きまぐれNEWSLINK：2022年5月中旬2022年5月20日（金）
- 徳島県
- 徳島市・徳島城の外郭の遺構について、専門家が史跡への追加指定を求めているが、徳島県側は史跡指定によって新ホール整備ができなくなるため難色。[徳島新聞]
- 沖縄県
- 南城市・神座原古墓群（かんざばるこぼぐん）に埋葬され、現在は付近の納骨堂に移されている、石厨子に納められていた15〜17世紀の成人男性の古人骨3体について、ミトコンドリアDNA分析。それぞれ母系が日本、朝鮮半島、ヨーロッパ由来。[毎日新聞]
石厨子は1706年に作られたもので、人骨は300年余り前に再埋葬された成人男性。異国から来た人を拒否したり排除することなく受け入れ新たな家族を作り地域共同体を作ってきた。[QAB琉球朝日放送] - 韓国
- 忠清南道 扶余郡・加林城（第8次調査）の北側で、百済時代の城壁。以降、朝鮮時代まで5次にわたって築城。高麗時代の井戸や、石造りの排水路も確認。百済 泗沘都邑期の東城王23年（501年）に築造された城。[聯合ニュース]
▼加林城関連記事→2020年8月13日 - 韓国
- 釜山市 ・加徳島 にある天城鎮城（第5次調査）で、指揮台や階段の跡。文禄慶長の役（壬辰倭乱）のとき、忠武公 李舜臣将軍が活用した場所の可能性。釜山市立博物館の調査。[聯合ニュース]
- 北朝鮮
- 開城市 解線里で、高麗25代の王、忠烈王のものと推定される、14世紀の王陵級の壁画墓。長さ365cm、幅300cm、高さ235cmの石室。東側250mには忠烈王の王妃の墓も。[聯合ニュース]
- 中国
- 湖北省 荊門市・屈家嶺遺跡で出土した5100年前〜4500年前の黒衣卵殻陶を分析。新石器時代のほかの地域の彩陶や黒陶とは全く異なり、ガラス化が進んだ国内最古の高温黒釉陶。高温の黒釉技術は1000年古い。[中国新聞網]
▼屈家嶺遺跡関連記事→2020年12月9日 - ヨルダン
- ウムカイス遺跡（Umm Qais）＝古代ガダラ（Gadara）で出土した、ヨルダンでは珍しい大理石製の石棺を検討。紀元前3世紀のもので、台座と蓋が遺存し、描かれたレリーフの内容からアッティカ（Attic）のもの。材質から見てアテネのペンテリコン山（Πεντελικόν；Pentelikon）産の大理石を使用。
cf. Khaled Al-Bashaireh (2022) A marble Sarcophagus of Gadara (Umm Qais), Jordan: insights on its provenance. Levant. [Taylor & Francis Online] - ジョージア
- 南コーカサスの後期青銅器時代〜前期鉄器時代・紀元前1500年〜前800年の砦のうち、ムツヴァネ・ゴラ（Mtsvane Gora）とドマニシス・ゴラ（Dmanisis Gora）を検討。さまざまな活動が行われており、一時的な避難場所ではなく、長期的な生活の場だった。
cf. Nathaniel L. Erb-Satullo & Dimitri Jachvliani (2022) Fortified Communities in the South Caucasus: Insights from Mtsvane Gora and Dmanisis Gora. Journal of Field Archaeology. [Taylor & Francis Online] - フランス
- サントル＝ヴァル・ド・ロワール地域圏（Centre-Val-de-Loire）ブロワ（Blois）で、13世紀の城壁の外側のサン・ヴァンサン地区（Saint-Vincent）から、カロリング朝の集落と、15〜16世紀のジュ・ド・ポーム（jeu de paume）のコート。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
Les métamorphoses de Blois[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives]
▼サントル＝ヴァル・ド・ロワール地域圏（Centre-Val-de-Loire）ロワール＝エ＝シェール県（Loir-et-Cher） - UK（イングランド）
- ダーリントン・ウォールズ（Durrington Walls）で出土した新石器時代・5000年前〜4000年前の糞石19試料を分析。うち5個からさまざまな寄生虫卵を確認。人々と、彼らが飼ったイヌは、寄生虫に侵されていた。饗宴で加熱不十分な肉を食べたと推定。ダーリントン・ウォールズは、ストーンヘンジを建設した労働者の遺跡と推定されている。
Stonehenge builders were infested with parasites, ancient poop reveals[LiveScience]
cf. Piers D. Mitchell, Evilena Anastasiou, Helen L. Whelton, Ian D. Bull, Mike Parker Pearson and Lisa-Marie Shillito (2022) Intestinal parasites in the Neolithic population who built Stonehenge (Durrington Walls, 2500 BCE). Parasitology, First View, pp. 1 - 7. [Cambridge Core] - UK（イングランド）
- オックスフォードシャー州（the county of Oxfordshire）ウッドストック（Woodstock）のブレナム宮殿（Blenheim Palace）で、14世紀の水車小屋のものと思われる壁や水路。ブレナム宮殿以前にあったウッドストック宮殿（Woodstock Palace）のために使われていたとみられる。Wessex Archaeologyの調査。[Oxfordshire Live]
- エジプト
- 紅海沿岸の都市ベレニケ（Βερενίκη；Berenike）で、1500年前のエリートの墓。人骨7体出土。不自然な姿勢で、縛られていたか、包装されていた可能性。[Nauka w Polsce]
- USA
- カリフォルニア州（State of California） プレシディオ・オブ・モントレー基地（Presidio of Monterey）でアワビの貝層を発掘。手吹きのワインボトルが出土し、陸軍の兵士たちによって形成された貝塚と判明。[dvids]
2022年5月19日（木）
- 愛知県
- 渥美半島の貝塚出土する縄文時代後期〜晩期の大量の人骨のうち、盤状集積葬の意義を検討するため、保美貝塚（ほびかいづか）で出土したヒトの歯のエナメル質22試料、伊川津貝塚（いかわづかいづか）の30試料について、ストロンチウム同位体分析。盤状集積葬から出土した歯のエナメル質は、保美貝塚の単葬墓に比べ、高い率のストロンチウム同位体比。盤状集積葬と、伊川津遺跡の集団墓では、一部の個体が高いストロンチウム同位体比を示し、同地域の人骨や現代の植物のストロンチウム同位体比の範囲を超えていることから、ほかの地域で育ち、埋葬地にやってきた人物と推定。
cf. SOICHIRO KUSAKA, TSUTOMU SAITO, ERIKO ISHIMARU, YASUHIRO YAMADA (2022) Strontium isotope analysis on human skeletal remains from the Hobi and Ikawazu shell-mounds in Aichi Prefecture, Japan. Anthropological Science, Article ID: 2202191. [J-STAGE] - 韓国
- 京畿道 驪州市 山北面・走魚寺跡で、朝鮮時代の建物跡3棟（金堂、寮舎など）と、「造瓦以主信」銘のある瓦、梵字を刻んだ軒平瓦、白磁片、常平通宝銅銭など。銘文中の「主信」は寺の施主となった人物の名とみられる。走魚寺跡の創建・廃寺年代は記録に残っていないが、朝鮮時代・17〜19世紀に営まれたとみられる。仏教文化財研究所の調査。[聯合ニュース]
- フィリピン
- ケソン州（Province of Quezon）カタナワン（Catanauan）の埋葬遺跡で2017年に蔵骨容器の下から、2000年前の短剣が出土。刀身は木葉形。骨製の柄にはガラス玉をはめる。首長ダトゥ（Datu）が所有したとみられる。[Esquire Philippines]
- ウクライナ
- ドニステール川（ドニエストル川；Дністер；Dniester）中流のドロシフツィ3遺跡（Дорошівці III；Doroshivtsi III）で、後期旧石器時代・グラヴェット文化（Gravettian）のキャンプサイト。
cf. Marta Połtowicz-Bobak, Larissa Kulakovska, Dariusz Bobak, Vitaly Usik, Olesia Kononenko, Maria Łanczont, Przemysław Mroczek, Karol Standzikowski, Laëtitia Demay and Adam Nadachowski (2022) Old site, new problems: the Gravettian campsite of Doroshivtsi III, Middle Dniester River Valley, western Ukraine. Antiquity, Volume 96, Issue 388, August 2022, pp. 998 - 1007. [Cambridge Core] - ギリシャ
- エウボイア島（Εύβοια；Euboea） アマリントス（Αμάρυνθος；Amarynthos）で、紀元前500年〜前300年のアルテミス女神（Ἄρτεμις；Artemis）の神殿跡を発見。存在が想定されていた場所から6マイル離れた地点。[Greek City Times]
- イタリア
- トレンティーノ＝アルト・アディジェ自治州（Trentino Alto Adige）ボルツァーノ自治県（Provincia autonoma di Bolzano；Bozen）サロルノ（Salorno）のドス・デ・ラ・フォルカ遺跡（Dos de la Forca）で、後期青銅器時代・紀元前1150年〜前950年の火葬場ウストリヌム（ustrinum）から人骨63.5kgと、獣骨、土器片、青銅製や骨角製の副葬品。分析の結果、同じ場所で繰り返された火葬の結果が集積したと解釈。
cf. Federica Crivellaro, Claudio Cavazzuti, Francesca Candilio, Alfredo Coppa, Umberto Tecchiati (2022) Salorno—Dos de la Forca (Adige Valley, Northern Italy): A unique cremation site of the Late Bronze Age. PLoS ONE, 17(5): e0267532. [PLOS ONE] - UK（イングランド）
- サイレンセスター（Cirencester）で、青銅器時代・3000年以上前の矛。青銅器時代、鉄器時代、ローマ時代の土器、獣骨、住居跡も。Cotswold Archaeologyの調査。[Thames Water]
▼グロスタシャー州（the county of Gloucestershire） - UK（イングランド）
- コーンウォール州（the county of Cornwall）ボドミン（Bodmin）の祭祀遺跡カスティリ・ヘンジ（Castilly Henge）で、ストーンサークルを発見。石材は抜き取られたり動かされているが、7つの柱穴が規則的に並ぶ。カスティリ・ヘンジは後期新石器時代・紀元前3000年~前2500年の遺跡とみられており、溝と外側の土塁からなる。中世には劇場、イングランド内戦（清教徒革命）では砲台として利用された。Cornwall Archaeology Unitの調査。[The Guardian]
2022年5月18日（水）
- 韓国
- 慶尚南道 金海市・大成洞古墳群にある金官国・4世紀の古墳、41号木槨墓から2001年に出土した大型の壺の中に、モモの種340個。1基の古墳から出土した例としては韓国最多。モモのヘタが遺存していることから果肉がついた状態で副葬したとみられる。キュウリの種子やフエダイの骨も出土。モモの種子は高霊池山洞古墳群や昌寧松峴洞古墳群など、5世紀の古墳で出土しているが、いずれも15点未満だった。4世紀の副葬例としても初の発見。[聯合ニュース]
- 台湾
- 国立宜蘭大学の構内で十三行文化・400年前の墳墓3基。人骨3体と、いわゆる「金鯉魚」と言われる魚形の金属製品や、ガラス管玉など出土。文献に登場する「擺厘舊社」の跡か。[中央通訊社]
- ラオス
- アンナン山脈（Annamite Mountains）のTam Ngu Hao 2洞窟、通称コブラ洞窟（Cobra cave）で、16万4000年前〜13万1000年前のデニソワ人と思われる少女の歯。3歳半〜8歳半程度。デニソワ人が東南アジアにも住んでおり、さまざまな環境、高度に適応していたことを示す。
Ancient tooth of mysterious Denisovan girl possibly found[LiveScience]
cf. Fabrice Demeter, Clément Zanolli, Kira E. Westaway, Renaud Joannes-Boyau, Philippe Duringer, Mike W. Morley, Frido Welker, Patrick L. Rüther, Matthew M. Skinner, Hugh McColl, Charleen Gaunitz, Lasse Vinner, Tyler E. Dunn, Jesper V. Olsen, Martin Sikora, Jean-Luc Ponche, Eric Suzzoni, Sébastien Frangeul, Quentin Boesch, Pierre-Olivier Antoine, Lei Pan, Song Xing, Jian-Xin Zhao, Richard M. Bailey, Souliphane Boualaphane, Phonephanh Sichanthongtip, Daovee Sihanam, Elise Patole-Edoumba, Françoise Aubaile, Françoise Crozier, Nicolas Bourgon, Alexandra Zachwieja, Thonglith Luangkhoth, Viengkeo Souksavatdy, Thongsa Sayavongkhamdy, Enrico Cappellini, Anne-Marie Bacon, Jean-Jacques Hublin, Eske Willerslev & Laura Shackelford (2022) A Middle Pleistocene Denisovan molar from the Annamite Chain of northern Laos. Nature Communications, volume 13, Article number: 2557. [Nature Communications] - トルコ
- 古代都市オリュンポス（Ὄλυμπος；Olympos）の7地域で2006年〜2021年に出土した動物遺体を研究。すべての時期について、陸、水、空のさまざまな動物を摂取したが、ヤギの骨が最も一般的。海のものではカツオが多く、マグロやサメも食べ、またローマ〜ビザンティン時代のアナトリアでは珍しいホラガイも見られる。
cf. Vedat Onar, B. Yelda Olcay-Uçkan, Muradiye Öztaşkin, Abu Bakar Siddig, Ö. Emre Öncü, Gökçen K. Öztaşkin, Aleksander Chrószcz (2022) Animal exploitation at the Olympos, southwestern Anatolia: Zooarchaeological analysis. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 43, June 2022, 103487. [ScienceDirect] - ドイツ
- バーデン＝ヴュルテンベルク州（Land Baden-Württemberg）のアマー川流域（Ammer）で行った過去11500年間の地質調査によると、中石器時代・9500年前に意図的に植物を燃やし、焼き畑農業（Slash-and-burn cultivation）を行っていた。
ドイツ語 Zündeln vor 9.500 Jahren
英語 Deliberate Torching 9,500 Years Ago[Senckenberg Forschungsinstitut und Naturmuseum]
cf. Shaddai Heidgen, Elena Marinova, Oliver Nelle, Martin Ebner, Teresa Rotava, Yvonne Tafelmaier, Raiko Krauß, Jörg Bofinger, Annett Junginger (2022) Palaeoecological signals for Mesolithic land use in a Central European landscape? Journal of Quaternary Science. [Wiley Online Library] - フランス
- ブーシュ＝デュ＝ローヌ県（Bouches-du-Rhône）サント＝マリー＝ド＝ラ＝メール（Saintes-Maries-de-la-Mer）沖のローマ時代の沈没船23隻から出土した鉄塊に含まれる鉄滓を、ガリア（Gaul）の6つの鉄生産地域の鉄滓と比較。ローヌ川を下る船はベルギー南部のワロン地域（Wallonia）で生産された鉄を積み、ローヌ川を上る船はフランスのモンターニュ・ノワール地区（Montagne Noire）で作られた鉄を運んだ。紀元前2世紀以降、ローマ帝国の拡大に伴って鉄の生産と消費が北斉ヨーロッパで拡大した。
cf. Gaspard Pagès, Philippe Dillmann, Enrique Vega, Marion Berranger, Sylvain Bauvais, Luc Long, Philippe Fluzin (2022) Vice-versa: The iron trade in the western Roman Empire between Gaul and the Mediterranean. PLoS ONE, 17(5): e0268209. [PLOS ONE]
▼サント＝マリー＝ド＝ラ＝メールの沈没船から出土した鉄素材関連記事→2021年9月18日 - USA
- オハイオ州（State of Ohio）カヤホガ・フォールズ（Cuyahoga Falls）のクヤホガ川（Cuyahoga River）の岸で、1781年のタディウス・ペック（Thadius Peck；1711-1781）の墓石。[News 5 Cleveland]
- メキシコ
- チアパス州（Estado de Chiapas）パレンケ（Palenque）で、石棺に納められたマヤのエリート女性の遺体。歯に翡翠をはめ込む。黒曜石などを副葬。メキシコ国立人類学歴史学研究所（Instituto Nacional de Antropología e Historia）の調査。[Chiapas Paralello]
- カリブ海
- バハマ諸島（The Bahamas）とタークス・カイコス諸島（Turks and Caicos Islands）からなるルカヤン諸島（Lucayan Islands）では、南の大アンティル諸島（Greater Antilles）に由来する土器が出土するが、元素分析によって細かい出自を分析。ルカヤン人（Lucayans）は、大アンティル諸島のうちイスパニョーラ島（Hispaniola）北西部のタイノ族（Taínos）と、最も頻繁に交流。一方、大アンティル諸島のうちキューバは、ルカヤン諸島との交流がさほど深くない。
cf. Emily C. Kracht, Lindsay C. Bloch, William F. Keegan (2022) Production of Greater Antillean pottery and its exchange to the Lucayan Islands: A compositional study. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 43, June 2022, 103469. [ScienceDirect]
2022年5月17日（火）
- 広島県
- 廿日市市・宮島の誓真釣井（せいしんつるい）の一つに、広島県教育委員会が、文化財保護法に基づく現状変更の申請や届け出をしないままコンクリート製のふたを設置していた。[中国新聞]
- 愛媛県
- 伊予市・市場南組窯跡群（いちばみなみぐみかまあとぐん）で、県内最古の窯跡を確認。古墳時代中期・5世紀の須恵器の窯跡。伊予市教育委員会などの調査。[愛媛新聞]
- 中国
- 陝西省 ・法門寺（Famen Temple）の地下宮殿（地宮）の後室から1987年の調査で出土した、唐時代・9世紀の奉納品の香料3試料に対する分析。試料1はカンラン科カンラン属の植物に由来する橄香脂（elemi）。フィリピン、ベトナム、インドネシアなどにあり、中国で初めての発見。試料2は沈香（agarwood）。試料3は沈香と乳香（frankincense）を混合した「和香」で、和香の最古の例。乳香が遅くとも唐時代には長安にもたらされていた証拠。沈香や乳香は仏教とかかわりがあり、和香のレシピも仏教とともにシルクロードを伝わった。[中国新聞網]
cf. Meng Ren, Xinlai Ren, Xinyi Wang, and Yimin Yang (2022) Characterization of the incense sacrificed to the sarira of Sakyamuni from Famen Royal Temple during the ninth century in China. Proceedings of the National Academy of Sciences, Vol. 119, No. 21, e2112724119. [PNAS] - イラン
- ギーラーン州（Ostān-e Gīlān）で、大規模な地下都市から、イスラーム時代の土器や施釉陶器。[Tehran Times]
- パレスチナ（ヨルダン川西岸地区）
- ヘロディオン（Herodium）やエリコ（Jericho）のキプロス砦（Kypros fortress）にあるヘロデ大王（King Herod the Great）の浴槽は地元の素材で作られていた。従来はエジプト産とみられていたが、初めてレヴァントの石材と識別可能に。[The Jerusalem Post]
cf. Ayala Amir, Amos Frumkin, Boaz Zissu, Aren M. Maeir, Gil Goobes & Amnon Albeck (2022) Sourcing Herod the Great's calcite-alabaster bathtubs by a multi-analytic approach. Scientific Reports, volume 12, Article number: 7524. [Scientific Reports] - パレスチナ（ヨルダン川西岸地区）
- ワーディー・カリトン（Wadi Chariton）の洞窟で、バル・コクバ（Bar Kokhba；Bar Kochba）の乱（132〜136年）の際のユダヤ人反乱軍に関係した遺物。このうち、「オイルランプ洞窟」（Oil Lamp Cave）では反乱の3年目か4年目に打刻されたテトラドラクマ銀貨（τετράδραχμον；tetradrachm）が出土。ヘロディウム砦（Herodium Fortress）の麓に所在。
Rare Silver Coin Discovered[Bar-Ilan University] - トルコ
- デュズジェ県（Düzce ili）コヌラルプ郡（Konuralp）の古代都市プルシアス・アド・ヒュピウム（Prusias ad Hypium）で、ローマ時代の劇場、城壁、水道橋、橋など。[Hürriyet Daily News]
- ロシア
- 南ウラル地方の墓地3か所から出土した角製の部品を参考に、青銅器時代・シンタシュタ文化（Синташтинская культура；Sintashta culture）・4000年前の弓を再現
Чудо-оружие древних ариев: археологи восстановили лук времен Аркаима
Miracle Weapon of the Ancient Aryans: Archaeologists Reconstruct a Bow from the Times of Arkaim[Южно-Уральский государственный университет] - ドイツ
- ホーエンメルゼン（Hohenmölsen）で、新石器時代・5000年前の竈の中に埋葬されたイヌ2頭の骨。体高45cmで、2〜3歳。[Mitteldeutsche Zeitung]
▼ザクセン＝アンハルト州（Land Sachsen-Anhalt）ブルゲンラント郡（Burgenlandkreis）
2022年5月16日（月）
- 韓国
- 京畿道 広州市・南漢山城の女牆の大部分が毀損されたまま放置。南漢山城の行宮周辺文化財保護区域では、地籍図と実態が相違。管理不行き届きが明らかに。[毎日経済]
- 中国
- 河北省 邢台市 臨西県 楊黄営村で、唐時代・757年の温暉という人物の墓誌。安史の乱のとき安禄山の政権が建てた「燕」国の元号「聖武」を刻む。[中国新聞網]
- イラン
- ハマダーン州（Hamedan）ニハーヴァンド（Nahavand）のテペ・ナガレチ遺跡（Tepe Naqarechi）で、セレウコス朝（Seleucid）のサトラップ（太守；satrap）のものとみられる墓。[Tehran Times]
- イスラエル
- 紅海沿岸の町エイラート（Eilat）で、紀元前5450年〜前4250年の墓の中に、木製の偶像。最古のアーシラト女神（Asherah）像。[Haaretz]
- USA
- オレゴン州（State of Oregon）ユージーン（Eugene）のダウンタウンで、20世紀初頭の中国製陶磁器など、中国人移民の活動の痕跡。
UO archaeology illuminates Chinese businesses in Eugene[University of Oregon] - グアテマラ
- ペテン県（Departamento de Petén）・サンバルトロ遺跡（San Bartolo）にある、後期古典期（late Classic）〜古典期終末（Terminal Classic）の 岩盤に切り込んだ2基のチュルトゥン（Chultun）から出土した微小な植物遺体を分析。トウモロコシのニシュタマリゼーション（Nixtamalization）でうまれたデンプンの球晶を検出。トウモロコシのニシュタマリゼーションを考古学的に初めて検証。また、ニシュタマリゼーションの最古の証拠。さらに、チュルトゥンがその使用期間の間にトイレやゴミ捨て場としても用いられたことが判明。
cf. Lauren M. Santini, Sadie L. Weber, John M. Marston, Astrid Runggaldier (2022) First archaeological identification of nixtamalized maize, from two pit latrines at the ancient Maya site of San Bartolo, Guatemala. Journal of Archaeological Science, Volume 143, July 2022, 105581. [ScienceDirect]
▼ニシュタマリゼーションは穀物をアルカリ水で処理すること。
2022年5月13日（金）
- 名古屋市
- 北区・名城公園遺跡で、古墳時代の竪穴建物跡や掘立柱建物跡。竪穴建物跡からカマド跡検出。須恵器など出土。愛知県埋蔵文化財センターの調査。5/28地元説明会。
埋文 : 名城公園遺跡発掘調査の地元説明会のご案内[愛知県埋蔵文化財センター] - 愛知県
- 西尾市・西尾城北之丸堀跡で、調査の結果、北之丸の堀の幅が15.6mであることが新たに判明。西尾市教育委員会の調査。5/15現地説明会。
西尾城北之丸堀跡の発掘調査現地説明会[西尾市教育委員会] - 長崎県
- 島原市・東空閑城跡（ひがしこがじょうあと）で土塁を確認。有馬氏が築き、1578年に龍造寺隆信の攻撃を受け落城した城。島原市教育委員会の調査。5/22現地説明会。
東空閑城跡で新発見！現地説明会を開催します。[島原市] - インド
- タミル・ナードゥ州（Tamil Nadu） ラーマナータプラム県（Ramanathapuram district）で、中国の12〜13世の白磁。 パーンディヤ朝（Pandyan kingdom）と中国との交易の存在を示す。[News18]
- ジョージア
- 西部のクタイシ（Kutaisi）で、コルキス（Κολχίς；Colchis）の紀元前14世紀〜前12世紀の土器、鋳型。ギリシャと南コーカサスの間の交易を示す遺物も。[Agenda.ge]
- 最初の農耕民
- アナトリアとヨーロッパの世界最初の農耕民をゲノムにより調査。氷河期の末の中東からバルカン半島に至る範囲の狩猟採集民の混合。混血は14000年前に始まる。
The genetic origins of the world’s first farmers clarified[Universität Bern]
cf. Nina Marchi, Laura Winkelbach, Ilektra Schulz, Maxime Brami, Zuzana Hofmanová, Jens Blöcher, Carlos S. Reyna-Blanco, Yoan Diekmann, Alexandre Thiéry, Adamandia Kapopoulou, Vivian Link, Valérie Piuz, Susanne Kreutzer, Sylwia M. Figarska, Elissavet Ganiatsou, Albert Pukaj, Travis J. Struck, Ryan N. Gutenkunst, Necmi Karul, Fokke Gerritsen, Joachim Pechtl, Joris Peters, Andrea Zeeb-Lanz, Eva Lenneis, Maria Teschler-Nicola, Sevasti Triantaphyllou, Sofija Stefanović, Christina Papageorgopoulou, Daniel Wegmann, Joachim Burger, Laurent Excoffier (2022) The genomic origins of the world’s first farmers. Cell. [Cell] - リトアニア
- ヴィリニュス（Vilnius）で、リトアニア大公国（Grand Duchy of Lithuania）・13世紀〜17世紀の切断痕のある遺体3体。2体は1か所の関節、1体は両手を切断。1体は治癒しており、治療されたとみられる。刑罰としての切断の可能性。
cf. Justina Kozakaitė, Andrej Ryčkov, Monika Ramonaitė, Rūta Brindzaitė, Rimantas Jankauskas, Dario Piombino-Mascali (2022) On some paleopathological examples of amputation and the implications for healthcare in 13th-17th century Lithuania. International Journal of Paleopathology, Volume 37, June 2022, Pages 68-76. [ScienceDirect] - フランス
- オー＝ド＝フランス地域圏（Hauts-de-France）ノール県（le département du Nord） スクラン（Seclin）で、中世の教区墓地跡から、メロヴィング朝・5〜8世紀の墓。木棺が一部遺存。[Franceinfo]
- フランス
- ヌーヴェル＝アキテーヌ地域圏（Nouvelle-Aquitaine） クルーズ県（Creuse）エヴォー＝レ＝バン（Évaux-les-Bains）で、古代の浴場跡。1世紀末〜世紀に設置され、4世紀まで使用された。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
Les thermes antiques d'Évaux-les-Bains (Creuse)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives] - ノルウェー
- オスロ（Oslo）で中世の堀。放射性炭素年代では1220年〜1260年の間に築造。ホーコン4世ホーコンソン（Håkon IV Håkonsson；Haakon Haakonsson）が1254年の大火の後に築造。王家の荘園と市街地との間に55mの空白地。当時の防衛システム。1260年〜1280年には使用を終える。
Mysterious medieval moat found in the middle of Oslo: "Could suggest a desperate need for defense"[Science Norway] - USA
- ワイオミング州（State of Wyoming）にあるパワーズII遺跡（Powars II）で、先住民によるヘマタイト（hematite）採掘跡。北米のグレートプレーンズ（Great Plains）やロッキー山脈（Rocky Mountains）での先住民によるヘマタイトの使用は11000年前にさかのぼる。パワーズII遺跡では堆積層からヘマタイトが確認されてたが、採掘跡を原位置でとらえたのは初。
cf. Spencer R. Pelton, Lorena Becerra-Valdivia, Alexander Craib, Sarah Allaun, Chase Mahan, Charles Koenig, Erin Kelley, George Zeimens, and George C. Frison (2022) In situ evidence for Paleoindian hematite quarrying at the Powars II site (48PL330), Wyoming. Proceedings of the National Academy of Sciences, Vol. 119, No. 20, e2201005119. [PNAS]
▼パワーズII遺跡関連記事→2018年6月14日
2022年5月12日（木）
- 鳥取県
- 鳥取市・古代山陰道で、大量の盛り土や地崩れを防ぐ多数の杭跡。盛り土の量430〜700tと大規模で、古代官道であることを裏付け。鳥取県埋蔵文化財センター5/11発表。[日本海新聞]
- 中国
- 関中地域（Guanzhong）の棗樹溝脳遺跡（Zaoshugounao）で出土した青銅器時代・紀元前13世紀〜前10世紀の鹿角製鏃を分析。鹿角加工のほぼ全工程を網羅。遺跡のBIII区第3地点は鹿角加工に特化した場所とみられる。鹿角加工に関しては同時代の都邑クラスの遺跡や村落遺跡のいずれとも異なっており、関中や中原において3つのパターンが存在。
//cf. Yue Li, Zexian Huang, Chengrui Zhang, Furen Hou, Huan Liu, Dandan Zhao, Zhen Wang, Yaopeng Qian, Honghai Chen (2022) Antler arrowhead crafting at Zaoshugounao in the Guanzhong region: Implications for worked bone production in Bronze Age northern China. Quaternary International. [ScienceDirect]
▼棗樹溝脳遺跡関連記事→2021年6月24日 - 中国
- 銀山嶺墓地（Yinshanling）で出土した秦・漢代の鉄製品33試料の金属学的分析。嶺南（Lingnan）地域で出土した鉄の鋳造製品の大半は蜀・楚・呉などの北方地域から輸入と推定。一方での鉄の鍛造製品は、輸入した素材をもとに地元生産。嶺南地域は紀元前214年に秦に征服されるまで百越（Bai Yue）の本拠地だった。
cf. Yuniu Li, Mengyi Zhang, Wan Huang, Shijia Li, Yingfu Li (2022) Early iron production technology of Lingnan, China: A case study of the Yinshanling cemetery site. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 43, June 2022, 103484. [ScienceDirect] - モンゴル
- アルタイ地方の遺跡から出土したヒトの歯石を分析。青銅器時代の間に乳製品の消費が増加したことを証明。
Livestock and dairying led to dramatic social changes in ancient Mongolia, U-M study shows [University of Michigan]
cf. Alicia R. Ventresca Miller, Shevan Wilkin, Jessica Hendy, Tsagaan Turbat, Dunburee Batsukh, Noost Bayarkhuu, Pierre-Henri Giscard, Jan Bemmann, Jamsranjav Bayarsaikhan, Bryan K. Miller, Julia Clark, Patrick Roberts, Nicole Boivin (2022) The spread of herds and horses into the Altai: How livestock and dairying drove social complexity in Mongolia. PLOS ONE, 17(5): e0265775. [PLOS ONE] - インド
- パンジャーブ州（Punjab）アムリトサル県（Amritsar）アジナラ（Ajnala）で、宗教建築の下の井戸から、1857年のインド大反乱＝第一次インド独立戦争（First War of Independence）で死亡したインド兵の遺体282体。[The Print]
- ウクライナ
- オデーサ（Одеса；Одесса）で、ウクライナの領土防衛隊が、陣地を構築する際に4〜5世紀のアンフォラを発見し、オデーサ考古学博物館（Одеський археологічний музей；Odessa Archaeological Museum）に引き渡した。[Facebook : 126 окрема бригада територіальної оборони м.Одеса]
- スペイン
- ガリシア州（Galicia）ポンテベドラ県（Provincia de Pontevedra）のオンス島（isla de Ons）で、ローマ時代・紀元前1世紀〜紀元後4世紀の魚の塩漬けや紫染料の加工所。[El Español]
- エストニア
- ヴィリャンディ（Viljandi）の都市や砦を中心に、エストニア各地で出土した動物遺体を調査。多様な鳥が出土。エストニアでは中世初期には鷹狩りの道具が出土し、狩りのためにタカを訓練していた可能性。またニワトリのけづめが切除された例があり、けづめの代わりに金属などを装着した闘鶏も行った可能性。一方で、鳥類に象徴的な意味を求めた可能性は薄い。[Eesti Rahvusringhääling]
- UK（イングランド）
- ウィルトシャー州（the county of Wiltshire）のストーンヘンジ（Stonehenge）で中石器時代・紀元前8200年〜前7800年の狩猟用のピット。そのうち4m×2mのものは北西ヨーロッパで最大。[BBC]
- アイルランド
- ウェストミース州（County Westmeath）バリーモア（Ballymore）で、13世紀の教会の石材に、キリストの顔が彫られていたことが判明。[Westmeath Independent]
2022年5月11日（水）
- 北朝鮮
- 平壌市 江東郡 イムギョン労働地区にあるイムギョン洞窟遺跡で、後期旧石器時代・2万6千年前〜2万年前の30代女性の人骨。「江東人」と命名。[聯合ニュース]
- トルコ
- シャンルウルファ県（Şanlıurfa） シウェレク郡（Siverek）バシュビュク（Başbük）で、地下の岩壁に中期鉄器時代・新アッシリア帝国・紀元前1世紀前半の線刻壁画。8柱の神像が描かれ、うち3柱にはアラム語の銘文を伴う。銘文にアダド・ニラリ3世（Adad-nirari III；在位：前811年〜前783年）のころの高官Mukīn-abūaの名。シリアの女神アタルガティス（Atargatis）のこの地域での最古例。
cf. Mehmet Önal, Celal Uludağ, Yusuf Koyuncu and Selim Ferruh Adalı (2022) An Assyrianised rock wall panel with figures at Başbük in south-eastern Turkey. Antiquity, First View, pp. 1 - 17. [Cambridge Core] - ポーランド
- グダニスク （Gdańsk）で初期中世の要塞の土塁から出土した11世紀初め〜12世紀中ごろのウマの骨は8〜9歳で体高128cm。歯形と頭蓋の変形から見て、乗馬に使用されたウマ。骨には2種類の損傷があり、一方はウマの利用に伴うもの。他方はウマの過度の利用によるか、感染症によるものの可能性。
cf. Daniel Makowiecki, Maciej Janeczek, Edyta Pasicka, Aleksandra Rozwadowska, Rafał Ciaputa, Karolina Kocińska (2022) Pathologies of a horse skeleton from the early medieval stronghold in Gdańsk (Poland). International Journal of Osteoarchaeology. [Wiley Online Library] - ドイツ
- ニーダーザクセン州（Land Niedersachsen）ゲッティンゲン（Göttingen）で、新石器時代の集落や墓地。長さ33m、幅9mのロングハウスも。[Stern]
- オランダ
- フィアーネン（Vianen）で2020年11月に出土した、18世紀の大型墓地から出土した遺体82体の多くは、野戦病院で病死した英国軍兵士の遺体。78体はイングランド南部出身の男性。すべての外傷が治癒しているのに85%は感染症を患っており、野戦病院の不衛生のために病死と推定。第一次対仏大同盟戦争 （First Coalition；1792〜1797年）で英国が参加した1793年〜1795年のフランスとの戦いに伴うと推定。[BBC]
▼フィアーネンの大型墓地関連記事→2021年2月20日 - フランス
- ノルマンディー地域圏（Normandie）カルヴァドス県（Calvados）ブランヴィル＝シュル＝オルヌ（Blainville-sur-Orne）で、鉄器時代の大規模な墓地。土葬墓121基、火葬墓6基。方形区画や長方形区画も。紀元前540年〜前250年の300年にわたり造営。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
Un habitat et une nécropole de l’âge du Fer à Blainville-sur-Orne (Calvados)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives] - UK（イングランド）
- レドベリー（Ledbury）で中期青銅器時代・紀元前3300年〜前1200年の槍先とローマ時代・1〜2世紀のセヴァーン・ヴァレー土器（Severn Valley Ware）。ほかにローマ時代の硬貨14枚、ブローチ2個、ガラス片、磨り臼、鍛冶用ハンマー、ナイフ。鉄器時代〜ローマ時代の溝。Cotswold Archaeologyの調査。[Ledbury Reporter]
▼ヘレフォードシャー（Herefordshire）
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