考古学のおやつ/NEWSLINK

2020年11月10日（火）

島根県: 益田市・スクモ塚古墳で、墳丘斜面に葺石が使用されていることを、発掘で初めて確認。また、埴輪列を検出。島根県最大の前方後円墳である可能性。益田市教育委員会の調査。11/21現地説明会。
令和2年度スクモ塚古墳発掘調査現地説明会開催のお知らせ[益田市]
▼スクモ塚古墳関連記事→2019年11月29日
沖縄県: 那覇市・沖縄県立博物館・美術館の2021年4月からの指定管理者の公募に、応募が1件もなかった。沖縄美ら島財団の指定期間は本年度で終了したが、財団側は沖縄県が提示した指定管理料では適切な管理ができないとしている。同館はこれまで指定管理者の赤字が続き、財務的な課題を抱えてきた。[沖縄タイムス]
韓国: 京畿道議政府市で、青銅器時代の支石墓と推定される巨石が、公園開発事業の過程で爆破される。私設専門機関が、私設専門機関が、価値のない自然石と判断し、議政府市も同意していた。議政府市も同意していた。しかし、京畿文化財団や世宗大学校博物館は、この巨石を支石墓とみなしており、従来は議政府市も同様であった。[聯合ニュース]
イスラエル: 中部海岸平原で、現代の居住地や埋葬地とは無関係な、狭くて深い人為的な竪穴群がいくつか見られるが、これらはすべて後期銅石器時代（Late Chalcolithic）で、ベエルシェバ（Beer Sheva）・紀元前4200年～前3900年（cal BC）に関連づけられる。
cf. Edwin C. M. van den Brink, Oren Ackermann, Yaakov Anker, Yeshua Dray, Gilad Itach, Eriola Jakoel, Reuven Kapul, Joel Roskin & Steve Weiner "Chalcolithic groundwater mining in the southern Levant: open, vertical shafts in the Late Chalcolithic central coastal plain settlement landscape of Israel" Levant [Taylor & Francis Online]
▼ベエルシェバ関連記事→2020年9月26日
トルコ: ディヤルバクル県（Diyarbakır）のアミダ遺跡（Amida Höyük；Amida Mound）で、宮殿の地下に後期ローマ時代・3世紀の墓。墓室内に石棺を納める。今年の調査で、アルトゥク朝（Artuqid）の宮殿はローマ時代の宮殿の上に建てられ、使用されたこともわかる。[Daily Sabah]
▼アミダ遺跡関連記事→2020年10月12日
ブルガリア: ブルガス州（Област Бургас；Oblast Burgas）のロポタモ川（Ропотамо；Ropotamo）の河口近くで、銅石器時代（Chalcolithic）・5000年前の黒海（Черно Mоре；Black Sea）に水没した集落。以前の調査では初期青銅器時代の集落と考えられていた。5000年前は黒海の水位は5m低かった。
6,000-year-old submerged prehistoric settlement reveals Black Sea level was 5 meters lower 5,000 years ago[Archaeology in Bulgaria]
スイス: アールガウ州（Kanton Aargau）バーデン（Baden）のクルプラッツ（Kurplatz）で、中世のヴェレナ浴場（Verenabad）跡。[Kanton Aargau]

2020年11月9日（月）

鳥取県: 倉吉市・石塚廃寺東遺跡・大鴨遺跡で、石塚廃寺跡の瓦や、古代から中世に至る川跡。寺院周辺の景観の一端が明らかに。大鴨遺跡で奈良時代の多量の木製祭祀具。石塚廃寺に近く、寺での水辺の祭祀の存在を示す。大鴨遺跡で古代の道路遺構や鎌倉時代の屋敷地、室町時代の火葬墓。公益財団法人鳥取県教育文化財団調査室の調査。11/15現地説明会。
倉吉市石塚廃寺東遺跡・大鴨遺跡の現地説明会の開催[鳥取県]
韓国: 全羅南道海南郡花源面の青磁窯跡で、超大型の土築窯。韓国の初期青磁窯では発見されたことがない分炎柱（火窓施設）を伴う。[聯合ニュース]
中国: 内モンゴル自治区・呼和浩特市玉泉区沙梁子村で、前漢中晩期の版築基壇を持つ建物跡。食糧倉庫とみられる。単独の建物としては最大。溝槽式で東西170m、南北21m。16間×2間。100年程度使用された後、焼失。前漢時代の雲中郡犢和県に相当する地点。[中国新聞網]
中国: チベットの格布賽魯遺跡（Gebusailu）で出土した紀元前2千年紀後半のファイアンス・ビーズ13個を分析。円筒形のコアに浸灰技法（cementation）で製作。ソーダリッチ・ファイアンスに分類され、純銅鉱で著色。エジプトから輸入されたか、あるいはエジプトのファイアンスづくりに影響を受けたもの。チベット高原がヒマラヤ山脈を越えたユーラシアの交易網に組み込まれていた。
cf. Shiyuan Cao, Rui Wen, Chun Yu, Wangdue Shargan, Tsering Tash, Dong Wang "New evidence of long-distance interaction across the Himalayas: Faience beads from Western Tibet" Journal of Cultural Heritage [ScienceDirect]
▼格布賽魯遺跡関連記事→2021年4月18日
イスラエル: エルサレム（Jerusalem）で、初期イスラーム時代・940年代～970年代の金貨4枚が土器に入った状態で見つかる。イスラエルの地（Eretz Israel）の支配者がスンニ派のアッバース朝（Abbasid）からシーア派のファーティマ朝（Fatimid）に移るころ。2枚のディナール金貨はカリフ、ムティー（al-Muti；在位946～974年）と、その地方太守アブ・アル・カーシム・イブン・アル・イフシード・ウヌジュル（Abu Ali al-Qasim ibn al-Ihshid Unujur；在位946～961年）が打刻。ほかの2枚はカイロでファーティマ朝のムイッズ（al-Mu’izz；在位953～975年）とその後継者アズィーズ（al-‘Aziz；在位975～996年）が打刻。Israel Antiquities Authorityの調査。
Pottery juglet containing four 1,000-year-old gold coins unearthed in Jerusalem [Israel Ministry of Foreign Affairs]
トルコ: アイドゥン県（Aydın il）カラカス（Karacasu）の古代都市アフロディシアス（Ἀφροδισιάς；Aphrodisias）の遺跡で、ローマ時代・2500年前の石棺が違法に掘り出される。メドゥーサ（Medusa）の浮き彫りを表す。[Hürriyet Daily News]
▽この地域で2500年前がローマ時代というのは計算が合わないが、原文ママ。
ブルガリア: ヴラツァ自治体（Враца；Vratsa）のオホデン村（Оходен；Ohoden）のヴァロガ遺跡（Валога；Valoga）で、4千万年前のウニの化石や、西カルパチア山脈の黒曜石、台形の細石器など出土。黒曜石の産地は遺跡の400km北方。遺跡は初期新石器時代・グラデシュニツァ・カルチャ文化（Gradeshnitsa-Karcha）・8000年前とみなされていたが、最下層の放射性炭素年代により、遺跡の始まりが中石器時代末・9000年前までさかのぼると判明。
Prehistoric people owned 40-million-year-old sea urchin fossil, Carpathian obsidian, Neolithic settlement in Bulgaria’s Ohoden pushed back to Mesolithic [Archaeology in Bulgaria]
▼ヴラツァ州（Област Враца；Oblast Vratsa）
ポーランド: マゾフシェ県（Województwo mazowieckie）ポニャティ・ビエルキエ（Poniaty Wielkie）で、中世・11/12世紀～13世紀の集落から金属器や土器。
Mazowieckie/ Spektakularne znaleziska w średniowiecznej osadzie w Poniatach Wielkich[Nauka w Polsce]
ジャージー島: ファルドゥエ（Faldouet）のドルメンの石材がドリルの被害に。水晶（quartz crystal）を得るためとみられる。新石器時代・6000年前の羨道墳。La Société Jersiaiseの調査。[Channel 103]
UK（イングランド）: エセックス州（the county of Essex）チェルムズフォード（Chelmsford）で、アングロサクソン・640年の金貨。うち1枚に表されている肖像は、英国に定着したゲルマン人部族の人物とみられる。また、南東イングランドの部族集団と同盟関係にあったメロヴィング朝の硬貨も。[Daily Mail]

2020年11月8日（日）

島根県: 浜田市に「いわみ文化振興センター」11/1オープン。石見神楽などを定期的に上演。[毎日新聞]
韓国: 全羅南道海南郡で全羅右水営跡で、内衙（官舎）、東軒（執務室）、出入口施設などの建物の跡を確認。「右水」の銘が入った白磁や、瓦、銅銭なども出土。全羅右水営跡は朝鮮時代・世宗22年（1440年）に設置され、高宗32年（1895）まで設置されていた軍事施設で、鳴梁大捷の作戦会議を開いた場所。[聯合ニュース]
イラン: 西アーザルバーイジャーン州（Ostān-e Āzarbāyjān-e Gharbī；West Azarbaijan）ゲルドアシュヴァーン村（Gerd Ashvan）で、紀元前4000年のマウンド。新石器時代や銅器時代の編年の手がかりに。新石器時代や銅器時代に墓として用いられた巨大な土器出土。同様の葬法はイラン北西部では確認されず。[Tehran Times]
南レヴァント: 南レヴァントのナトゥーフ文化（Natufian）～先土器新石器時代（Pre-pottery Neolithic）の歯7本を分析して金属汚染のベースラインとし、鉄器時代の28人、ハカーマニシュ朝（アケメネス朝；Achaemenid）の3人と比較したところ、鉄器時代のヒトの1/3に金属汚染がみられる。ストロンチウム同位体からみて、海岸や海の影響。冶金活動だけでなく、金属の貿易によっても金属汚染。
cf. Tzilla Eshel, Naama Yahalom-Mack, Ofir Tirosh, Aren M. Maeir, Yehudit Harlavan, Ayelet Gilboa, Yigal Erel "Pollution and human mobility in the southern Levant during the Iron Age using chemical and isotopic analysis of human tooth enamel" Journal of Archaeological Science. Volume 124 [ScienceDirect]
トルコ: アドゥヤマン県（Adıyaman ili）のペッレ（Πέρρη；Perre）で、1500年前の石棺墓から男性の人骨。[Anadolu Ajansı]
ブルガリア: モンタナ州（Област Монтана；Oblast Montana）ロム（Лом；Lom）の古代ローマ都市アルムス（Almus）で、ローマ時代・1世紀後半の墓石。ラテン語で、44年間ローマ軍で働いた人物のストーリーを記す。北西ブルガリアでは最古のローマの碑文。
‘Sad’ story of Roman veteran who served 44 years in military revealed by tombstone from Almus in Bulgaria’s Danube town Lom [Archaeology in Bulgaria]
ドイツ: バーデン＝ヴュルテンベルク州（Land Baden-Württemberg）マンハイム市（Mannheim）のネッカラウ（Neckarau）で、中世盛期（hohe Mittelalter）・11～12世紀の集落。17～18世紀の地下室に胞衣壺（Nachgeburtstopf）10個。中世後期～近世の可能性のある地下室も。また、19世紀前葉の井戸。
Grabungen im Mannheimer Stadtteil Neckarau erfolgreich abgeschlossen[Archaeologie Online]

2020年11月7日（土）

群馬県: 藤岡市・七輿山古墳（ななこしやまこふん）の後円部で、幅10mの中堤帯を確認。内堀と外堀に挟まれる形で古墳の外周を囲む。名古屋市の断夫山古墳と古墳の構造が似る。6世紀の前方後円墳。藤岡市など11/6発表。[毎日新聞]
大阪府: 寝屋川市・長栄寺で、移設のため解体した石塔の基礎から江戸時代・1725年の礫石経130個。寝屋川市の調査。11/4-29寝屋川市立埋蔵文化財資料館で公開。[寝屋川つーしん]
島根県: 浜田市の石見神楽面愛好家・竹内惟臣氏が、収集した石見神楽面のうち394点を写真集にまとめて自費出版。500点超を収集し自宅に設けた「石州神楽堂」で公開。[毎日新聞]
沖縄県: 那覇市・首里城地下の旧日本軍第32軍司令部壕について、文献などの資料収集事業「第32軍司令部壕実態調査（仮称）」を実施へ。沖縄県の玉城デニー知事が11/6発表。[琉球新報]
▼第32軍司令部壕関連記事→2020年6月26日
中国: 遼寧省撫順市で、日本の南満州鉄道が1930年代に建設した発電所の「第2工場」の建物が、誤って取り壊された。撫順市の工業遺産とされていた。[朝日新聞]
中国: 北京市・路県故城で、漢時代の大規模な金属工房跡。[中国新聞網]
イラン: テペ・マハタージ（Tapeh Mahtaj）で、石器を再利用して築いた初期新石器時代（Early Neolithic）・9000年前の遺構。イラン南西部の低地に初期新石器時代にはヒトが居住していた証拠。
cf. Hojjat Darabi, Pernille Bangsgaard, Amaia Arranz-Otaegui, Golnaz Ahadi and Jesper Olsen (2021) Early Neolithic occupation of the lowlands of south-western Iran: new evidence from Tapeh Mahtaj. Antiquity, Volume 95, Issue 379, February 2021, pp. 27 - 44 [Cambridge Core]
イラン: マルキャズィー州（Ostān-e Markazī）のエブラーヒーマーバード（Ebrahim-Abad）でセルジューク朝（Seljuk）の巨大な壺。高さ1.2m。[Tehran Times]
▼マルキャズィー州（Ostān-e Markazī）アラーク郡（Arak）
イラン: 北ホラーサーン州（Ostān-e Khorāsān-e Shomālī；North Khorasan province）ファールージ（Faruj）のヴィランシャフル（Viran-Shahr）で、パルティア時代（Parthia）の砦の城壁や櫓。[Tehran Times]
カザフスタン: パブロダール州（Павлодар облысы；Pavlodar Region）バヤナウル地区（Баянауыл；Bayanaul）キジルタウ（Кызылтау；Kyzyltau）で、初期鉄器時代・紀元前8～前7世紀の石碑。頂部に太陽を表す円形を刻む。また、中世のジョチ・ウルス（キプチャク・ハン国；Алтын Орда；Golden Horde）の建築遺構も。[Kazinform]
ギリシャ: キトノス島（Κύθνος；Kythnos）沖の小島ヴリオカストラキ島（Βρυοκαστράκι：Vryokastraki）は、紀元前12世紀～紀元後7世紀に継続的にヒトが居住。ビザンティン時代に再利用された石材に、ギリシャ語の銘文が見つかる。銘文によると、海賊グラフケティス（Γλαυκέτης；Glafketis）は、紀元前4世紀にキトノス島を支配。マケドニア人に支援されていたが、最終的にはアテネ人により排除された。島の官僚制度に関する史料も。[Greek Reporter]
▼ヴリオカストラキ島関連記事→2020年11月2日
ポーランド: クヤヴィ＝ポモージェ県（Województwo kujawsko-pomorskie）イノヴロツワフ郡（Powiat inowrocławski；Inowrocław）ロイェヴォ（Rojewo）にあるイェズイツカ・ストルガ（Jezuicka Struga）の森林で、ヤン2世カジミェシュ・ヴァーザ（Jan II Kazimierz Waza；Jan II Casimir）の治世・1657年～1667年の硬貨86枚。スウェーデンとの戦争が相次ぎ、ポーランド・リトアニア共和国（Rzeczpospolita Obojga Narodów；Polish-Lithuanian Commonwealth）が衰微した大洪水時代（Potop szwedzk；Deluge）の直後に当たる時期に打刻。[The First News]
フランス: ヌーヴェル＝アキテーヌ地域圏（Nouvelle-Aquitaine）トゥアール（Thouars）のジュリュソー通り（rue Gellusseau）で、貯蔵穴と大量の中世の土器。[Ouest-France]
▼ヌーヴェル＝アキテーヌ地域圏（Nouvelle-Aquitaine）ドゥー＝セーヴル県（Deux-Sèvres）
UK（イングランド）: ドーセット州（the county of Dorset）タラント・ヒントン（Tarrant Hinton）で出土した、ブリテン島最古の結核（tuberculosis）の症例である鉄器時代・紀元前400年～前230年の男性の人骨について、炭素、窒素、ストロンチウム、酸素の同位体分析。この男性は8～14歳のころブリテン島南部の白亜地域（chalklands）で生活。8歳程度の時にドーセットにやってきた。それ以前はブリテン島の外の石炭系石灰岩（Carboniferous Limestone）地域の出身。アイルランドの南部や西部、南西フランスの大西洋岸、スペイン北部のカンタブリア山地が候補。
Iron Age man with the first known case of TB in Britain was a migrant from continental Europe[University of Southampton]

2020年11月6日（金）

茨城県: 常陸太田市・太田城跡（第2次調査）で、近世の絵図にない堀跡。土塁と堀で囲んだ連郭式城郭。堀は15～16世紀。常陸太田市教育委員会の調査。[茨城新聞]
山梨県: 韮崎市・新府城跡（しんぷじょうあと）で、虎口の門の礎石5基を確認。韮崎市教育委員会の調査。[山梨日日新聞]
▼新府城跡関連記事→2020年11月4日
三重県: 鈴鹿市・富士山1号墳（ふじやまいちごうふん）は、帆立て貝式古墳と判明。円形の墳丘が大きく、方形部が小さい。従来は前方後円墳とされてきた。鈴鹿市の測量調査。[中日新聞]
滋賀県: 長浜市・竹生島にある宝厳寺の国宝修理にかかわる滋賀県発注工事の官製談合事件で、滋賀県文化財保護課主査と長浜市の工務店元社長に有罪判決。[京都新聞]
兵庫県: 宍粟市・金谷地区で2基の古墳、金谷4号墳と金谷5号墳が確認される。住民の指摘により、宍粟市教育委員会が調査。[神戸新聞]
島根県: 松江市の無人の小島「九島」（くしま）で、太平洋戦争末期に日本軍が建設を進めた「水中特攻基地」の一部とみられる巨大な壕。[毎日新聞]
韓国: 世宗市全義面辛芳里にある山城・李城の頂上部の東壁区間を発掘調査し、三国時代・6～7世紀の百済と新羅の土器が出土。城壁は2度にわたって築造。百済が築城し、その後新羅が占領したと判明。漢城文化財研究院の調査。[聯合ニュース]
中国: 吉林省吉林市豊満区江南郷永安村の松花江東岸にある永安遺跡で、大量の建築遺構。軒丸瓦、文様磚、土器などが出土しているが、高句麗・渤海・遼・金などのものとは異なっており、夫余の時代のものとみられる。吉林省文物考古研究所の調査。夫余は紀元前2世紀から494年前中国東北地方に存在した少数民族政権。[中国新聞網]
モンゴル: モンゴルとバイカル湖地域で6000年間に及ぶ古人骨214体のゲノムを分析。紀元前3000年ごろモンゴルに牧畜民が進出。後期青銅器時代のモンゴルに、食生活で3種に分類できる牧畜民集団。匈奴（Xiongnu）の遊牧帝国は、これらの集団に、さらに周辺地域の集団が混合して成立した。
cf. Choongwon Jeong, Ke Wang, Shevan Wilkin, William Timothy Treal Taylor, Bryan K. Miller, Jan H. Bemmann, Raphaela Stahl, Chelsea Chiovelli, Florian Knolle, Sodnom Ulziibayar, Dorjpurev Khatanbaatar, Diimaajav Erdenebaatar, Ulambayar Erdenebat, Ayudai Ochir, Ganbold Ankhsanaa, Chuluunkhuu Vanchigdash, Battuga Ochir, Chuluunbat Munkhbayar, Dashzeveg Tumen, Alexey Kovalev, Nikolay Kradin, Bilikto A. Bazarov, Denis A. Miyagashev, Prokopiy B. Konovalov, Elena Zhambaltarova, Alicia Ventresca Miller, Wolfgang Haak, Stephan Schiffels, Johannes Krause, Nicole Boivin, Myagmar Erdene, Jessica Hendy, Christina Warinner "A Dynamic 6,000-Year Genetic History of Eurasia’s Eastern Steppe" Cell [Cell]
アゼルバイジャン: アルツァフ（Artsakh）＝ナゴルノカラバフ（Nagorno Karabakh）にあるティグラナケルト遺跡（Tigranakert）にアゼルバイジャン軍が砲撃し、文化的ジェノサイドの危機と、同遺跡調査のリーダーHamlet Petrosyan氏がFacebookで訴え。[NEWS.am]
▼アルツァフはアルメニアの占領地域で独立宣言した地域。日本では、アゼルバイジャンの一部のナゴルノカラバフとみなされている。
ロシア: シベリアの9500年前のそり犬と、3万年前のオオカミのゲノムなどを比較。現代のそり犬は約9500年前のそり犬と極めて近い。北極圏のそり犬は約1万年前ごろ以降、他の犬種やオオカミと交雑をほとんど起こさず維持していた。[朝日新聞]
cf. Mikkel-Holger S. Sinding, Shyam Gopalakrishnan, Jazmín Ramos-Madrigal, Marc de Manuel, Vladimir V. Pitulko, Lukas Kuderna, Tatiana R. Feuerborn, Laurent A. F. Frantz, Filipe G. Vieira, Jonas Niemann, Jose A. Samaniego Castruita, Christian Carøe, Emilie U. Andersen-Ranberg, Peter D. Jordan, Elena Y. Pavlova, Pavel A. Nikolskiy, Aleksei K. Kasparov, Varvara V. Ivanova, Eske Willerslev, Pontus Skoglund, Merete Fredholm, Sanne Eline Wennerberg, Mads Peter Heide-Jørgensen, Rune Dietz, Christian Sonne, Morten Meldgaard, Love Dalén, Greger Larson, Bent Petersen, Thomas Sicheritz-Pontén, Lutz Bachmann, Øystein Wiig, Tomas Marques-Bonet, Anders J. Hansen, M. Thomas P. Gilbert "Arctic-adapted dogs emerged at the Pleistocene–Holocene transition" Science. Vol. 368, Issue 6498, pp. 1495-1499 [Science]
オーストリア: ドラヘン洞窟（Drachenhöhle）で、後期旧石器時代前半（Early Upper Palaeolithic）の山岳地帯に適応したオルシェヴィアン文化（Olschewian）のロックアート。中央ヨーロッパでは初めての更新世（Pleistocene）のロックアート。
cf. Robert G. Bednarik "First Pleistocene rock art found in central Europe" L'Anthropologie [ScienceDirect]
スイス: シュヴィーツ州（Kanton Schwyz）で、2020年の州内の3つの考古学的発見が発表された。ムオータタール（Muotathal）のビジスタル岩陰（Bisistal）から、初期中石器時代・紀元前8500年のシカの角。2列に並んだ穴の列が7組。インメンゼー（Immensee）で5000年前の杭上家屋（Pfahlbau）の集落。フライエンバッハ（Freienbach）のチューリッヒ湖（Zürichsee；Lake Zurich）で、16世紀中ごろの剣。[20 Minuten]
スイス: バーゼル（Basel）の中世のトイレ遺構で、サルの骨。オスのバーバリーマカク（Macaca sylvanus；Barbary macaque）、5～8歳。15世紀にハインリヒ・フォン・ベルンハイム（Heinrich von Bernheim）のもとでペットとして飼われていたと推定。[swissinfo]
ドイツ: ブランデンブルク州（Land Brandenburg）ウッカーマルク郡（Landkreis Uckermark）ビーティコウ（Bietikow）で出土した新石器時代・5000年前の女性の人骨「ビーティコウの女」（Dame von Bietikow：Lady of Bietikow）は、30～45歳で、穀物を食べたことにより歯が擦り切れている。歯の感染症により死んだ可能性も。[The Local Germany]
スペイン: ブルゴス県（Provincia de Burgos）アタプエルカ（Atapuerca）・シマ・デ・ロス・ウエソス遺跡（Sima de los Huesos；墓の穴）の人骨7600点は、28人分ではなく29人分と判明。うち9人が男性、15人が女性の可能性。ティーンエージャーと若い成人が82.8%を占め、集団を再生産できない。シマ・デ・ロス・ウエソス遺跡の人々は何らかの出来事で命を失った可能性。
スペイン語 La población de la Sima de los Huesos aumenta a 29 individuos
英語 The population at the Sima de los Huesos rises to 29 individuals[Centro Nacional de Investigación sobre la Evolución Humana, CENIEH]
cf. José María Bermúdez de Castro, Ignacio Martínez, Ana Gracia‐Téllez, María Martinón‐Torres, Juan Luis Arsuaga "The Sima de los Huesos Middle Pleistocene hominin site (Burgos, Spain). Estimation of the number of individuals" The Anatomical Record [American Association for Anatomy]
▼シマ・デ・ロス・ウエソス遺跡関連記事→2019年5月16日
ノルウェー: トロンデラーグ地方（Trøndelag）オップダール（Oppdal）のヴァング墳墓遺跡（Vang）にあるヴァイキングの墓17基に深い穴が掘りこまれる盗掘被害。[Science Norway]
UK（イングランド）: グリニッジ（Greenwich）のグリニッジ宮殿（Greenwich Palace）跡で、5.5フィートの地下に八角形の建物2棟。地中レーダー（ground-penetrating radar）により発見。馬上槍試合ジョスト（Jousting）の試合場（tiltyard；Jousting yard）の観覧のための塔と推定。イングランド王ヘンリー8世が1536年に馬上槍試合で深刻な事故に遭い、性格が変わってしまったとされる場所。
Jousting yard where Henry VIII nearly died just discovered 5 feet under[LiveScience]
UK（スコットランド）: サザランド郡（Sutherland）エリボール・エステート（Eriboll Estate）で、岩の下から鉄器時代・2500年前の人骨。[The Northern Times]
▼ハイランド・カウンシル・エリア（Highland Council area）

2020年11月5日（木）

千葉県: 木更津市・金鈴塚古墳（きんれいづかこふん）で出土した装飾付大刀19点のうち5点は朝鮮半島の百済からもたらされた舶載品。古墳時代後期・6世紀末の前方後円墳。木更津市発表。[毎日新聞]
▼金鈴塚古墳関連記事→2012年11月2日
新潟県: 五泉市で、旧陸軍の「秘匿飛行場」の滑走路や塹壕跡とみられる戦争遺跡。新潟大学人文学部の調査。[新潟日報]
神戸市: 西区・中村群集墳（なかむらぐんしゅうふん）、弥生時代後期から古墳時代前期、後期の墓、5基。弥生時代から墓地として利用されていたことが明らかに。公益財団法人兵庫県まちづくり技術センターの調査。兵庫県教育委員会11/5発表。11/8現地説明会。
中村群集墳（神戸市西区平野町）の発掘調査成果と現地説明会について
 中村群集墳（神戸市西区平野町）の発掘調査成果と現地説明会について（pdf）[兵庫県教育委員会]
奈良県: 橿原市・藤原宮跡で、大極殿院の回廊に建てられた柱の間隔は、北側と南側で異なる。回廊の南北で設計や造営過程が異なっていた可能性。奈良文化財研究所発表。[共同通信]
徳島県: 三好郡東みよし町・加茂東原遺跡で、弥生時代終末・2世紀末と古墳時代後期・6世紀末～7世紀初頭の竪穴住居のほか、柱穴や土杭などの遺構・遺物。公益財団法人徳島県埋蔵文化財センターの調査。11/14現地説明会。
東みよし町加茂東原遺跡現地説明会の開催について[徳島県立埋蔵文化財総合センター]
▼加茂東原遺跡関連記事→2019年11月12日
韓国: 釜山市海雲台の萇山で李山標石を新たに79基発見。李山標石は、日帝時代に朝鮮総督府の林野調査事業で土地を奪われないようにするため、朝鮮王室の所有地であることを明示したもの。[聯合ニュース]
韓国: 慶尚南道昌原市・内洞貝塚の一帯で、昌原市が1984年以来養苗場として木を植え、また道路工事によって、文化財を毀損していた。[慶南道民日報]
中国: 中国全土の128遺跡で出土した人骨2448体の炭素と窒素の同位体比により、食生活を復元。紀元前6000年～前5000年（cal BC）にすでに、北はキビ、南はコメなどC3植物という明確な差が存在し、紀元前5000年～前2000年（cal BC）に強化。紀元前2000年（csl BC）以降、南西アジアからコムギやオオムギを導入されて東西の差が生じ、内陸ではコムギ、オオムギが普及。
cf. Xinyi Liu, Rachel E. B. Reid "The prehistoric roots of Chinese cuisines: Mapping staple food systems of China, 6000 BC–220 AD" PLoS ONE 15(11): e0240930. [PLOS ONE]
中国: 新疆ウィグル自治区で、青銅器時代（Bronze Age）の牧畜民の季節的な移動経路を復元。衛星画像や民族調査を利用。
Bronze Age travel routes revealed using pioneering research method[The University of Sydney]
cf. Peter Jia, Gino Caspari, Alison Betts, Bahaa Mohamadi, Timo Balz, Dexin Cong, Hui Shen, Qi Meng "Seasonal movements of Bronze Age transhumant pastoralists in western Xinjiang" PLoS ONE 15(11): e0240739 [PLOS ONE]
イタリア: アングイッラーラ・サバーツィア（Anguillara Sabazia）のラ・マルモッタ遺跡（La Marmotta）で出土した、初期新石器時代（early Neolithic）・紀元前5700年～前5300年の保存の良い木材について、鎌に用いられた樹種を同定。
cf. L. Caruso Fermé, M. Mineo, M. Ntinou, G. Remolins, N. Mazzucco, J. F. Gibaja "Woodworking technology during the early Neolithic: First results at the site of La MARMOTTA (Italy)" Quaternary International [ScienceDirect]
スイス: バーゼル（Basel）で中世のトイレから、サルの一種バーバリーマカク（Macaca sylvanus；Berberaffen）の骨。15世紀にペットとして飼われていた。5～8歳くらい。バーゼル公会議（Konzil von Basel）で重要な役割を果たしたハインリヒ・フォン・ベルンハイム（Heinrich von Bernheim）が飼っていたと推定。[Blick]
フランス: ヴァンデ県（Vendée）ル・ゲ＝ド＝ヴルイール（Le Gué-de-Velluire）で出土したとされる先史時代の剣を分析。柄の形態が独特で、鋲が錆びておらず、鉄の刃部に銅の柄がついた特異な遺物。柄の握りの鋲は銅製、鐔の鋲は真鍮製で、茎は柄に合わせて加工。先史時代の本物の遺物二つを組み合わせた偽造品。19～20世紀に収集されたロシュブリューヌ・コレクション（Rochebrune collection）の一つ。
cf. Léonard Dumont, Virginie Dupuy, Théophane Nicolas, Charlène Pelé-Meziani, Guy De Mulder "The protohistoric sword from Le Gué-de-Velluire (Vendée, France): A pasticcio’s history unveiled by archaeometrical research" Journal of Archaeological Science: Reports. Volume 34, Part A [ScienceDirect]
ペルー: ウィラマヤ・パティハ遺跡（Wilamaya Patjxa）の9000年前の埋葬WMP6は石製の槍先や動物解体の道具などを伴っているが、被葬者は成人女性と判明。初期の狩猟採集民において、女性も大型獣の狩猟に従事していた。従来、民族誌的な情報から女性が採集、男性が狩猟という性的分業が想定されていたが、再考を迫る発見。
Woman the hunter: Ancient Andean remains challenge old ideas of who speared big game[Science]
cf. Randall Haas, James Watson, Tammy Buonasera, John Southon, Jennifer C. Chen, Sarah Noe, Kevin Smith, Carlos Viviano Llave, Jelmer Eerkens and Glendon Parker "Female hunters of the early Americas" Science Advances. Vol. 6, no. 45, eabd0310 [Science Advances]

2020年11月4日（水）

岩手県: 奥州市・明神下遺跡で、大規模な土坑。人骨の頭部に鉄鍋をかぶせた墓。永楽通宝が出土しており、中世～江戸時代の墓と推定。公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターの調査。
明神下遺跡[公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センター]
▼明神下遺跡関連記事→2020年9月7日
山梨県: 北杜市・中山工区内遺跡で、平安時代の竪穴住居跡や炭窯。[山梨日日新聞]
山梨県: 韮崎市・新府城跡（しんぷじょうあと）で、本丸北側を発掘。韮崎市教育委員会の調査。11/13-14現地説明会（韮崎市民俗資料館に電話で申し込み）。
新府城跡発掘調査見学会を開催します[韮崎市]
▼新府城跡関連記事→2009年2月6日
滋賀県: 安土城天主の復元について滋賀県の三日月知事は年内に結論を出す方向性。小和田哲男・静岡大学名誉教授「まがいものを建てるのではなく、デジタルであれば今後の調査で明らかになってくるところも修正が可能」。[びわ湖放送]
韓国: 仁川市江華郡江華邑・江華中城の西城壁で、城門跡を発見。竜頭形の瓦や装飾釘など出土。高麗時代の都城遺跡。モンゴルの攻撃に対して高麗が首都を江華島に移した後、1250年に建設。国立江華文化財研究所の調査。[聯合ニュース]
▼江華中城関連記事→2019年10月23日
韓国: 京畿道坡州市・徳津山城で、統一新羅時代に築造されたと推定される外城門跡と城壁。中部考古学研究所の調査。徳津山城は臨津江のほとりの戦略的な要衝地にあり、内城と外城からなる。内城は高句麗が築き、統一新羅時代に大規模に補修、朝鮮時代まで城郭として機能した。従来、外城は朝鮮時代の光海君の時に築かれたと考えられてきた。[聯合ニュース]
▼徳津山城関連記事→2016年11月1日
韓国: 慶尚南道陜川郡・巣悟里古墳群の1号墳で、加耶時代の独特な多槨式の墳墓構造。直径11m、高さ2.5mの墳丘に、8基の石槨墓を順次造営。[聯合ニュース]
イラン: ゴレスターン州（Golestān）ゴルガーン（Gorgān）で、セルジューク朝（Seljuk）・1037～1194年の遺物。皿、燭台、コール壺、香炉など。[Tehran Times]
トルコ: ビレジク県（Bilecik）バフチェリエヴレル（Bahçelievler）で、新石器時代・8500年前の人骨。14～15歳の男性。西アナトリア最古の農耕民のもの。[Hürriyet Daily News]
ギリシャ: クレタ島（Κρήτη；Crète；Crete）ヴラハシ村（Βραχάσι；Vrachasi）のアナヴロホス（Ανάβλοχος；Anavlochos）で、「暗黒時代（Γεωμετρική εποχή；âges obscurs）」とされる時期の直径15mの墳丘墓（tumulus monumental）。先行するミノス文明は、紀元前1450年ごろに崩壊し、（Κνωσσός；Knossos；Cnossos）も最大の宮殿を除いて焼失。前1350年から前1200年の間に、クレタ島のクノッソスだけでなく、本土の宮殿も崩壊。文字記録のない時代が5世紀続いた。[Le Monde]
ブルガリア: ブルガス州（Област Бургас；Oblast Burgas）カメノ（Община Камено；Kameno）・ルソカストロ砦（Русокастро；Rusocastro）にある中世・13～14世紀の六角形の天守（tower keep）のうち、一つの階にはウシやシカの角を加工する工房が設けられていた。ルソカストロ砦は1332年のルソカストロの戦い（Battle of Rusocastro）で著名。第二次ブルガリア帝国のイヴァン・アレクサンダル・アセン（Иван Александър Асен；Ivan Aleksandăr；Ivan Alexander；在位1331～1371年）がビザンティン帝国のアンドロニコス3世パレオロゴス（Ανδρόνικος Γ' Παλαιολόγος；Andronikos III Palaiologos；在位1328～1341年）を破った。
Massive Hexagonal Tower Keep, Horn Workshop Excavated in Medieval Fortress Rusocastro in Southeast Bulgaria[Archaeology in Bulgaria]
チェコ: 北モラヴィア（Northern Moravia）のイェセニーク（Jeseník）で、青銅器時代・骨壺墓地文化（Kultury popelnicových polí；Urnfield culture）・紀元前1300年の銅剣、銅斧。キノコ取りをしていた人が発見。本格的な発掘調査へ。[Radio Praha]
UK（イングランド）: ロンドン（London）のバーキング地区（Barking）で、中世初期の建物2棟。再利用されたローマ時代の屋根瓦が出土。12世紀の修道院のものとみられる白亜の壁。さらに、中世初期の北欧由来とみられる骨製のスプーンも出土。[The Construction index]
UK（イングランド）: ドーセット州（the county of Dorset）ドーチェスター（Dorchester）にあるマウント・プレザント遺跡（Mount Pleasant）は、新石器時代末・紀元前2500年ごろに35年間かけて建造された。従来は数世紀かかっていると考えられてきた。土塁と堀で囲まれた巨大な円形。[The Guardian]
cf. Susan Greaney, Zoë Hazell, Alistair Barclay, Christopher Bronk Ramsey, Elaine Dunbar, Irka Hajdas, Paula Reimer, Joshua Pollard, Niall Sharples and Peter Marshall "Tempo of a Mega-henge: A New Chronology for Mount Pleasant, Dorchester, Dorset" Proceedings of the Prehistoric Society [Cambridge Core]

2020年11月3日（火）

京都市: 平安京左京六条四坊八町跡で、五条大路の南沿いに設けられた側溝跡。平安遷都当初と平安後期、鎌倉前期に造り替え。10～12世紀に平安京の大路が狭くなる中、五条大路は鎌倉幕府が14世紀に滅びるまで造成当時の道幅を保つ。五条大路は朝廷などを監視する機関があった「六波羅」に通じる道で、当時の幕府が権力を誇示していたことを裏付ける。[産経新聞]
岡山市: 北区・造山古墳（つくりやまこふん）で、墳丘1・2段目のテラス部から埴輪列を確認。岡山市教育委員会の調査。[山陽新聞]
長崎県: 長崎市・県庁跡地の遺構調査や活用について要望していた日本考古学協会に対し、長崎県は「出島など周辺施設と連携しながら、歴史を生かした活用策を検討する」と回答。長崎県11/2発表。[長崎新聞]
長崎県庁跡地に所在する遺跡の保存活用に関する要望に対する回答について[長崎県]
韓国: 忠清南道礼山郡・伽倻寺址（第6次調査）で、高麗時代前期～朝鮮時代中期の建物跡など。高麗時代前期と推定される、組み立て式基壇の建物跡2棟を含む。高麗時代の「加良岬寺」銘平瓦や、朝鮮時代・1611年の「萬暦三十九年辛亥□□□」銘軒平瓦などのさまざまな瓦が出土。[NEWSIS]
韓国: 慶尚北道慶州市仏国洞の昔脱解祠堂跡で、祭祀用の鉄馬と土馬。高麗時代に重建された建物跡や統一新羅時代の軒平瓦、平瓦、高麗時代の銘文瓦、青磁、粉青沙器。[聯合ニュース]
韓国: 文化財庁は埋蔵文化財発掘調査の過程の透明性を確保し、調査の品質を高めるため、調査機関の管理監督機能を強化。11/27施行。[聯合ニュース]
▼文化財庁は2024年5月17日から国家遺産庁
中国: 安陽（Anyang）で出土した青銅器について、化学分析により、青銅と生産の流通の管理について研究。婦好のような高位のエリートの所有する青銅祭器は、純度の高い銅を用いて合金をコントロールした。一方、低位のエリートは、鋳直された純度の低い銅を用いた青銅を所有した。安陽は紀元前2千年紀にユーラシアで最大規模の金属消費地だった。
cf. Ruiliang Liu, A. Mark Pollard, Qin Cao, Cheng Liu, Victoria Sainsbury, Philly Howarth, Peter Bray, Limin Huan, Bohao Yao, Yuting Fu & Jigen Tang "Social hierarchy and the choice of metal recycling at Anyang, the last capital of Bronze Age Shang China" Scientific Reports. volume 10, Article number: 18794 (2020) [Scientific Reports]
中国: 新疆ウイグル自治区の石人子溝遺跡（Shirenzigou）と西溝遺跡（Xigou）で出土した紀元前350年ごろのウマ8頭の骨を分析。すべての試料に、騎馬によって生じた骨学的な変化。紀元前4世紀にはこの地域の牧畜民がウマに騎乗し、騎射もおこなったと推定。中国での騎馬の最古の証拠。この地域を通じてユーラシア内陸の騎馬技術が中国にもたららされた。
cf. Yue Li, Chengrui Zhang, William Timothy Treal Taylor, Liang Chen, Rowan K. Flad, Nicole Boivin, Huan Liu, Yue You, Jianxin Wang, Meng Ren, Tongyuan Xi, Yifu Han, Rui Wen, and Jian Ma "Early evidence for mounted horseback riding in northwest China" Proceedings of the National Academy of Sciences. first published November 2, 2020 [PNAS]
インドネシア: アロール島（Alor Island）のマクパン洞窟遺跡（Gua Makpan；Makpan Cave）で、8000年前の子供の埋葬。4～8歳程度。頬と額に黄土を塗り、頭の下に黄土を塗った石を置く。腕と脚は埋葬前に取り除く。長い骨を除去するのは同時期のジャワ、ボルネオ、フロレスにも見られるが、小児墓で行われている例は初めて。従来、子供の墓は3000年前以降のものが研究されており、それより古いものはよくわかっていなかった。
Rare 8,000 year old child burial reveals secrets of the dead[The Australian National University]
cf. Sofia C. Samper Carro, Tahlia J. Stewart, Mahirta, Rachel Wood, Sue O'Connor "Burial practices in the early mid-Holocene of the Wallacean Islands: A sub-adult burial from Gua Makpan, Alor Island, Indonesia" Quaternary International [ScienceDirect]
ブルガリア: ルセ州（Русенска област；Rucenska Oblast）ドゥヴェ・モギリ（Две могили；Dve Mogili）にあるブゾベツ遺跡（Бъзовец；Bazovets）で、初期銅石器時代（Early Chalcolithic）・紀元前4800年～前4600年の土器窯2基と土器工房。フリント製品、獣骨、角、土器、土偶、動物像など出土。
7,000-year-old kilns from prehistoric ceramics workshop dug up at Bazovets settlement mound in northeast Bulgaria[Archaeology in Bulgaria]
イタリア: ブロイオン岩陰遺跡（Riparo del Broion；Broion Cave）、フマーネ洞窟（Grotta di Fumane；Fumane Cave）、ナダレ洞窟（Grotta de Nadale；Nadale Cave）で出土した70000年前～45000年前のネアンデルタール人の子供3人の乳歯を分析。成長のペースや離乳時期を推定。5～6か月で固形物を食べさせるようになる。ホモサピエンスとの違いは小さい。離乳は脳を成長させるための高いエネルギーを要する時期に関わり、ホモサピエンス同士の間では文化を越えてほぼ同時期の生後6か月ごろ。
Neandertal come noi: i loro neonati avevano gli stessi tempi di svezzamento dell’Homo sapiens[Università di Bologna；University of Bologna]
cf. Alessia Nava, Federico Lugli, Matteo Romandini, Federica Badino, David Evans, Angela H. Helbling, Gregorio Oxilia, Simona Arrighi, Eugenio Bortolini, Davide Delpiano, Rossella Duches, Carla Figus, Alessandra Livraghi, Giulia Marciani, Sara Silvestrini, Anna Cipriani, Tommaso Giovanardi, Roberta Pini, Claudio Tuniz, Federico Bernardini, Irene Dori, Alfredo Coppa, Emanuela Cristiani, Christopher Dean, Luca Bondioli, Marco Peresani, Wolfgang Müller, and Stefano Benazzi "Early life of Neanderthals" Proceedings of the National Academy of Sciences. first published November 2, 2020 [PNAS]
▼フマーネ洞窟関連記事→2016年1月12日
デンマーク: デンマークのヴァイキング時代の革製品を質量分析計を用いて同定。すべては家畜化された動物で、ヤギの革は高位の女性の靴などに用いられた。また、先史時代のデンマークとしては初めて、ウマの革が確認された。
cf. Luise Ørsted Brandt, Ulla Mannering "Taxonomic identification of Danish Viking age shoes and skin objects by ZooMS (Zooarchaeology by mass spectrometry)" Journal of Proteomics [ScienceDirect]
UK（イングランド）: シュルーズベリー（Shrewsbury）にあるシュルーズベリー城（Shrewsbury Castle）で、西城壁の高さの半分は中世以降のものと判明。トーマス・テルフォード（Thomas Telford）による1786～1790年の修復によるとみられる。中世の埋め立て層を確認し、13世紀に城が大きく拡張されていたことも判明。ヴィクトリア朝（Victorian）・19世紀に建てられた温室（greenhouse）の基礎も確認。
Surprising finds at Shrewsbury Castle [Current Archaeology]
▼シュロップシャー（Shropshire）
USA: ルイジアナ州（State of Louisiana）ニューアイベリア（New Iberia）で、最初の入植者ジョゼフ・ブルッサール（Joseph Broussard）の農場を確認。ブルッサールはアカディア人（Acadians）を引き連れて1765年に南ルイジアナに移住した。[The Daily Iberian]

2020年11月2日（月）

鳥取県: 倉吉市・中尾遺跡（第3次調査）で、弥生時代の焼失住居から、朝鮮半島や中国からの貴重な鉄器が出土。弥生時代から古墳時代の竪穴建物6基と古墳13基を確認。倉吉市教育委員会の調査。11/14現地説明会（事前申し込み）。
弥生時代の貴重な鉄器が出土　中尾遺跡第３次発掘調査の現地説明会を開催します[倉吉市教育委員会]
倉吉市・中尾遺跡で、弥生時代中期・2100年前の竪穴住居跡から国内最大級の鉄矛。板状鉄斧、鋳造鉄斧。板状鉄斧は床面に突き刺さっていた。住居祭祀に伴う祭祀の可能性。鉄矛は韓国の茶戸里遺蹟で出土した鉄矛に似る。板状鉄斧は朝鮮半島、鋳造鉄斧は中国で作られたとみられる。倉吉市教育委員会11/2発表。[共同通信]
▼中尾遺跡関連記事→2016年6月9日
ロシア: バイカル湖（Озеро Байкал；Lake Baikal）のオルホン島（Ольхон；Ol'khon）と本土で出土した、後期新石器時代（Late Neolithic）・セロフ文化（Серовская культура；Serovo）と初期青銅器時代（Early Bronze Age）・グラズコフ文化（Глазковская культура；Glazkovo）の人骨134体について、炭素δ13Cと窒素δ15Nの安定同位体分析（stable isotope analysis）。セロフ文化では、島と本土の食生活はやや異なり、島はアザラシ（seal）の消費量が多く、本土は浅瀬の魚の消費量が多かった。グラズコフ文化の島ではセロフ文化の島と同様の食生活をしており、アザラシ猟の専業集団の存在を示唆。4100年前ごろ小海地域（Малое Море；Little Sea）にグラズコフ文化の埋葬伝統が登場すると、本土ではδ13Cやδ15Nが低くなり、食生活は陸上の草食動物が多い。
cf. Andrea L. Waters Rist, Angela R. Lieverse, Alexei G. Novikov, Olga I. Goriunova, Artur A. Kharinskii, Hugh G. McKenzie "Spatial and temporal differences in Late Neolithic Serovo to Early Bronze Age Glazkovo forager diet in Lake Baikal's Little Sea Microregion, Siberia" Archaeological Research in Asia. Volume 25 [ScienceDirect]
ギリシャ: クレタ島（Κρήτη；Crete）ハニア（Χανιά；Khania）で出土した、後期青銅器時代（Late Bronze Age）LMIB期～IIIB期・紀元前1525～前1200年の調理用土器39点を、岩石学的分析（Petrographic analysis）により産地推定。地元での生産技術の伝統が継続していたことが確認されたが、アイギナ島（Αίγινα；Aegina）やキティラ島（Κύθηρα；Kythera）からも調理用土器を輸入していた。しかし、エーゲ海地域に広く分布するアイギナ島の三足土器（Aeginetan tripod cooking pot）は、クレタ島には認められなかった。
cf. Stavroula Fouriki "Petrographic analysis of cooking ware from Late Bronze Age Khania (LMIB-IIIB), Crete, ca. 1525–1200 BCE: Preliminary results on technology and provenance" Journal of Archaeological Science: Reports. Volume 34, Part A [ScienceDirect]
ギリシャ: キトノス島（Κύθνος；Kythnos）沖の小島ヴリオカストラキ島（Βρυοκαστράκι：Vryokastraki）で、幾何学様式土器やアルカイック土器、土偶、青銅製奉納品出土。女神に奉納したものと推定。また、初期ビザンティン時代の要塞は、起源がアルカイック時代にさかのぼる可能性。三廊式の初期ビザンティン時代のバシリカ近くでは、イオニア式の円柱。
[archaeology & arts]
▼ヴリオカストラキ島関連記事→2019年9月9日
クロアチア: フヴァル島（Hvar）近くのパクリンスキ諸島（Paklinskiの海底から、古代後期・3～5世紀のアンフォラやワイン容器。[Total Croatia News]
水中考古学: フナクイムシ（Teredinidae；shipworm）によって木材に開けられた孔の堆積を、X線撮影（radiograph）で認識されたフナクイムシの殻の大きさから計算する方法。フナクイムシは海洋環境で木材の生物浸食（bioerosion）の原因となるが、X線撮影（radiograph）による推定では孔が重なり合って2次元に投影されるため、誤差が大きかった。
cf. Irene Guarneri, Marco Sigovini, Davide Tagliapietra "A simple method to calculate the volume of shipworm tunnels from radiographs" International Biodeterioration & Biodegradation. Volume 156 [ScienceDirect]

2020年11月1日（日）

長野県: 下諏訪町・ふじ塚遺跡内のふじ塚古墳で、石に経が書かれた大量の「礫石経」が発掘され、古墳ではなく経塚だったことが判明。長野県埋蔵文化財センターの調査。10/31現地説明会。[長野日報]
長崎県: 長崎市・カトリック浦上教会信徒会館の原爆遺物展示室が11/1リニューアル。被爆時に旧浦上天主堂に掲げられていた十字架上のキリストを再現。石像の天使像を初公開。原爆のむごさを伝え、平和を発信する場所に。[長崎新聞]
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ: ラヴノ自治体（Ravno）ザヴァラ村（Zavala）のチュルクヴィナ遺跡（Crkvina）で9世紀のロマネスク様式（Romanesque）の聖ペテロ教会（Church of St. Peter）で用いられていたレリーフ。石造りの祭壇の一部。ボスニアヘルツェゴビナでロマネスク様式の教会は珍しい。[SarajevoTimes]
▼ヘルツェゴビナ＝ネレトヴァ県（Hercegovačko-neretvanski kanton）
ドイツ: ラインラント＝プファルツ州（Land Rheinland-Pfalz）マインツ（Mainz）の港で、ローマ時代の彫刻。[Archaeology News Network]

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