見られる屠殺痕を分析し、前期青銅器時代～中期青銅器時代の肉処理技術の変化を研究。青銅が日常的な屠殺処理などに用いられるのは中期青銅器時代（MB IIB期）からと判明。
cf. Haskel J. Greenfield, Jeremy A. Beller, Jane S. Gaastra & Dieter Vieweger (2022) Filling the gap: A microscopic zooarchaeological approach to changes in butchering technology during the Early and Middle Bronze periods at Tall Zirā´a, Jordan. Palestine Exploration Quarterly. [Taylor & Francis Online]
スペイン: ブルゴス県（Provincia de Burgos）のアタプエルカ山脈（Sierra de Atapuerca）にあるエル＝ミラドール洞窟（El Mirador）での調査から、動物の糞を燃焼させることが骨の組成や化石化に影響を与え、それらが保存されやすくなることがわかる。
Animal dung burning is key to understanding the conservation of materials at the El Mirador site[Centro Nacional de Investigación sobre la Evolución Humana, CENIEH]

2022年3月25日（金）

岐阜県: 瑞浪市・公文垣内南遺跡（くもがいとみなみいせき）で、古代と中世の掘立柱建物9棟。灰釉陶器の碗や皿が多く出土。虎渓山1号窯式から丸石2号窯式・10世紀後葉～11世紀前葉頃。岐阜県文化財保護センターの調査。公文垣内南遺跡の調査成果を紹介します[岐阜県]
▽記事中、瑞浪市釜戸町（みずなみしかまどちょう）にはルビを表記するのに、公文垣内南遺跡（くもがいとみなみいせき）にはルビをつけない感覚が理解できない。（同サイトの別ページには書いてあります）
岐阜県: 揖斐郡揖斐川町・中村遺跡で、縄文時代早期の集石遺構1基、縄文時代中期の竪穴建物1軒、中世の掘立柱建物2棟。岐阜県文化財保護センターの調査。
中村遺跡の調査成果を紹介します[岐阜県]
名古屋市: 名古屋城天守閣の木造復元をめぐる石垣の保全方法について、石垣を解体せずに補修する方針が3/24決まった。[東海テレビ]
モンゴル: ツァガーン・アグイ洞窟（Цагаан агуй；Tsagaan Agui Cave）で、59000年前～44000年前の絶滅種のラクダCamelus knoblochiの化石と、旧石器時代の遺物。化石には人の屠殺痕。Camelus knoblochiの最後の生息地は27000年前のモンゴルで、後期更新世（Late Pleistocene）に砂漠化により絶滅した、
Last of the giant camels and archaic humans lived together in Mongolia until 27,000 years ago[Phys.Org]
cf. Alexey M. Klementiev, Arina M. Khatsenovich, Yadmaa Tserendagva, Evgeny P. Rybin, Dashzeveg Bazargur, Daria V. Marchenko, Byambaa Gunchinsuren, Anatoly P. Derevianko and John W. Olsen (2022) First Documented Camelus knoblochi Nehring (1901) and Fossil Camelus ferus Przewalski (1878) From Late Pleistocene Archaeological Contexts in Mongolia. Frontiers in Earth Science. [Frontiers]
▼バヤンホンゴル県（Баянхонгор аймаг；Bayankhongor Aimag）
オマーン: アラビア海（Arabian Sea）のハラニヤート諸島（Al-Hallaniyat）＝クリアムリア諸島（Kuria Muria）の最大の島アルハラニヤ島（Jazirat Al Hallaniyyah）にあるHLY-4遺跡で、放射性炭素年代と石器の型式により、新石器時代・紀元前4200～前4000年にヒトがこの島に定住していたことを確認。家畜としてヤギやイヌを利用。イルカ、魚を主な食糧資源とし、さらにウミガメや鳥も食べた。
cf. Vincent Charpentier, Grégor Marchand, Philippe Béarez, Federico Borgi, Rémy Crassard, Christine Lefèvre, Maria Pia Maiorano, Ali Al-Mashani & Jérémie Vosges (2022) The latest Neolithic conquest of “new territories” in the Arabian Sea: The Al-Hallaniyat Archipelago (Kuria Muria, Sultanate of Oman). The Journal of Island and Coastal Archaeology. [Taylor & Francis Online]
パレスチナ（ヨルダン川西岸地区）: エバル山（Mount Ebal）にあるヨシュアの祭壇（Joshua's altar）で2019年に見つかった鉛板は後期青銅器時代・紀元前1200年。最古のヘブライ語の文。神の名「YHVH」への言及も。[The Times of Israel]
▼ヨシュアの祭壇関連記事→2022年1月26日
ロシア: サハティシュIIa墓地（Сахтыш IIа；Sakhtysh IIa）で出土した中期新石器時代・リヤロヴォ文化（Льяловская культура；Lyalovo culture）・紀元前4千年紀の骨製の副葬品を分析。一部の骨製品は、副葬品として作られたのではなく、副葬以前に製造、使用、再加工されたもの。副葬品から見て、当時の狩猟・採集・漁撈民は平等な社会組織。
cf. Julien Treuillot, Elena Kostyleva, Alexander Utkin (2022) A new technological analysis of the bone grave goods from the Sakhtysh IIa cemetery: What meanings for the Lyalovo culture of the 4th millennium BC? Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 42, April 2022, 103398. [ScienceDirect]
セルビア: ヴェリカ・バラニツァ洞窟（Велика Баланица；Velika Balanica）で出土したチバニアン（Chibanian）＝中期更新世（Middle Pleistocene）・30万年前のヒト科の歯4個を分析。1人以上の成人と1人以上の子供で、東地中海地域で最古のネアンデルタール人（Neanderthal）。遺物は中東の同時期のものに対応。チバニアンに、西ヨーロッパと西南アジアの間でバルカン半島を介したヒトの相互作用があった。
cf. Mirjana Roksandic, Predrag Radović, Joshua Lindal, Dušan Mihailović (2022) Early Neanderthals in contact: The Chibanian (Middle Pleistocene) hominin dentition from Velika Balanica Cave, Southern Serbia. Journal of Human Evolution, Volume 166, May 2022, 103175. [ScienceDirect]
フランス: プロヴァンス＝アルプ＝コート・ダジュール地域圏（Provence-Alpes-Côte d'Azur）アルプ＝マリティーム県（Alpes-Maritimes）サルジュ（Saorge）で、古代の水車小屋3基。
Fouille de sauvetage à Saorge : redécouverte des moulins du Cairos (Alpes-Maritimes)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives]

2022年3月24日（木）

北海道: 北海道北部の過去4000年の気候変化を復元。北日本の気候は偏西風の位置と対馬暖流の強度に影響されていた。海洋型のオホーツク文化の南方拡大は対馬暖流の弱化と偏西風の南下により、冷たく乾燥した気候に変化した後に起こった。オホーツク文化の衰退は対馬暖流及びその延長の宗谷暖流の強化に対応。内陸型の続縄文文化、擦文文化、アイヌ文化の空間分布は北縁がオホーツク文化の盛衰に、南縁が偏西風の南北移動に対応した稲作文化の北限の移動に規制されていた。
北海道の縄文時代以降の歴史からみた気候と人間社会の関係（地球環境科学研究院　教授　山本正伸，低温科学研究所　准教授　関　宰）[北海道大学]
cf. Masanobu Yamamoto, Osamu Seki (2022) Impact of Climate Change on Hunter-Fisher-Gatherer Cultures in Northern Japan Over the Past 4,400 Years. Geophysical Research Letters. [American Geophysical Union]
神奈川県: 平塚市・六ノ域遺跡（ろくのいきいせき）で、平安時代・11世紀前半の瑞花双鳥文八稜鏡。神奈川県内で2例目の八稜鏡。
六ノ域遺跡から平安時代の鏡が出土[平塚市]
▼六ノ域遺跡関連記事→2022年3月17日
ウクライナ: ウクライナへの軍事侵攻をめぐり、ロシア科学アカデミー（Российская академия наук；Russian Academy of Sciences）が停戦と平和的解決を求める声明。[共同通信]
ウクライナ: マリウポリ（Маріуполь；Mariupol）のクインジ美術館（Художній музей імені Куїнджі；Kuindzhi Art Museum）がロシア軍の空爆により破壊。クインジの作品の原品は空爆時点では存在せず、模写が置かれていたが、ほかの作家の真作はどうなったか不明。[Українська правда]
ベルギー: ウェスト＝フランデレン州（West-Vlaanderen；West-Flanders）イーペル（Ieper）＝イープル（Ypres）の旧イーペルレー川（OudeIeperlee）で、中世・16世紀の護岸や木造の荷役用クレーンの基礎。1650年ごろ埋め立て。[vrt news]
モロッコ: エル・ムナスラ洞窟（El Mnasra cave）とエル・ハルフーラ洞窟（El Harhoura）で出土した10万年以上前の植物片の81%がオリーブ。細胞の壁孔の状況から見て、意図的に身を割ってから燃やしていた。食料や燃料としてオリーブを使用。アフリカでのオリーブ使用の最古の証拠。
Stone Fruit from the Stone Age: The Earliest Known Olive Use in Africa[Max-Planck-Institut für Menschheitsgeschichte）]
cf. L. Marquer, T. Otto, E. Ben Arous, E. Stoetzel, E. Campmas, A. Zazzo, O. Tombret, A. Seim, W. Kofler, C. Falguères, M. Abdeljalil El Hajraoui & R. Nespoulet (2022) The first use of olives in Africa around 100,000 years ago. Nature Plants, volume 8, pages204–208. [Nature Plants]
グリーンランド: イガリク湖（Lake Igaliku）の堆積物を調査。15世紀前半にヴァイキング（Viking）がグリーンランドを放棄したのは、乾燥化が進んだため。従来考えられていた小氷期による気温の低下のためではない。
REWRITING THE HISTORY BOOKS: WHY THE VIKINGS LEFT GREENLAND[University of Massachusetts Amherst]
cf. Boyang Zhao, Isla S. Castañeda, Jeffrey M. Salacup, Elizabeth K. Thomas, William C. Daniels, Tobias Schneider, Gregory A. de Wet, Raymond S. Bradley (2022) Prolonged drying trend coincident with the demise of Norse settlement in southern Greenland. Science Advances, Vol 8, Issue 12. [Science Advances]
USA: 米国沖のメキシコ湾（Gulf of Mexico）の海底1800mで、19世紀の捕鯨船。1836年に沈んだインダストリー号（Industry）。ネイティヴアメリカンやアフリカ系の奴隷が乗組員。彼らの生活や捕鯨に果たした役割の手がかり。→[LiveScience]
ミシシッピ川（Mississippi River）の河口沖。
NOAA, partners discover wreck of 207-year-old whaling ship[National Oceanic and Atmospheric Administration (@NOAA)]

2022年3月23日（水）

静岡県: 南伊豆町・白水城跡から、15～16世紀の陶磁器。戦国時代の1590年ごろまで城が存在した可能性。後北条氏の重臣級の武士が、城主として配置されたと推測。南伊豆町教育委員会3/22発表。[静岡新聞]
大阪府: 藤井寺市・津堂遺跡（つどういせき）で、4世紀後半の7棟からなる倉庫群。近隣に同時期の津堂城山古墳（つどうしろやまこふん）があり、同古墳を築くため一時的に設けられた倉庫群か。大阪府教育庁の調査。[ABC朝日放送]
3/26現地公開。古墳時代前期末から中期初頭。
古墳時代の建物群跡を発見津堂遺跡（藤井寺市所在）において[大阪府]
和歌山県: 有田市・新堂遺跡で、古代から中・近世にかけての土坑や柱穴・埋桶など。公益財団法人和歌山県文化財センターの調査。3/24-25現地公開。[公益財団法人和歌山県文化財センター]
鳥取県: 米子市・米子城跡（よなごじょうあと）の枡形で、高さ4mの石垣の全容判明。鏡石も確認。米子市の調査。3/26現地説明会。[NHK]
中国: 湖南省（Hunan）長沙（Changsha）の楚（Chu）の墓から出土した戦国時代の銅鏡23面を分析。大半の銅鏡は銅・錫・鉛の3元素からなり、錫の分量が多めの錫・鉛青銅。鉛同位体から3グループに分けられ、大半は地元湖南の材料。長沙は戦国時代の楚で最も鏡鋳造が発展。
cf. Z. Luo, A. C. Fan, Z. Y. Jin, L. Liu, Y. Li, Z. Y. Fan, X. Y. Wu, M. Yang, F. Huang (2022) Scientific Analysis and Research on the Warring States Bronze Mirrors Unearthed from Changsha Chu Cemetery, Hunan Province, China. Archaeometry. [Wiley Online Library]
中国: 内モンゴル自治区赤峰市バイリン左旗（巴林左旗）隆昌鎮保安堂村にある低い丘陵で、遼時代の段々畑。[中国新聞網]
ウクライナ: リビウ市（Львів；Lviv）のリビウ国立博物館（Національний музей；Lviv National Museum）で、収蔵品18万点すべてを地下室に移動。ロシア軍の攻撃による破壊を避けるため。[TBS]
フランス: イル＝ド＝フランス地域圏（Île-de-France）セーヌ＝エ＝マルヌ県（Seine-et-Marne）モー（Meaux）のサン・ファロン平原（Plaine Saint-Faron）で、新石器時代末～青銅器時代初めの護岸と巨石。ガロ＝ローマ時代の石組。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
Des occupations néolithique et gallo-romaine à Meaux (Seine-et-Marne)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives]
フランス: ブルゴーニュ＝フランシュ＝コンテ地域圏（Bourgogne-Franche-Comté）コート＝ドール県（Côte-d'Or）ディジョン（Dijon）で、紀元前40/30年～紀元後10年の居住の痕跡。アグリッパ街道（Via Agrippa）から400の場所。また、モンミュザール城（château de Montmuzard）の18世紀の庭園。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
Sous les jardins du château, une occupation antique à Dijon (Côte-d'Or)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives]
UK（イングランド）: サリー州（the county of Surrey）ステインズ（Staines）で、ローマ時代の硬貨。鉄器時代のタスキオワヌス（Tasciovanus）のスタテル金貨。サクソン・8世紀のシャット銀貨。ヘンリー3世の銀貨や16世紀の指輪など。[SurreyLive]
ベリーズ: ベリーズの洞窟や岩陰で、10000年前～3700年前の墓25基を調査しDNA分析。9600年前～7300年前に北から南へのヒトの移動。5600年前以降、南のコスタリカからコロンビアにかけてのヒトが北へ移動し、その後のヒトの50％以上の先祖に。この南から北への移行がトウモロコシ農耕を伝えた。
Migrants from south carrying maize were early Maya ancestors[University of New Mexico]
cf. Douglas J. Kennett, Mark Lipson, Keith M. Prufer, David Mora-Marín, Richard J. George, Nadin Rohland, Mark Robinson, Willa R. Trask, Heather H. J. Edgar, Ethan C. Hill, Erin E. Ray, Paige Lynch, Emily Moes, Lexi O’Donnell, Thomas K. Harper, Emily J. Kate, Josue Ramos, John Morris, Said M. Gutierrez, Timothy M. Ryan, Brendan J. Culleton, Jaime J. Awe & David Reich (2022) South-to-north migration preceded the advent of intensive farming in the Maya region. Nature Communications, volume 13, Article number: 1530. [Nature Communications]
ペルー: クスコ県（Departamento de Cusco）・マチュピチュ遺跡（Machu Picchu）は本来、最も近い峰を指す「ワイナピチュ」（Huayna Picchu）の名で呼ばれていた。マチュピチュは遺跡付近で最も高い山の名だった。ハイラム・ビンガム（Hiram Bingham）の野帳、20世紀初めの地図、さまざまな史料を検討。ビンガムが1911年に最初に訪れた時は名称があいまい。ビンガムの訪問以前に刊行された地図を参照すると、1904年の地図には「ワイナピチュ」と表示。ビンガムに対しても「ワイナピチュ」であることを告げた者がいた。スペイン人征服者がこの地を制圧した直後の16世紀の史料でも「ワイナピチュ」と言及。
Study reconsiders name of Peru’s Machu Picchu[University of Illinois Chicago]
cf. Donato Amado Gonzales & Brian S. Bauer (2022) The Ancient Inca Town Named Huayna Picchu. Ñawpa Pacha: Journal of Andean Archaeology, Volume 42, Issue 1. [Taylor & Francis Online]

2022年3月22日（火）

岐阜県: 御嵩町・願興寺本堂の基壇の下から、飛鳥時代・7世紀後半の古代瓦。前身寺院が存在した可能性。御嵩町教育委員会の調査。[朝日新聞]
名古屋市: 名古屋城の西北隅櫓で、2019年10月壁の一部の漆喰が剥がれたことがわかったが、名古屋市教育委員会は、文化庁への毀損届の提出を、2年半にわたって怠っていた。[東海テレビ]
韓国: 中島遺跡（Jungdo）の支石墓（dolmen）3基の石材の下と堆積6か所について、石英の光刺激ルミネセンス（optically stimulated luminescence；OSL）による年代測定。マルチグレイン法では4300年前～3200年前で、従来の放射性炭素年代や、支石墓のうち1基から出土した人骨の放射性炭素年代（2119年前～1750年前）より古いが、シングルグレイン法では2900年前～2200年前で、放射性炭素年代とも矛盾がない。
cf. Seok-Jin Kim, Jeong-Heon Choi, Hyoun Soo Lim, Seungwon Shin, Eun-Young Yeo, Hyo-Jeong Weon & Seoyoung Heo (2022) Multiple and single grain quartz OSL dating of dolmens in Jungdo, central Korean Peninsula. Geosciences Journal, volume 26, pages487–498. [SpringerLink]
インド: グジャラート州（Gujarat）で出土したシカールプル遺跡（Shikarpur）で出土した青銅器時代・4200年前～4000年前の土器11点に残る、澱粉と脂質の痕跡を分析し、近隣のダットラーナ遺跡（Datrana）とローテーシュワル遺跡（Loteshwar）で出土した銅石器時代・5300年前～4300年前の土器17点と比較。野生、栽培や牧畜、さらには輸入した食物を利用。ダットラーナ遺跡ではデンプンの99%はグジャラート州に自生しないコムギ類。ローテーシュワル遺跡とシカールプル遺跡では主にマメ類の澱粉が見られ、すりつぶして調理された。3遺跡の土器が見つかった脂質は雑食動物のもので、反芻動物は少なく、魚や乳製品は見られない。植物珪酸体は見られず、調理時に取り除かれたとみられる。銅石器時代から青銅器時代への文化変化が調理法に影響を与えた証拠はない。[Heritage Daily]
cf. Juan José García-Granero, Akshyeta Suryanarayan, Miriam Cubas, Oliver E. Craig, Marc Cárdenas, P. Ajithprasad and Marco Madella (2022) Integrating Lipid and Starch Grain Analyses From Pottery Vessels to Explore Prehistoric Foodways in Northern Gujarat, India. Frontiers in Ecology and Evolution, 10. [Frontiers in Ecology and Evolution]
イタリア: シチリア島（Sicily）のモティア（Motya）で、紀元前550年ごろにフェニキア人（Phoenicians）が建設した2500年前の人工池。バアル神（Ba'al）の神殿や祭壇に囲まれた聖なる池の可能性。レイアウトは星座を反映。[LiveScience]
cf. Lorenzo Nigro (2022) The sacred pool of Ba'al: a reinterpretation of the ‘Kothon’ at Motya. Antiquity, First View, pp. 1 - 18 [Cambridge Core]
ドイツ: ザクセン＝アンハルト州（Land Sachsen-Anhalt）ザーレ郡（Saalekreis）フリードリヒスシュヴェルツ（Friedrichsschwerz）で、4200年前の生贄のイヌ2頭。[Mitteldeutsche Zeitung]
北米大陸: 宇宙線が地表に照射した年代により、アラスカ、ユーコンからグレートプレーンズに至る無氷回廊（Ice-Free Corridor）が最終的に開通した年代は13800±500年前と特定。クローヴィス文化以前の人類がアメリカ大陸に登場したとされる16000年前～15500年前よりもかなり後。無氷回廊は人類がアメリカ大陸に到達した経路としては利用できず、地質学的証拠から見て、太平洋岸のルートが早くから利用可能だった。
cf. Jorie Clark, Anders E. Carlson, Alberto V. Reyes, Elizabeth C. B. Carlson, Louise Guillaume, Glenn A. Milne, Lev Tarasov, Marc Caffee, Klaus Wilcken, and Dylan H. Rood (2022) The age of the opening of the Ice-Free Corridor and implications for the peopling of the Americas. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119 (14) e2118558119. [PNAS]
ペルー: ランバイエケ県（Departamento de Lambayeque；Lambayeque Region）フェレニャフェ郡（Ferreñafe）ポマックの森（Bosque de Pómac）でラスベンタナス（Las Ventanas）のピラミッドの下からシカン文化（Sicán culture）中期・900～1050年の外科医の墓。青銅製の手術道具を副葬。[Andina]

2022年3月21日（月）

福島県: 相馬市・涼ケ岡八幡神社で、3/16の地震により本殿の欄干などが破損。境内の粟嶋神社、稲荷神社などの社殿にも被害があり、参道の大鳥居や石灯篭も損傷。正西寺では山門が全壊。[福島民友新聞]
兵庫県: 明石市・明石城跡（あかしじょうあと）で兵庫県が実施している樹木伐採に対し、市民や明石市長から疑問や反対の声。[MBS毎日放送]
中国: 重慶市九竜坡区銅罐駅鎮・冬笋壩遺跡で、巴文化・2200年以上前の墓から、巴文化の竹製品出土。[中国新聞網]
エジプト: アビドス（Abydos）の醸造所跡で、醸造遺構の長さ35m以上と判明。糖化（mashing）の工程で土器を配置する場所が80か所以上。仮に8つの遺構が同規模なら醸造量は5万リットルに及ぶ。また、ナカダ3期（Naqada III）～第1王朝にさかのぼる醸造遺構も発見。醸造されたビールは王家の祭儀場で用いられた可能性。[Abydos Archaeology]
▼アビドス関連記事→2021年2月14日

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