考古学のおやつ/NEWSLINK

2021年7月20日（火）

福島県: 福島市・宮代館跡（みやしろたてあと）で、16世紀末～17世紀初頭とみられる建物の礎石。宮代館が戦国時代にも機能していたと推定。手づくねかわらけや鎌倉時代の陶磁器、輸入磁器の破片を確認。鎌倉時代に有力な関東武士が宮代館を拠点にした。福島市振興公社文化財調査室の調査。7/22現地説明会。[福島民友新聞]
長野県: 長野市・石川条里遺跡（いしかわじょうりいせき）で、南北朝時代から室町時代初期とみられるかぶとの鍬形。長野県埋蔵文化財センターの調査。[信濃毎日新聞]
▼石川条里遺跡関連記事→2021年5月7日
三重県: 名張市・薦生遺跡（こもおいせき）で、古代・中世の掘立柱建物など。奈良時代とみられる掘立柱建物のうち1棟は官衙に用いられる「長舎」とみられる。中世の掘立柱建物は「薦生庄」の実態を知る上で貴重な成果。三重県埋蔵文化財センターの調査。7/31現地説明会。
[三重県]
三重県: いなべ市・下平大野A遺跡（しもひらおおのAいせき：第2次調査）で塚墓1基。溝で一辺約4ｍの方形に区画し、中央部に直径約70cm、深さ約1mの穴。周囲の溝から室町時代の陶器片出土。三重県埋蔵文化財センターの調査。7/22現地説明会。
▶塚墓発見！下平大野Ａ遺跡で現地説明会を開催します[三重県]
韓国: 京畿道広州市南漢山城面山城里にある、南漢山城の国清寺跡のうち、月暎楼の基壇下で、部材の木材が複数出土。南漢山城は朝鮮王朝の仁祖2年（1624）に築造され、山城を管理・守衛するため10か所の僧営寺刹が建てられ、僧軍が駐屯した。国清寺は最も古い僧営寺刹のひとつで、1624年に建立。1905年に日本により爆破。[京畿新聞]
イタリア: サルデーニャ州（Sardegna；Sardinia）サッサリ県（Provincia di Sassari）ポルト・チェルボ（Porto Cervo）で、ローマ時代の沈没船に積まれていた大理石ブロックを分析。ほぼ確実にアプアーネ山脈（Alpi Apuane；Apuan Alps）産の大理石。沈没船がローマ都市ルナ（Luna）から来たことを示す。出土土器から見て2世紀末～3世紀初め。大理石ブロックの大きさからみて、公共建築のための資材。積み荷から推定した船の全長は33m。
cf. Carlo Beltrame, Fabrizio Antonelli, Francesco Carrera & Maria Francesca Pipere "A Roman Marble Cargo from a Shipwreck at Porto Cervo, Sassari, Sardinia, Italy" International Journal of Nautical Archaeology [Taylor & Francis Online]
ポーランド: ルブシュ県（Województwo lubuskie；Lubusz）クロスノ・オドジャンスキエ（Krosno Odrzańskie）のオードラ川（Odra；Oder；オーデル川）の堤で、初期中世の騎士が用いた鎖帷子（chain mail）出土。[Poland In]
UK（スコットランド）: アウター・ヘブリディーズ諸島（Outer Hebrides）のベイルズヘア（Baile Sear）にある鉄器時代・紀元前25年～紀元後380年の集落が、海に沈む危惧。[The Scotsman]

2021年7月19日（月）

茨城県: つくばみらい市・鎌田遺跡（かまたいせき）で、縄文時代や奈良・平安時代の竪穴住居跡や掘立柱建物跡など。公益財団法人茨城県教育財団の調査。8/11現地説明会。
令和３年度発掘調査現地説明会のお知らせ鎌田遺跡[発掘情報いばらき]
▼鎌田遺跡関連記事→1999年8月28日
奈良文化財研究所: 奈良文化財研究所が、全国の文化財を地図上で一覧できる無料のウェブサービス「文化財総覧WebGIS」の運用を7/20開始。[朝日新聞]
韓国: 慶尚南道梁山で、梁山邑城の基礎を、長さ14.36m、幅2.35～2.7m、高さ0.64mにわたり、発掘調査で初確認。韓国文化財財団の調査。梁山邑城は朝鮮王朝の成宗23年（1492）に築造。[聯合ニュース]
韓国: 慶尚南道咸安郡咸安面康命里の康命里寺跡は、統一新羅時代に創建、高麗時代まで重修が繰り返された寺院。高麗時代の高さ8cmの小型の金銅仏出土。また、「義谷寺」「重熙十五年」の銘文瓦。「義谷寺」は史料に登場せず。「重熙十五年」は1046年を指す。仏教文化財研究所の調査。[聯合ニュース]
▼▽「重熙」は遼の年号。
インド: テランガーナ州（Telangana State）シディペット県（Siddipet）ドゥッデラ村（Duddeda）で、カーカティーヤ様式（Kakatiya）・13～14世紀の彫刻5体。[Deccan Chronicle]
イラン: ガズヴィーン（Qazvin）で、サファヴィー朝（Safavid）の煉瓦造りの排水路。[Tehran Times]
ドイツ: ノルトライン＝ヴェストファーレン州（Land Nordrhein-Westfalen）ボルケン郡（Kreis Borken）で、13～15世紀の木製矢板50枚。[Borkener Zeitung]
エジプト: アレクサンドリア（Alexandria）沖のアブキール湾（Abu Qir Bay）に沈む海底都市ヘラクレイオン（Heracleion）で、プトレマイオス朝の戦艦。戦艦は、アメン神殿（Temple of Amun）沿いの運河にあるドックに停泊中、紀元前2世紀の地震による神殿の崩壊で沈んだ。運河の入り口近くでは紀元前4世紀初めのギリシャ人の葬送空間。ギリシャ商人がヘラクレイオンに住み、エジプトの入り口を制御していたことを示す。L’Institut Européen d’Archéologie Sous-Marine (IEASM)の調査。[Egypt Today]

2021年7月18日（日）

奈良県: 奈良市・赤田横穴墓群（あこだおうけつぼぐん）で、新たに7基の横穴墓を確認。6世紀後半～7世紀半ばの横穴墓群で、土師氏一族の墓と考えられている。奈良市教育委員会7/17発表。[毎日新聞]
▼赤田横穴墓群関連記事→2015年6月29日
ギリシャ: アルゴリス（Ἀργολίς：Argolis）のレルナ（Λέρνη；Lerna）や、クレタ島（Κρήτη；Crete）のファイストス（Φαιστός；Phaistos）の、青銅器時代の行政的な中心地で出土した土製印章に残る繊維の圧痕から、繊維を復元。ファイストスでは、より多くの素材と技法がみられる。
Unknown types of ancient Greek textiles identified[Nauka w Polsce]
UK（イングランド）: デヴォン州（Devon）ダートムーア国立公園（Dartmoor National Park）内のラスリー（Lustleigh）にあるケリー鉱山（Kelly Mine）で、廃棄物を分析。塊鉄炉（bloomery）による鉄滓（slag）と判明。ケリー鉱山は従来、18世紀から操業が始まったとみられていたが、1000年以上さかのぼる可能性。[DevonLive]
UK（イングランド）: ノース・ヨークシャー州（North Yorkshire）キャッタリック（Catterick）で、ローマ帝政期の巨大な石彫りの男根。[Times Now]
▼キャッタリック関連記事→2021年7月17日
UK（イングランド）: ハル（Hull）の三位一体墓地（Trinity Burial Ground）で発掘された墳墓で、被葬者の脚の間に青いガラス瓶。「Hull Infirmary」（ハル診療所）の銘。褐色の液体を納める。被葬者は60代の女性。三位一体墓地は1783～1861年に埋葬が行われた。[Hull Live]
▼イースト・ライディング・オブ・ヨークシャー（East Riding of Yorkshire）
▼三位一体墓地関連記事→2021年1月29日

2021年7月17日（土）

福井県: 越前市の伝統産業「越前和紙」の工房で長年使われていた手すきの道具がポーランド、クラクフの博物館に寄贈。[読売新聞]
インドネシア: 東ジャワ州（Jawa Timur；East Java）モジョケルト（Mojokerto）のクミティル遺跡（Kumitir）で人骨3体。マジャパヒト王国（Majapahit Empire）時代の遺跡であるが、人骨が同時代のものかは不明。[Tempo]
▼クミティル関連記事→2019年11月17日
オマーン: ドファール特別行政区（Dhofar Governorate）で出土したネフライト製（nephrite）の斧を分析し、イエメンで産出されたと推定。新石器時代・紀元前6～前5千年紀に黒曜石と同様のルートで流通。オマーン南部がこの時期に長距離交換のネットワークに加わっていた。
cf. Mohammed Al Kindi, Vincent Charpentier, Maria Pia Maiorano, Maya Musa, Alexia Pavan, Alan Heward, Jérémie Vosges, Grégor Marchand, Martin Pickford "Neolithic long-distance exchanges in Southern Arabia: A supposed road for the ‘Jade’ axes" Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 39, October 2021, 103116 [ScienceDirect]
ロシア: トゥヴァ共和国（Республика Тыва；Tuva Republic）のトゥンヌグ1遺跡（Туннуг-1；Tunnug 1）の初期鉄器時代のクルガン近くで発掘されたコケル文化（Kokel culture）の埋葬遺跡を報告。コケル文化は匈奴文化とは明らかに異なり、匈奴帝国の終焉から突厥第一可汗国（first Turkic Khaganate）の成立までの間に登場した地域固有の文化。
cf. Timur Sadykov, Gino Caspari, Jegor Blochin, Sandra Lösch, Yulija Kapinus, Marco Milella "The Kokel of Southern Siberia: New data on a post-Xiongnu material culture" PLoS ONE 16(7): e0254545. [PLOS ONE]
▼トゥンヌグ1遺跡関連記事→2020年9月17日
イタリア: ローマのコルソ通り（Via del Corso）近くのアウグストゥス廟（Mausoleum Augusti；mausoleum of Emperor Augustus）で、古代ローマ中心部の境界ポメリウム（pomerium）を区切る巨大な石材。銘文により、クラウディウス帝（Claudius）の治世・49年に建立とわかる。[The Associated Press]
オーストリア: ニーダーエスターライヒ州（Niederösterreich）南東部のプリクグリッツ・ガスタイル遺跡（Prigglitz-Gasteil）の小規模な銅採掘遺跡とその周辺15kmで出土した、後期青銅器時代・紀元前1350年～前800年の銅鉱石、銅塊、銅遺物を分析。プリクグリッツ・ガスタイル遺跡の銅合金製品は、地元の銅素材とスロバキア産の輸入素材を混合して製作。
cf. Marianne Mödlinger, Peter Trebsche, Benjamin Sabatini (2021) Melting, smelting, and recycling: A regional study around the Late Bronze Age mining site of Prigglitz-Gasteil, Lower Austria. PLoS ONE, 16(7): e0254096. [PLOS ONE]
▼プリクグリッツ・ガスタイル遺跡関連記事→2021年3月25日
ドイツ: アウクスブルク（Augsburg）のケッセルマルクト（Kesselmarkt）で、中世の墓と人骨。[Augsburger Allgemeine]
スペイン: ムルシア州（Comunidad Autónoma de la Región de Murcia）ムラ（Mula）のビジャリコス（Los Villaricos）にある5世紀の教会近くで、西ゴート王国（Visigoths）・6～7世紀の石棺。[The Olive Press]
スペイン: スペインの6遺跡から出土した9～11世紀の中国陶磁は、ヨーロッパ最古の中国陶磁で、主に地域エリートの居所から出土。ヨーロッパのほかの地域で中国陶磁が出土するのは13世紀以降。インド洋での貿易の変化や、地中海のイスラーム世界からのハイレベルな贈答を反映。
cf. Alejandra Gutiérrez, Christopher Gerrard, Ran Zhang and Wang Guangyao "The earliest Chinese ceramics in Europe?" Antiquity, First View, pp. 1 - 18 [Cambridge Core]
UK（イングランド）: ノース・ヨークシャー州（North Yorkshire）キャッタリック（Catterick）の、古代ローマ都市カタラクトニウム（Cataractonium）で、井戸からローマ時代・24～128年のピスタチオ（pistachio）。英国最古。ほかに、男根形の石製品や、香炉、土器も出土。[BBC]
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Archaeologists cracking Roman history along Dere Street, one of Britain’s oldest roads[GOV.UK]
▼カタラクトニウム関連記事→2020年1月3日
エジプト: ファユーム（Fayum）のKom W遺跡で出土した新石器時代の石斧を研究。製作、使用、修復、再加工について検討した結果、当時はKom W の周囲に樹木が茂り、遺跡の住人には木を伐採、加工する必要があったと推定。
//cf. Noriyuki Shirai "Can One See the Wood for the Trees in Prehistoric Egypt? A Study of Fayum Neolithic Axes" Lithic Technology [Taylor & Francis Online]
USA: ヴァージニア州（Commonwealth of Virginia）の、歴史公園コロニアル・ウィリアムズバーグ（Colonial Williamsburg）内の第一バプテスト教会（First Baptist Church）で、20世紀以前の墓穴21基。[The Virginia Gazette]
▼コロニアル・ウィリアムズバーグ関連記事→2021年2月24日

2021年7月16日（金）

インド: タミル・ナードゥ州（Tamil Nadu）シヴァガンガイ県（Sivaganga）キーラディー（Keeladi；Keezhadi）で、新たに円筒形井戸。また、土製の女性像の頭部など出土。[The New Indian Express]
スロベニア: リュブリャナ（Ljubljana）のドゥナイスカ通り（Dunajska cesta）で、ローマ時代・1世紀の保存の良い石櫃。[Slovenska tiskovna agencija]
ポーランド: ワルシャワ（Warszawa；Warsaw）のプラガ地区（Praga）で、スターリン時代の監獄の庭から、秘密警察に殺された19～20歳程度の3人の遺体。[The First News]
フィンランド: ハットゥラ（Hattula）のスオンタカ・ヴェシトルニンマキ（Suontaka Vesitorninmäki）で1968年に見つかった、初期中世・11～12世紀の剣とブローチを持つ墓について、最新の分析技術で再検証。被葬者は、性染色体の異数性（aneuploidy）XXYによって起こる、いわゆるクラインフェルター症候群（Klinefelter syndrome）と推定。従来は中世の女性戦士で指導者に当たる人物とみなされたり、あるいは合葬墓と解釈されたりしていた。
cf. Ulla Moilanen, Tuija Kirkinen, Nelli-Johanna Saari, Adam B. Rohrlach, Johannes Krause, Päivi Onkamo and Elina Salmela "A Woman with a Sword? – Weapon Grave at Suontaka Vesitorninmäki, Finland" European Journal of Archaeology, First View, pp. 1 - 19 [Cambridge Core]
UK（イングランド）: コルチェスター（Colchester）の初期ローマ時代の火葬墓の人骨40人分を分析し、それぞれの年齢・性別・病歴を特定。同位体分析によると、必ずしもコルチェスターの在地人ではない。25%は幼少期に別の場所（ギリシャ、イタリア、ドイツの可能性）で育った。在地人は急速にローマの埋葬習俗を受け入れ。
Colchester Museums conduct first scientific analysis of Roman cremation burials in Britain[Colchester Borough Council]

2021年7月15日（木）

山形県: 南陽市・長岡南森遺跡の南西部から、丸みを帯びて円弧を描く斜面。前方後円墳の後円部の可能性。南陽市教育委員会の調査。[朝日新聞]
▼長岡南森遺跡関連記事→2019年6月30日
愛知県: 大府市・石丸遺跡（いしまるいせき）で、鎌倉時代初頭～室町時代の区画溝、掘立柱建物跡。鎌倉時代初頭の山茶碗や室町時代の常滑焼・古瀬戸などの遺物。大府市の調査。7/31現地説明会。
石丸遺跡にて鎌倉時代から室町時代における中世時代の建物跡を発掘しました[大府市]
韓国: 慶尚北道慶州市・塔洞遺跡の木槨墓2号から発掘された新羅・1500年前の男性人骨は、身長180cm。脊椎に変形が見られ、椎間板へルニアの特徴。三国時代では、現存する最も長身の例。三国時代の男性人骨の平均身長は165cm。韓国文化財財団の調査。[聯合ニュース]
中国: 済南市歴城区鮑山街道裴家営村・裴家営西北遺跡で、殷、戦国、漢、宋、明・清の遺跡。[中国社会科学院考古研究所]
アラブ首長国連邦: シャールジャ首長国（Sharjah）で、紀元前3世紀の銀貨409枚を納めた壺。ヘラクレスやゼウス神の姿を表す。[Khaleej Times]
トルコ: チャタル・ヒュユク遺跡（Çatalhöyük）で出土した新石器時代の繊維は中東・ヨーロッパで最古の織物の実例であるが、1960年代に出土し、亜麻とみなされていた繊維を、新たに走査型電子顕微鏡（Scanning Electron Microscope、SEM）で分析。同遺跡のその後の出土品も含め、在地のオーク材の靱皮（bast）と確認。チャタル・ヒュユク遺跡で亜麻の種子が出土しないこととも整合し、繊維の輸入の必要もなかった。亜麻の繊維の最初の利用年代や、樹木の靭皮の重要性は、今後の研究課題に。
cf. Antoinette Rast-Eicher, Sabine Karg and Lise Bender Jørgensen "The use of local fibres for textiles at Neolithic Çatalhöyük" Antiquity, First View, pp. 1 - 16 [Cambridge Core]
エストニア: ペルヌ県（Pärnu maakond；Pärnu County）レーネラナー（Lääneranna）で手つかずの墓。少女の墓。[Eesti Rahvusringhääling]
UK（イングランド）: ダービーシャー州（the county of Derbyshire）のアンカー・チャーチ洞窟（Anchor Church）は、アングロサクソン時代・806年に追放されたノーサンブリア（Northumbria）の王エルズウルフ（Eardwulf）がいた可能性。従来は、自然の洞窟を18世紀に拡張したとみられていたが、実際はアングロサクソンの建築様式を示し、人工の洞窟。[The Guardian]
UK（イングランド）: コーンウォール（Cornwall）で中石器時代～新石器時代の移行期・6000年前のフリント。4500年前～3000年前の土器、柱穴、円形住居。中世・12～13世紀の鍛冶の証拠。第二次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦（D-Day）時の搭載地点。[BBC]
マン島: マン島で、ヴァイキング時代・1000年～1035年の埋納。銀貨87枚と銀製腕輪13片。銀貨はイングランド、ダブリン、ドイツ、マン島で打刻されたもの。腕輪も通貨として利用。[BBC]

2021年7月14日（水）

青森県: 三戸郡南部町・聖寿寺館跡（しょうじゅじたてあと）で出土した坩堝は、東日本で初となる把手付きの真鍮坩堝。また、金・銀・銅製品製作のための坩堝も複数確認。複数の貴金属生産の痕跡が単独の城館で見つかるのは東日本では極めて珍しい。南部町教育委員会と国立科学博物館の調査。【国立科学博物館】青森県聖寿寺館跡ではじめて確認された貴金属製品の生産について　～東日本初の把手付き真鍮坩堝や金・銀・銅坩堝の確認～[PRTIMES]
▼聖寿寺館跡関連記事→2020年10月22日
神奈川県: 鎌倉市が2018年の憲法記念日の講演会で憲法学者の木村草太氏の講師起用を拒否した問題で、同市が講演会の前に、実行委員会に事実と異なる説明をして主催者から外していた。[東京新聞]
韓国: 仁川市江華郡にある文化財地域で磚を発見したにもかかわらず申告せず、自分の事務所に持ち帰ったとして、博物館長だった公務員の有罪が大法院（最高裁判所）で確定。韓国の埋蔵文化財法では、埋蔵文化財を発見した者は、文化財の状態を変更せず、7日以内に文化財庁長に申告するよう規定。[Newspim]
▼文化財庁は2024年5月17日から国家遺産庁
インド: ハリヤーナー州（Haryana）のアラーヴァリー山脈（Aravalli Range）で、後期旧石器時代（Upper Palaeolithc）の洞窟絵画。[Hindustan Times]
アラブ首長国連邦: シャールジャ首長国（Sharjah）のムレイハ（Mleiha）で、紀元前3世紀の大量のテトラドラクマ銀貨（τετράδραχμον；Tetradrachm）409枚が詰まった壺。銀貨はアレクサンドロスやセレウコス朝の影響をうけたもの。ヘラクレスやゼウスの図像を表し、ギリシャ語やアラム語の銘文を入れる。交易の存在を示す。シャールジャ考古学局（Sharjah Archaeology Authority）の調査。[Sharjah24]
サウジアラビア: ハーイル州（Hail）のアル・ハディード（Al-Hadeed）で、紀元前540年の銘文。玄武岩に、王笏を手にするバビロニアの王といくつかの信仰上のシンボルや、26行に及ぶ楔形文字。ナボニドゥス王（Nabonidus；在位紀元前556年～前539年）がこの地にいた証拠。アラビア半島とメソポタミア文明の文化的、経済的なつながりを示す。[Arab News]
イスラエル: エルサレム（Jerusalem）で、第一神殿時代（First Temple-era）に建てられ、紀元前586年にバビロニアによって破壊された市壁の一部を発見。イスラエル古代遺跡管理局（Israel Antiquities Authority）7/14発表。[The Jerusalem Post]
エルサレムで、第一神殿時代の市壁。バビロニア時代の印章、ヘブライ文字で人名が刻まれた印章、壁の破壊直前に用いられた土器などが出土。バビロニアの侵略により破壊。『列王記』第25章第10節に該当の記述。
Archaeological excavations expose missing section of First Temple period Jerusalem wall[Israel Ministry of Foreign Affairs]
レバノン: シドン（Sidon）で発見された、中期青銅器時代（Middle Bronze age）の、銅合金の武器を伴う墳墓6基と、伴わない墳墓62基について、人骨を分析して比較。病理学的な特徴、対人暴力の証拠、武器を取り扱ったことによる骨の変化は、武器を伴うかどうかに相関せず。骨のコラーゲンの炭素（δ13C）や窒素（δ15N）からみて12号墓以外は同様の食生活。武器を伴っても「戦士の墓」とは言えない。
cf. Arwa Kharobi, Chris Stantis, Nina Maaranen, Holger Schutkowski "Once were warriors: challenging occupation preconceptions in Lebanese weapon-associated burials (Middle Bronze age, Sidon)" International Journal of Osteoarchaeology [Wiley Online Library]
トルコ: コンヤ県（Konya ili）のチャタル・ヒュユク遺跡（Çatalhöyük）で、新たな調査区からも街路の構造などを発見。[Daily Sabah]
カザフスタン: アクモラ州（Ақмола облысы；Akmola Oblast）で青銅器時代・アンドロノヴォ文化（Андроновская культура；Andronovo culture）・4000年前の闘斧（battle axe）出土。[Qazaq TV]
カザフスタン: アルマトイ州（Алматы облысы；Almaty）ケルブラク地区（Кербұлақ ауданы；Kerbulak district）のアルハルリ（Arkharly）で、岩絵の正確な場所を確認。[Qazaq TV]
カザフスタン: 東カザフスタン州（Шығыс Қазақстан облысы；East Kazakhstan Region）タルバガタイ地区（Тарбағатай ауданы；Tarbagatai）のエレケ・サジ遺跡（Елеке Сазы；Yeleke Sazy）の墳丘墓で、金製の遺物。[Kazinform]
▼エレケ・サジ遺跡関連記事→2020年9月4日
ポーランド: クラクフ（Kraków）の企業ノア・マリーン社（Noa Marine）が、海底調査用の無人機を開発。アカエイの形や動きに着想を得る。[The First News]
UK（イングランド）: ロンドン（London）のヒリンドン（Hillingdon）で、鉄器時代・紀元前1世紀の硬貨数百枚。ギリシャのアポロン神（Apollon）の横顔を表しており、フランスのマルセイユで2000年前に打刻された硬貨に基づく。神への供物か、あるいは土地の境界を示すために交換財として用いられたとみられる。[Evening Standard]
仏領サンピエール島およびミクロン島: サン・ピエール（Saint-Pierre）の港で、木造の桟橋。春に組み立て、秋に解体。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。[Franceinfo]
USA: マサチューセッツ州（Commonwealth of Massachusetts）バークシャー郡（Berkshire County）ストックブリッジ（Stockbridge）で、モヒカン族（Mohicans）の17世紀の住居跡。[New England Public Media]
USA: バージニア州（Commonwealth of Virginia）のフレデリックスバーグ & スポットシルヴァニア・ナショナル・ミリタリー・パーク（Fredericksburg and Spotsylvania National Military Park）にある南北戦争時の戦争墓地で、19世紀の道路跡とレンガ積みの排水溝跡。[The Charlotte Observer]
ペルー: リマ（Lima）のラ・ラレコレータ教会（la iglesia La Recoleta）近くのフランシア広場（Plaza Francia）の地下で、1606年に建てられたドミニカ修道会の礼拝堂跡。[RPP]

2021年7月13日（火）

鳥取県: 鳥取市・鳥取城跡の石垣が、山陰地方を襲った記録的大雨のために崩れた。西坂下御門の上手にある明治時代以降に作られたとみられる石垣。[日本海新聞]
沖縄県: 恩納村・米軍キャンプ・ハンセン内の恩納岳で見つかった沖縄戦の戦争遺跡について、恩納村が沖縄防衛局を通して申請していた現地への立ち入り調査を、米軍が拒絶していた。昨年3月に「たこつぼ壕」や横穴などが見つかっており、本島各地の少年らで構成された「第二護郷隊」が展開した場所と重なっていた。[琉球新報]
韓国: 忠清南道扶余郡扶余邑双北里の扶余羅城に、北門跡を確認。6世紀に百済が築造。[聯合ニュース]
インド: タミル・ナードゥ州（Tamil Nadu）クリシュナギリ県（Krishnagiri）マイラードゥムパーライ（Mayiladumparai）で、巨石墓の墓室から、巨石時代の鉄剣。柄を伴い、長さ60cm。[The Hindu]
クウェート: ファイラカ島（Failaka Island）のAl-Khidr遺跡の青銅器時代の土器を分析。ディルムン・バールバール伝統とメソオポタミア伝統を識別可能。
cf. Hasan J. Ashkanani, Branislav Kovár "Investigating ancient technology and ceramic composition at Al-Khidr site (Failaka Island, Kuwait): Geochemical analyses of Bronze Age pottery by pXRF and thin-section petrographic analyses" Arabian Archaeology and Epigraphy [Wiley Online Library]
パレスチナ: ヨルダン川西岸地区のビンヤミン地域のうち、Hirbet J’baitで第二神殿時代（Second Temple）の硬貨。Wadi Rashashでバル・コクバ（Bar Kochba）の反乱の当時の硬貨。[The Jerusalem Post]
ジョージア: サツルブリア洞窟（Satsurblia Cave）で25000年前の堆積層から、ヒト、オオカミ、バイソンの3種の哺乳動物のDNA。骨が出土しなくても環境DNAが得られる新技術。
Human environmental genome recovered in the absence of skeletal remains[Universität Wien]
cf. Pere Gelabert, Susanna Sawyer, Anders Bergström, Ashot Margaryan, Thomas C. Collin, Tengiz Meshveliani, Anna Belfer-Cohen, David Lordkipanidze, Nino Jakeli, Zinovi Matskevich, Guy Bar-Oz, Daniel M. Fernandes, Olivia Cheronet, Kadir T. Özdoğan, Victoria Oberreiter, Robin N. M. Feeney, Mareike C. Stahlschmidt, Pontus Skoglund, Ron Pinhasi "Genome-scale sequencing and analysis of human, wolf, and bison DNA from 25,000-year-old sediment" Current Biology [Cell]
ポーランド: ザモシチ（Gmina Zamość）のモクレ村（Mokre）で、ナチス（Nazi）の武器V2ロケット（V-2 rocket）。ヒトラー（Hitler）の命で開発し、連合軍の都市を報復攻撃するために用いた武器。村人の証言によると、第二次世界大戦中に何かが畑に落下。ドイツ人たちがクレーターを取りかこんで調査していた。ポトカルパチェ県（Województwo podkarpackie；Podkarpacie）ブリズナ（Blizne）の試験場から発射したもの。[The First News]
▼ルブリン県（Województwo lubelskie；Lublin）ザモシチ郡（powiat zamojski；Zamość County）
スペイン: スペイン南東部の岩陰遺跡、ラ・ボハ遺跡（La Boja）で、後期旧石器・マドレーヌ文化前期（Early Magdalenian）の、未知の産出地のものとみられる黒曜石の石核と細石刃。分析により、125km南西に産地。
cf. João Zilhão, Diego E. Angelucci, François-Xavier Le Bourdonnec, Armando Lucena, Ignacio Martín-Lerma, Susana Martínez, Henrique Matias, Valentín Villaverde and Josefina Zapata "Obsidian in the Upper Palaeolithic of Iberia" Antiquity, Volume 95, Issue 382, August 2021, pp. 865 - 884 [Cambridge Core]
USA: サウスカロライナ州（State of South Carolina）で、リモートセンシング技術によるデータを機械学習により評価し、ネイティヴアメリカンによる古期（Archaic Period）の環状貝塚（shell ring）を確認。新たな環状貝塚を発見し、従来の知見より50km北まで分布。
cf. Dylan S. Davis, Gino Caspari, Carl P. Lipo, Matthew C. Sanger "Deep learning reveals extent of Archaic Native American shell-ring building practices" Journal of Archaeological Science, Volume 132, August 2021, 105433 [ScienceDirect]

2021年7月12日（月）

鹿児島県: 伊佐市・曽木発電所遺構の壁の一部などが、大雨の影響で損壊。[南日本新聞]
世界文化遺産: 世界文化遺産の「明治日本の産業革命遺産」について、政府が開設した「産業遺産情報センター」での朝鮮半島出身者の強制労働に関する説明が不十分として、改善を求める決議案を国連教育科学文化機関（ユネスコ）が公表。[共同通信]
韓国: 全羅北道鎮安郡銅郷面大良里・大良里製銅遺跡（第4次調査）で、銅精錬遺構。[聯合ニュース]
▼大良里製銅遺跡関連記事→2021年1月5日
イスラエル: キルヤット・ガト（Kiryat Gat）のキルベット・ア・ライ遺跡（Khirbet a-Ra'i）で、紀元前1100年の土器にインクで描かれた銘文。『士師記』（Book of Judges）にみられる士師（Judge）ギデオン（Gideon）の別名エルバアル（Jerubbaal）を表す。イスラエル古代遺跡管理局（Israel Antiquities Authority）発表。[The Jerusalem Post]
▼キルベット・ア・ライ遺跡関連記事→2019年7月8日
ギリシャ: 古代ピュドナ（Πύδνα；Pydna）にあるコリノス（Κορινός；Korinos）の墓は古代マケドニアで最大級の墓。頭位を東に向ける、女性の墓の特徴。アレクサンドロス大王（Αλέξανδρος ο Μέγας；Alexander The Great）の母オリュンピアス（Ὀλυμπιάς；Olympias、紀元前375年ごろ～前316年）の墓とみられる。オリュンピアスはカッサンドロス（Κάσσανδρος；Cassander）により暗殺され、ピュドナに埋葬された。[Ancient Origins]

2021年7月11日（日）

トルコ: ムーラ県（Muğla il）のゼウス・レプシノス神殿（Temple of Zeus Lepsynos）の発掘で、2500年前の大理石のクーロス像（κοῦρος；kouros）2体や、ヘレニズム時代の銘文など出土。神殿は古代都市エウロモス（Εὔρωμος；Euromos）に紀元前2世紀に建てられた。[Anadolu Ajansı]
キプロス: ネアパフォス（Νέα Πάφος；Nea Paphos）で、紀元前2世紀～紀元後2世紀に使用された祭祀場。饗宴の儀式に用いたが、150年ごろの地震で廃絶。キプロスで同種の発見は初。[Poland In]

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