考古学のおやつ/NEWSLINK

2021年11月20日（土）

インドネシア: スラウェシ島（Sulawesi）の南スラウェシ州（South Sulawesi）マタノ湖（Danau Matano；Lake Matano）の湖底にあるプラウ・アンパット遺跡（Pulau Ampat）で、8世紀の鉄生産の証拠。ジャワ島の13～15世紀のマジャパヒト帝国（Majapahit Empire）は短剣クリス（kris）を作るため良質の鉄パモル・ルウ（Pamor Luwu）を輸入していたが、以前の研究で、マタノ湖近くでパモル・ルウが作られたことがわかっていた。
cf. Shinatria Adhityatama, R. R. Triwurjani, Dida Yurnaldi, Renee Janssen, Muslim Dimas Khoiru Dhony, Suryatman, Abdullah Abbas, Alqiz Lukman, David Bulbeck (2021) Pulau Ampat site: A submerged 8th century iron production village in Matano Lake, South Sulawesi, Indonesia. Archaeological Research in Asia [ScienceDirect]
ロシア: ヴォロネジ州（Воронежская область；Voronezh Oblast）オストロゴシュスキー（Острогожский район；Ostrogozhsky District）のデヴィーツァ（Девица；Devitsa）第5墓地の7号墓で、スキタイ（Scythian）・紀元前4世紀の戦士の墓。オーク材の柱17本を立てた木槨に、40代くらいの男性を葬る。銀板にアルティンパサ女神（Ἀρτίμπασα；Artimpasa）を表す。
Warrior’s grave reveals ornate Scythian treasures[Heritage Daily]
ドイツ: ノルトライン＝ヴェストファーレン州（Land Nordrhein-Westfalen）シュタインフルト郡（Kreis Steinfurt）ライネ市（Rheine）メーズム（Mesum）で、後期青銅器時代～初期鉄器時代・紀元前1200年～前600年の墓地。火葬骨を入れた壺7個を発見。
Gräberfeld aus der Bronzezeit in Rheine-Mesum freigelegt[Archaeologie Online]
オランダ: フェルセン（Velsen）のローマ時代の兵営跡は、予想よりはるかに大規模。16～28年に古い兵営、40～50年に新しい兵営か築かれ、後者は11ヘクタールに及ぶ。防衛線リメス（Limes）より北側では珍しい大規模な兵営。数千人の兵士を収容可能。考古学博物館Huis van Hildeの調査。フェルセンはゲルマン人のカウキー族（Chauci）と戦うための戦略的な軍事拠点だったが、ローマはカウキー族を破ることはできなかった。[NL Times]
▼北ホラント州（Noord-Holland）
UK（イングランド）: ノーフォーク州（Norfolk）ルーダム（Ludham）にあるセントベネッツ修道院（St Benet's Abbey）で、石灰岩製の門塔（gate house）が、落書きを刻まれて毀損される。セントベネッツ修道院は、9世紀に創立された中世の修道院。[Great Yarmouth Mercury]
カナダ: ワヌスケウィン・ヘリテージ・パーク（Wanuskewin Heritage Park）で、1800年前～300年前とみられる岩刻画（petroglyph）4個と、岩刻画製作に用いられた石のナイフを発見。[CBC]

2021年11月19日（金）

福島県: 福島市・町畑・吉治下遺跡（まちはた・きちじしたいせき）で、平安時代・9世紀ごろの集落跡。鍛冶関連遺構や鍛造剥片、椀形滓、羽口のほか、墨書土器が出土。鍛冶技術を持ち、識字が可能な工人集団が暮らしていた。福島市振興公社の調査。11/20現地説明会。[福島民友新聞]
▼町畑・吉治下遺跡関連記事→2021年11月16日
栃木県: 栃木市・下津原鹿島古墳群で、古墳時代の古墳や、江戸時代の炭焼き窯跡。公益財団法人とちぎ未来づくり財団埋蔵文化財センターの調査。11/27現地説明会。
下津原鹿島古墳群（栃木市）発掘調査現地説明会の開催について[栃木県]
堺市: 堺区・大山古墳（だいせんこふん）で、墳丘を囲む二つの堤のうち、墳丘に近い第1堤に円筒埴輪が2列並んでいた。5世紀の築造時の遺構。宮内庁と堺市11/19発表。[朝日新聞]
宮内庁書陵部による「仁徳天皇百舌鳥耳原中陵（もずのみみはらのなかのみささぎ）（大山古墳）第１堤における事前調査（第２回）」の調査成果について[堺市]
オランダ: モニキンダム（Monnickendam）で、後期中世・17世紀の水門の遺構。長さ40m。Vestigiaの調査。[nrc]
フランス: グルノーブル（Grenoble）で、中世・13世紀の修道院の壁と、約20基の墓と人骨。[EchoSciencesGrenoble]
オーヴェルニュ＝ローヌ＝アルプ地域圏（Auvergne-Rhône-Alpes）イゼール県（Le département de l’Isère）
スペイン: セビリア県（Provincia de Sevilla）ロス・モラーレス（Los Molares）にあるカニャーダ・レアル（Cañada Real）の新石器時代・6000年前のドルメンは赤く彩色されていた。顔料サンプルは酸化鉄と判明。[ABC de Sevilla]
UK（スコットランド）: エディンバラ（Edinburgh）旧市街で、19世紀のなめし革工場の跡。[EdinburghLive]
モロッコ: エッサウィラ（Essaouira）のビズムーン洞窟（Bizmoune Cave）で、ネックレスかブレスレットに用いられたとみられる15万年前の孔のあけられた貝殻。世界最古の装身具。[The New Arab]
▼ビズムーン洞窟関連記事→2021年9月23日
メキシコ: サカテカス州（Estado de Zacatecas）フレスニヨ（Fresnillo）のラ・サラダ（La Salada）で、11000年前のクローヴィス・ポイント（punta Clovis；Clovis point）。この地域では初。初期の定住者の存在を示す。
El descubrimiento de una punta Clovis confirma la presencia de los primeros pobladores de América en Zacatecas[Instituto Nacional de Antropología e Historia
ベリーズ: パインズ・クリーク製塩遺跡群（Paynes Creek Salt Works）の水中遺跡で、古典期マヤ（Classic Maya）の塩生産の労働者の住宅を発見。
LSU ARCHAEOLOGISTS DISCOVER SALT WORKERS’ RESIDENCES AT UNDERWATER MAYA SITE[Louisiana State University]
cf. Heather McKillop and E. Cory Sills (2021) BRIQUETAGE AND BRINE: LIVING AND WORKING AT THE CLASSIC MAYA SALT WORKS OF EK WAY NAL, BELIZE. Ancient Mesoamerica, First View, pp. 1 - 23 [Cambridge Core]

2021年11月18日（木）

三重県: 松阪市・小片野新田遺跡（おかたのしんでんいせき）で室町時代から江戸時代までの掘立柱建物跡や土坑、溝、土師器、陶磁器、古銭。三重県埋蔵文化財センターの調査。11/27現地説明会。
小片野新田遺跡（松阪市小片野町）で発掘調査現地説明会を開催します[三重県]
中国: 内モンゴル自治区ウランチャブ市（烏蘭察布市）凉城県六蘇木鎮南房子村で元時代の村落遺跡。農業を主とし、牧畜も発展。[新華社]
フランス: ブルゴーニュ＝フランシュ＝コンテ地域圏（Bourgogne-Franche-Comté）ソーヌ＝エ＝ロワール県（Saône-et-Loire）スヴレ（Sevrey）で、メロヴィング朝（Mérovingiens；Merovingian）の土器工房。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
Un nouvel éclairage sur l'artisanat potier à Sevrey (Saône-et-Loire)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）]
イベリア半島: イベリア半島の前3000年～前1500年のヒトのDNA136試料を分析し、銅石器時代から青銅器時代への移行を検討。紀元前2200年ごろに初期青銅器時代・エル・アルガール文化（La Cultura de El Argar；El Argar culture）が登場するとともに、新たな遺伝集団が南イベリアに登場。銅石器時代にはステップ地帯に先祖を持つ人は皆無だったが、エル・アルガール文化では全員。
Genetische Veränderungen im südlichen Iberien der Bronzezeit
Genetic Changes in Bronze Age Southern Iberia[Max-Planck-Institut für Menschheitsgeschichte]
cf. Vanessa Villalba-Mouco, Camila Oliart, Cristina Rihuete-Herrada, Ainash Childebayeva, Adam B. Rohrlach, María Inés Fregeiro, Eva Celdrán Beltrán, Carlos Velasco-Felipe, Franziska Aron, Marie Himmel, Caecilia Freund, Kurt W. Alt, Domingo C. Salazar-García, Gabriel García Atiénzar, Mª. Paz de Miguel Ibáñez, Mauro S. Hernández Pérez, Virginia Barciela, Alejandro Romero, Juana Ponce, Andrés Martínez, Joaquín Lomba, Jorge Soler, Ana Pujante Martínez, Azucena Avilés Fernández, María Haber-Uriarte, Consuelo Roca de Togores Muñoz, Iñigo Olalde, Carles Lalueza-Fox, David Reich, Johannes Krause, Leonardo García Sanjuán, Vicente Lull, Rafael Micó, Roberto Risch, Wolfgang Haak (2021) Genomic transformation and social organization during the Copper Age-Bronze Age transition in southern Iberia. Science Advances, Vol 7, Issue 47 [Science Advances]
カナダ: オンタリオ州（Province of Ontario）グエルフ（Guelph）のベーカー・アンド・ウィンダム・ストリート（aker and Wyndham Street）で、墓壙63基と人骨26体。1827年から、市域内の埋葬が禁じられる1853年まで、あらゆる宗教のために用いられた墓地。[Toronto Star]

2021年11月17日（水）

奈良県: 高取町・清水谷遺跡（しみずたにいせき）で、川原石を積んで護岸を施した古墳時代中期・5世紀中頃の人工の池の跡。高取町教育委員会11/17発表。[産経新聞]
▼奈良県高市郡高取町
▼清水谷遺跡関連記事→2001年12月7日
和歌山県: 白浜町久木の山中で、銅の製錬に使われた焼き窯跡とみられる遺構。坑道口や鉱滓も発見。[紀伊民報]
広島県: 福山市・福山城跡石垣（二之丸西側上段石垣）で、古絵図で櫓跡とされる位置の南側から、東西18m、深さ1.2mにわたって石垣を確認。福山市の調査。11/27現地説明会。
史跡福山城跡石垣（二之丸西側上段石垣）発掘調査見学会の開催について[福山市]
広島県: 福山市・福山城と瀬戸内海を結んでいた運河の石垣。城に船で物資を運んでいた江戸時代初期の遺構とみられる。福山市の調査。[朝日新聞]
韓国: 全羅南道山二面海南郡・珍山里窯跡で高麗青磁・高麗陶器を焼いた窯3基と厚さ1m以上の灰原、土取場を発見。民族文化遺産研究院の調査。[聯合ニュース]
▼珍山里窯跡関連記事→2021年11月9日
韓国: 慶尚南道金海から出土したとされていた国宝の騎馬人物形土器について、所蔵者の国立慶州博物館が、この土器が出土したという「徳山」が金海を差すとは特定できないとして、出土地表記を「金海郡大東面」から「未詳」に変更。加耶時代を代表する遺物で、金海市では各地で騎馬人物土器をモチーフにしたモニュメントなどを設置しており、記述を戻すよう国立慶州博物館に要求する方針。[NEWSIS]
中国: 山西省太原市で仰韶文化・5500年前の五角形住居跡。[AFPBB]
中国: 陝西省西安市・鎬京遺跡で、西周時代の大型建物跡。このうち14号建築は、国家的な宗廟の可能性。また、道路遺構なども。鎬京は西周の都。[西安新聞網]
▼鎬京遺跡関連記事→2021年4月1日
中国: 内モンゴル自治区ウランチャブ市（烏蘭察布市）凉城県の漢時代の古城で、前漢時代の小児墓128基。多くは瓦棺葬。[内蒙古新聞網]
イラン: 北ホラーサーン州（Ostān-e Khorāsān-e Shomālī；North Khorasan province）のテペ・リヴィ（Tepe Rivi；Tappeh Rivi）で、メディア王国（Median empire）・2700年前の砦。[Tehran Times]
▼テペ・リヴィ関連記事→2020年10月31日
ローマ帝国: ローマ帝国のハドリアヌス帝（2世紀）、ティベリウス帝（1世紀前半）、ユリアヌス2世（4世紀）の金貨を、ミュオンX線発光分光法（muonic X-ray emission spectroscopy；μXES）で分析。非常に純度の高い金で作られていることが判明。ローマ帝国の繁栄を示す。
All that glistened was gold: Roman coin study reveals thriving empires[University of Oxford]
cf. George Alexander Green, Katsu Ishida, Bethany V. Hampshire, Kevin Butcher, A. Mark Pollard, Adrian D. Hillier (2021) Understanding Roman Gold Coinage Inside Out. Journal of Archaeological Science, Volume 134, October 2021, 105470 [ScienceDirect]
エジプト: テーべ（Thebes）のデル・エル・バハリ（Deir el-Bahari）にあるハトシェプスト女王葬祭殿（Chapel of Hatshepsut）の壁に刻まれたレリーフについて、製作工程を研究。
cf. Anastasiia Stupko-Lubczynska (2021) Masters and apprentices at the Chapel of Hatshepsut: towards an archaeology of ancient Egyptian reliefs. Antiquity, First View, pp. 1 - 18. [Cambridge Core]
メキシコとグアテマラ: ウスマシンタ川（Usumacinta）上流域の、ピエドラス・ネグラス（Piedras Negras）、ラ・マル（La Mar）、ラカンハ・ツェルタル（Lacanja Tzeltal）をそれぞれ中心とする3地域を、Lidarを利用して調査。西暦350～900年に、高度な灌漑と段々畑の大規模なシステム。数世紀にわたる持続可能な農業がおこなわれていた
Were the ancient Maya an agricultural cautionary tale? Maybe not, new study suggests [Brown University]
cf. Charles Golden, Andrew K. Scherer, Whittaker Schroder, Timothy Murtha, Shanti Morell-Hart, Juan Carlos Fernandez Diaz, Socorro del Pilar Jiménez Álvarez, Omar Alcover Firpi ,Mark Agostini, Alexandra Bazarsky, Morgan Clark, G. Van Kollias III, Mallory Matsumoto, Alejandra Roche Recinos, Joshua Schnell and Bethany Whitlock (2021) Airborne Lidar Survey, Density-Based Clustering, and Ancient Maya Settlement in the Upper Usumacinta River Region of Mexico and Guatemala. Remote Sensing, 2021, 13(20), 4109. [MDPI]

2021年11月16日（火）

福島県: 福島市・町畑・吉治下遺跡（まちはた・きちじしたいせき）で、平安時代の墨書土器などが多く出土し、平安時代の拠点的な集落跡と予想。福島市振興公社の調査。11/20現地説明会。
町畑・吉治下遺跡現地説明会を開催します！[福島市]
長野県: 坂城町・上五明条里水田址（かみごみょうじょうりすいでんし）で、平安時代の竪穴建物跡を中心とした遺構。長野県埋蔵文化財センターの調査。11/19-20現地説明会。
坂城町上五明条里水田址現地説明会のお知らせ[長野県埋蔵文化財センター]
▼上五明条里水田址関連記事→2009年6月5日
香川県: 丸亀市・丸亀城の南側の石垣の地中部分から、算木積みの石垣。江戸時代前期に幕府に提出された絵図と一致。丸亀藩主山崎氏が丸亀城の再建に着手した当初のものと推定。丸亀市教育委員会の調査。[NHK]
カンボジア、タイ: カンボジアとタイのアンコール朝（Angkor）クメール王国の窯15か所で出土した炻器（高温で焼しめられた焼き物）の元素分析により、炻器が生産された窯を特定できる。生産と消費の関係を研究可能に。
cf. Peter Grave, Lisa Kealhofer, Miriam T. Stark, Darith Ea, Rachna Chhay, Ben Marsh, Kaseka Phon, Hiroshi Sugiyama, Yukitsugu Tabata, Yuni Sato, Sok Keo Sovannara, Visoth Chhay, Sutee Veerawan (2021) Angkorian Khmer stoneware: production and provenance. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 40, Part B, December 2021, 103231 [ScienceDirect]
オーストラリア: ニューサウスウェールズ州（New South Wales）デュラス・ノース（Durras North）の洞窟内で見つかった貝塚から、ハシボソミズナギドリ（short-tailed shearwater）の骨で作った骨器500個。骨の構造を利用して作った銛（fishing spear）のほか、繊維や川の加工具、対人武器などに使用。
cf. Michelle C. Langley, Owen Carriage & the Walbunga Custodian Elders (2021) Insights from a small sea cave: Reanalysis of the bone technology from Durras North, Yuin Country, Coastal New South Wales, Australia. Australian Archaeology [Taylor & Francis Online]
イラク: ジーカール県（Dhi Qar Governorate）アル・シャトラ（Al Shatrah）Telloにあるシュメール（Sumer）の都市ギルス（Girsu）で、楔形文字の銘文や、橋の遺構。[The National]
アルメニア: アルタシャト（Artashat）＝アルタクサタ（Ἀρτάξατα；Artaxata）で、ローマ帝政期114～117年の未完成のアーチ形水道橋（Aquädukt；adequate）の遺構。アルタシャトはアルメニア属州の首都となる予定だったが、トラヤヌス帝の没後、ハドリアヌス帝がアルメニアを放棄したため、水道橋も未完成に。
Östlichstes Aquädukt der Römer in Armenien entdeckt[Westfälische Wilhelms-Universität Münster]
cf. Achim Lichtenberger, Mkrtich H. Zardaryan, Torben Schreiber (2021) Failed Roman Imperialism. An Unfinished Roman Aqueduct at Artaxata in Armenia. Archäologischer Anzeiger, 2021/1, § 1–81 [Deutsches Archäologisches Institut]
スーダン: 青ナイル沿いにある、中世アルワ王国（Aρουα；Alwa）の5/6世紀～16世紀の都・ソバ（Soba）について、物理探査と発掘調査により、空間構成を検討。ソバは16世紀初めの都市崩壊の前に、すでに衰退が始まっていたと判明。貪欲な女王の政策が混乱をもたらしたという民間伝承に合致。
cf. Mariusz Drzewiecki, Robert Ryndziewicz, Joanna Ciesielska, Maciej Kurcz, Tomasz Michalik and Ewa Czyżewska-Zalewska (2021) The spatial organisation of Soba: a medieval capital on the Blue Nile. Antiquity, First View, pp. 1 - 8 [Cambridge Core]
ペルー: ペルー北部海岸地帯、チャオ川流域（Chao Valley）のロス・モルテロス（Los Morteros）で、紀元前5100年、アメリカ大陸最古の日干し煉瓦（adobe）で作った建築物。エルニーニョ（El Niño）の洪水で生じた粘土の堆積から切り出して作り、成形のみしか加工がない。
cf. Ana Cecilia Mauricio, Rolf Grieseler, Andrew R. Heller, Alice R. Kelley, Francisco Rumiche, Daniel H. Sandweiss, and Willem Viveen (2021) The earliest adobe monumental architecture in the Americas. Proceedings of the National Academy of Sciences, November 30, 2021 118 (48) e2102941118 [PNAS]

2021年11月15日（月）

鳥取県: 鳥取市・狗尸那城跡（くしなじょうあと）で、平坦面（曲輪）の間をつなぐ斜面部を調査し、斜面を保護する石積みや、斜面部を改修した痕跡を新たに確認。斜面部の石積みは礎石建物跡と関連する可能性。鳥取県埋蔵文化財センターの調査。11/27現地説明会。
「狗尸那（クシナ）城跡」現地説明会を開催します[鳥取県埋蔵文化財センター]
▼狗尸那城跡関連記事→2020年9月10日
沖縄県: 嘉手納町・野国貝塚（のぐにかいづか）で出土した7500年前～7200年前のブタ107頭の下顎を調査。野生では稀な高齢のブタが多く、ブタを飼育していた可能性。[共同通信]
（再掲）cf. 新美倫子・盛本勲「野国貝塚群B地点出土イノシシ類の年齢構成と性比について」南島考古40号
『南島考古』40号の頒布開始しました！！[沖縄考古学会]
韓国: 京畿道華城・済扶島の潮間帯から、高麗時代初期に建造されたとみられる船舶2隻。[聯合ニュース]
スウェーデン: ハルプリンゲ（Harplinge）で紀元前500年～紀元後1200年の建物16棟。多くは鉄器時代に属し、ヴァイキング時代のものも。最も古い遺物は6000年前。[svt]

2021年11月14日（日）

イタリア: アレーネ・カンディーデ洞窟（Caverna delle Arene Candide；Cavern of the White sands）の初期新石器時代（Early Neolithic）のヒツジの遺体について、炭素と酸素の同位体分析。一部のヒツジは夏季に標高の高い地域に移動していたと推定。カルディウム期（Cardial phase）・紀元前5400年～前5300年には、小規模な移牧が行われた。新石器時代の垂直的移牧の証拠。
cf. Karolina Varkuleviciute, Kurt J. Gron, William P. Patterson, Chiara Panelli, Stefano Rossi, Sandra Timsic, Darren R. Gröcke, Roberto Maggi, Peter Rowley-Conwy (2021) Transhumance in the Early Neolithic? Carbon and oxygen isotope insights into sheep husbandry at Arene Candide, Northern Italy. Journal of Archaeological Science: Reports,. Volume 40, Part B, December 2021, 103240 [ScienceDirect]
▼リグーリア州（Regione Liguria）サヴォーナ県（Provincia di Savona）フィナーレ・リーグレ（Finale Ligure）
▼アレーネ・カンディーデ洞窟関連記事→2021年8月11日
イタリア: シチリア島（Sicilia；Sicily）マルサーラ（Marsala）のバリオ・アンセルミ考古博物館（Museo Archeologico Baglio Anselmi）が所蔵する、海中から出土したローマ時代と古代後期のアンフォラ33点について、内容物を分析。7点で植物油を検出。1点で松脂の原料となるマツを検出。
cf. Davide Tanasi, Enrico Greco, Filippo Pisciotta, Stephan Hassam (2021) Chemical characterization of organic residues on Late Roman amphorae from shipwrecks off the coast of Marsala (Trapani, Italy). Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 40, Part B, December 2021, 103241 [ScienceDirect]
スペイン: バスク自治州（Comunidad Autónoma del País Vasco）ギプスコア県（Gipuzkoa；Provincia de Guipúzcoa）・ウサテギ遺跡（Usategi）は、25000年前～20000年前にホモ・サピエンスがイベリア半島に移動した新たな経路。[El Diario]
UK（イングランド）: オックスフォードシャー州（the county of Oxfordshire）リッジウェイ（Ridgeway）のチョーク・ダウンズ（Chalk Downs）と、ホワイト・ホース（White Horse）のヴェイル（Vale）にある5遺跡で出土したローマ時代のウシとヒツジのコラーゲンについて、炭素と窒素の安定同位体分析。窒素同位体に明確な差がみられ、リッジウェイとヴェイルの家畜は別々に飼育された。一部の個体は早い段階で別の土地に移動。
cf. Anastasia Iorga, Chris Gosden, Gary Lock, Rick Schulting (2021) Stable carbon and nitrogen isotope analysis and Romano-British animal management along the Ridgeway, Oxfordshire. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 40, Part A, December 2021, 103254 [ScienceDirect]
エジプト: アブ・グラブ（Abu Gorab）で太陽の神殿。第5王朝のファラオ・ニウセルラー（Nyuserre Ini）が紀元前25世紀に建設。[INEnternainment]

2021年11月13日（土）

岩手県: 奥州市・長者ケ原廃寺跡（ちょうじゃがはらはいじあと）で、同遺跡の北側や西側に、門があったことを示す木材。11世紀ごろに建てられた寺院の跡。奥州市教育委員会11/11発表。[岩手日報]
▼長者ケ原廃寺跡関連記事→2011年10月5日
沖縄県: 宜野湾市・米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の返還跡地で、琉球王府時代の喜友名・新城の宿道と、印部土手石。[琉球新報]
イスラエル: エルサレム（Jerusalem）のアルモン・ハナチーブ（Armon Hanatziv）で、庭園に隣接した鉄器時代・紀元前7世紀半ばの石造りのトイレの堆積試料15点を分析。腸内の寄生虫は鞭虫（whipworm；Trichuris trichiura）、テニア属（beef/pork tapeworm；Taenia sp.）、回虫（roundworm；Ascaris lumbricoides）、蟯虫（pinworm；Enterobius vermicularis）の4種。回虫と蟯虫についてはイスラエル最古。劣悪な衛生環境に起因する寄生虫が高位の住民にも影響。
cf. Dafna Langgut (2021) Mid-7th century BC human parasite remains from Jerusalem. International Journal of Paleopathology, Volume 36, March 2022, Pages 1-6 [ScienceDirect]
トルコ: イスタンブル（İstanbul）のベシクタシュ地区（Beşiktaş）で、銅石器時代・紀元前5000年～前4500年の土器。青銅器時代のクルガン墓は、115基に達する。ビザンティン帝国・6世紀とオスマン帝国・16世紀および19世紀の井戸も。[Hürriyet Daily News]
トルコ: キュタヒヤ県（Kütahya il）の古代都市アイザノイ遺跡（Αιζανοι；Aizanoi）で、骨器工房や、オイルランプの店。[Anadolu Ajansı]
チェコ: 中央ボヘミア州（Středočeský kraj；Central Bohemia）ラコヴニーク（Rakovník）で、民族大移動時代・5世紀の装身具。金の環に、チェコのガーネットと、インドまたはスリランカ産と思われる鉄礬柘榴石（almandine）で飾る。ベルギーにあるフランク王国のキルデリク1世（Childeric I；481年没）の墓の副葬品を参考に年代を推定。[Radio Praha]

2021年11月12日（金）

北海道: 積丹町神威岬沖30kmの海底で、旧日本海軍の大砲。銘板には「呉海軍工廠　四十口径　三吋砲　明治三十九年」の記述。[朝日新聞]
青森県: 八戸市・是川一王寺遺跡（これかわいちおうじいせき）から、縄文時代中期前半・5300年前～5100年前の土面。八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館11/12発表。[デーリー東北]
▼是川一王寺遺跡関連記事→2008年6月22日
愛媛県: 久万高原町・赤蔵ケ池東遺跡で、縄文時代晩期末から弥生時代前期中ごろの土器や石器のほか、石器製作の痕跡。弥生時代早期に人々が定住。愛媛大学埋蔵文化財調査室の調査。[愛媛新聞]
沖縄県: 宮古島市・長墓遺跡（ながばかいせき）の先史時代の人骨のDNAは100%縄文人のDNA。近世の人骨は現代沖縄人とほぼ同じ約20%の縄文DNA。グスク時代・11～15世紀に九州から「本土日本人」が琉球列島に移住してきたと推定。[沖縄タイムス]
cf. Martine Robbeets, Remco Bouckaert, Matthew Conte, Alexander Savelyev, Tao Li, Deog-Im An, Ken-ichi Shinoda, Yinqiu Cui, Takamune Kawashima, Geonyoung Kim, Junzo Uchiyama, Joanna Dolińska, Sofia Oskolskaya, Ken-Yōjiro Yamano, Noriko Seguchi, Hirotaka Tomita, Hiroto Takamiya, Hideaki Kanzawa-Kiriyama, Hiroki Oota, Hajime Ishida, Ryosuke Kimura, Takehiro Sato, Jae-Hyun Kim, Bingcong Deng, Rasmus Bjørn, Seongha Rhee, Kyou-Dong Ahn, Ilya Gruntov, Olga Mazo, John R. Bentley, Ricardo Fernandes, Patrick Roberts, Ilona R. Bausch, Linda Gilaizeau, Minoru Yoneda, Mitsugu Kugai, Raffaela A. Bianco, Fan Zhang, Marie Himmel, Mark J. Hudson & Chao Ning (2021) Triangulation supports agricultural spread of the Transeurasian languages. Nature [Nature]
▼長墓遺跡関連記事→2012年7月7日
中国: 浙江省衢州市衢州区雲渓郷孟姜村で発見された西周時代の墓は、浙江省の同時期の墓として最大。「姑蔑」族の王陵の可能性。[中国社会科学院考古研究所]
インドネシア: 南スラウェシ（South Sulawesi）のチャッパロンボ1遺跡（Cappalombo 1）で出土した、中期完新世（Middle_Holocene）・トアレ文化（Toalean culture）の墓6基から、線刻の入った石10個。石は赤鉄鉱（hematite）製で、線刻は芸術品というよりも、赤色顔料の生産に用いた痕跡の可能性があるが、トアレ文化での赤色顔料の用途は不明。
cf. Suryatman, Fakhri, Budianto Hakim, Yinika Perston, Ratno Sardi, Kim Newman, Hasanuddin, Muhammad Nur and Khadijah Muda (2021) Incised stone artefact in the context of Middle Holocene burials at Cappalombo 1, South Sulawesi, Indonesia. SPAFA Journal, 5. [SPAFA Journal]
ヨルダン: ペラ遺跡（Pella）の中期青銅器時代（Middle Bronze Age；MBA）の人骨22体の永久第2臼歯のエナメル質の同位体分析。C3穀物やマメ類に依拠した均一な食生活。外来者も識別され、周縁に位置するとみなされてきたペラ遺跡でも、恒常的な移動がみられた。
cf. Chris Stantis, Nina Maaranen, Arwa Kharobi, Geoff M. Nowell, Colin Macpherson, Holger Schutkowski, Stephen Bourke (2021) Jordanian migration and mobility in the Middle Bronze Age (c. 2100—1550 BCE) at Pella. International Journal of Osteoarchaeology, Accepted Articles [Wiley Online Library]
バルト海東岸: バルト海（Baltic）東岸で中期新石器時代・櫛目文土器文化（Comb Ware）・紀元前4千年紀の狩猟採集民に見られる、死者の顔に粘土などを塗る「デスマスク」について、用いられた素材を分析。
cf. Benjamin Elliott, Liv Nilsson Stutz & Chantal Conneller (2021) Clamber of the dead: material ontology and cosmological affect within the hunter-gatherer mortuary traditions of the Eastern Baltic 4000-3000 cal. BC. World Archaeology [Taylor & Francis Online]
ドイツ: バイエルン州（Freistaat Bayern）パッサウ郡（Landkreis Passau）バート・フュッシンク自治体（Bad Füssing）のヴュルディング（Würding）で、6世紀のエリート層の18～25歳の女性の墓。金の頸飾りをつける。[Landkreis Passau]
ペルー: ラ・リベルター県（Región La Libertad；La Libertad region）トルヒージョ郡（Trujillo）のチャンチャン遺跡（Chan Chan）で、チムー文化（Chimú culture）の墓1基の内部10平方mから人骨25体。被葬者の大半は30歳以下の女性で、繊維製作の道具を伴う。[Andina]

2021年11月11日（木）

神戸市: 垂水区・垂水日向遺跡（たるみひゅうがいせき）で、大型掘立柱建物、大型井戸、かわらけ土坑。大型掘立柱建物は、武家屋敷のルーツとなる構造や間取り。12世紀のC字唐草紋軒平瓦出土。都とのつながりを示す。神戸市の調査。11/13現地説明会。
垂水区　垂水日向遺跡にて都とのつながりを示す有力者の大型屋敷跡を発見[神戸市]
奈良県: 橿原市・慈明寺遺跡（じみょうじいせき）で。弥生時代前期の水田と墓地。奈良県立橿原考古学研究所11/11発表。11/14現地説明会。[毎日新聞]
藤原京に伴う条坊道路・建物、弥生時代前期の溝・水田・土器棺墓など藤原京右京五条八坊・慈明寺遺跡　現地説明会のご案内[奈良県立橿原考古学研究所]
▼慈明寺遺跡関連記事→2020年12月9日
韓国: 慶尚南道咸安郡・末伊山古墳群で、5世紀後半の75号墳から、豊富な副葬品とともに、中国・南朝時代・5世紀の青磁蓮弁文碗。加耶文化圏では初。咸安は阿羅加耶の都と考えられている地域。[慶南日報]
中国: 山西省太原で仰韶文化・5000年前の遺跡。灰坑98基、土器窯11基、住居跡2基。人を葬った灰坑も1基。ほかに明清時代の墓6基も。[中国新聞網]
イラン: ギーラーン州（Ostān-e Gīlān）アースターネイェ・アシュラフィーイェ（Astaneh-ye Ashrafiyeh）沖のカスピ海（Caspian Sea）でサファヴィー朝（Safavid）16世紀の船。長さ48m。[Tehran Times]
ハンガリー: ブダペスト（Budapest）のマダールヘジ（Madárhegy）で、7000前の集落。線帯文土器や獣骨が出土。[Hungary Today]
カナダ: ニューファンドランド（Newfundland）のキューピッド・コーヴ・プランテーション（Cupids Cove Plantation）で、1493年～1499年に打刻されたヘンリー7世（Henry VII）のハーフ・グロート銀貨（half groat）。キューピッド・コーヴ・プランテーションが建設された1610年より古く、カナダ最古のイングランド貨幣。[Toronto Star]
カナダ: ブリティッシュコロンビア州（British Columbia；Colombie-Britannique）バラード海峡（Burrard Inlet）の遺跡で出土した紀元前400年～1200年のシロザケ（chum salmon；Oncorhynchus keta）の骨を分析。オスを優先的に捕獲。先住民ツレイル・ウォウトゥス族（Tsleil-Waututh）は、入り江に大規模な堰を設け、シロザケを捕獲したが、産卵期のサケの雌雄を選別し、将来の収獲を確保するためメスを放流。ヨーロッパ人の定着者によって破壊されるまで、1000年にわたり持続的なサケ漁撈を行っていた。[The Guardian]
バラード海峡の4遺跡のうち2遺跡で、オスのシロザケが優先的に捕獲されていた。民族誌の記述を実証。
cf. Jesse Morin, Thomas C. A. Royle, Hua Zhang, Camilla Speller, Miguel Alcaide, Ryan Morin, Morgan Ritchie, Aubrey Cannon, Michael George, Michelle George & Dongya Yang (2021) Indigenous sex-selective salmon harvesting demonstrates pre-contact marine resource management in Burrard Inlet, British Columbia, Canada. Scientific Reports, volume 11, Article number: 21160 [Scientific Reports]

キーワード検索日付検索
最新ニュース

ニュース編年表

きまぐれNEWSLINK：2021年11月中旬