考古学のおやつ/NEWSLINK

2023年1月10日（火）

韓国: 忠清南道泰安郡近興面の安興鎮城（アヌンジンじょう）で、掘削機進入の妨げになるとして、国の史跡であるにもかかわらず南門の一部を毀損。郡発注の造景工字であったが、文化財造景技術者が立ち会わず、オペレーターだけで作業。[聯合ニュース]
中国: 阿史那皇后（Empress Ashina；551～582年）のゲノムを分析。突厥汗国（Göktürk Khanate）の王族・阿史那氏出身で、遺伝子の97.7%は北東アジア由来。鉄器時代のツングース・モンゴルステップ地帯の柔然（Rouran）、鮮卑（Xianbei）、契丹（Khitan）、黒水靺鞨（Heishui Mohe）に関連。突厥人は複数の起源を持ち、現在のチュルク語族話者への影響は少ない。現代チュルク語族話者の形成は、移住による拡散より文化伝播によるところが大きい。
cf. Xiaomin Yang, Hailiang Meng, Jianlin Zhang, Yao Yu, Edward Allen, Ziyang Xia, Kongyang Zhu, Panxin Du, Xiaoying Ren, Jianxue Xiong, Xiaoyu Lu, Yi Ding, Sheng Han, Weipeng Liu, Li Jin, Chuan-Chao Wang, Shaoqing Wen (2023) Ancient Genome of Empress Ashina reveals the Northeast Asian origin of Göktürk Khanate. Journal of Systematics and Evolution. [Wiley Online Library]
▼阿史那皇后は北周武帝の皇后。
中国: 長沙市・漢の長沙王陵（ちょうさおうりょう）の周辺で、新たに前漢の小型竪穴土坑墓21基。[新華社]
中国: 四川省眉山市東坡区多悦鎮滴水村と太和鎮馬堰村の境にある壇罐山遺跡で、成都平原で最古の旧石器遺跡。[中国新聞網]
トルコ: イスタンブル（İstanbul）のビュユクチェクメジェ（Büyükçekmece）で、ローマ時代2000年前の石棺。内部に人骨。[Hürriyet Daily News]
スペイン: アストゥリアス州（Principado de Asturias）スアリアス（Suarías）のセロサ・ラガーニャ洞窟（La Cerrosa-Lagaña）で鉄器時代・紀元前3世紀～紀元後1世紀の人骨。洞窟は後期新石器時代から後期ローマ時代まで墓所として使用。[El Español]
北欧: ヨーロッパ各地の266遺跡から出土したボグ・ボディ（bog body）1000体を分析し、3つのカテゴリーに。「ボグ・マミー」（bog mummies）は、皮膚、軟部組織、毛髪が遺存。「ボグ・スケルトン」（bog skeletons）は骨のみが遺存。さらに、いずれかが部分的に遺存するカテゴリー。ボグ・ボディは数千年にわたる伝統の一部。スカンディナヴィアで紀元前5000年ごろに始まって北欧に広がり、一部地域では中世まで残る。暴力的な死を迎えたものもあるが、事故や自殺も含む。[Heritage Daily]
cf. Roy van Beek, Cindy Quik, Sophie Bergerbrant, Floor Huisman and Pikne Kama (2023) Bogs, bones and bodies: the deposition of human remains in northern European mires (9000 BC–AD 1900). Antiquity, First View, pp. 1 - 21. [Cambridge Core]
UK（イングランド）: ノーサンプトンシャー州（the county of Northamptonshire）のオーヴァーストーン（Overstone）で、ローマ時代の石造りの祭祀用の建物跡。青銅器時代にさかのぼる墳丘墓も。ロンドン博物館考古学サービス（Museum of London Archaeology Service）の調査。[BBC]
美術品輸送: 美術品輸送時に梱包された美術品が受ける振動を、計量で電池なしの無線センサーにより同期計測可能と実証。[fabcross]
▶梱包された美術品が輸送時に受ける振動ー軽量の電池なし無線センサで十分に計測が可能であることを実証ー [慶應義塾大学SFC研究所]

2023年1月9日（月）

京都市: 下京区・京都鉄道博物館に1/9午前、「犯人逃走中。拳銃のような物を持っている。」と不審な電話。入館者は一時避難。不審者などは見つからず。府警下京署は業務妨害の疑いで捜査。[京都新聞]
イラン: ファールス州（Ostān-e Fārs）マルヴダシュト郡（Marvdasht）ナクシェ・ロスタム遺跡（Naqsh-e Rostam）で出土したサーサーン朝後期の銘文に、パフラヴィー文字（Pahlavi script）により天文学や年代学に関連した内容。[Tehran Times]
▼ナクシェ・ロスタム遺跡関連記事→2020年4月28日
トルコ: アイドゥン県（Aydın il）クシャダス（Kuşadası）のカドゥカレシ城（Kadıkalesi；Kadı Castle）＝古名アナイア（Ἄνναια；Anaia）の教会で、埋葬された13世紀の女性人骨。34～38歳。教会への大口寄進者か、官僚の妻とみられる。[Hürriyet Daily News]
▼カドゥカレシ遺跡関連記事→2021年12月3日

2023年1月8日（日）

大阪市: 天王寺区・猪飼野セッパラム文庫が3月をめどに生野区に移転し、文庫の拡充・再出発を図る。韓国・朝鮮を中心にアジアの歴史や文化、人権問題を扱った書籍や資料、映像など約2万点を所蔵。[毎日新聞]
沖縄県: 沖縄県立博物館・美術館の平良孝七展で展示パネルの一部に「人権上問題がある」と指摘を受けている件で、同館は1/7までに展示会場から3枚のパネルを取り下げ。「尊重されるべき権利が危ういものとなる恐れがあった」と説明文。[琉球新報]
中国: 河南省三門峡市霊宝市・北陽平遺跡で仰韶文化中期・6000年前の大型住居跡。最大のものは250平方メートル。[新華社]
中国: 山東省淄博市臨淄区趙家徐姚村・趙家徐姚遺跡で、旧石器時代から新石器時代の過渡期・13200年前の人類の遺跡。土製品100点を含む遺物出土。[新華社]
中国: 海南省海口市瓊山区竜塘鎮博撫村・珠崖嶺城跡で、唐時代の遺物が大量に出土。珠崖嶺城跡に唐時代の行政機関があった。[中国新聞網]
イスラエル: テル・シロ遺跡（Tel Shiloh）とテル・ゲゼル遺跡（Tel Gezer）で、中期青銅器時代末・紀元前17世紀の銀貨。磨かれていないため宝飾品ではなく、土器の中に保管。同位体比から見てアナトリア産の銀でつくられ、貨幣として用いられた。従来説より500年古い。また、ガザ地区のTell al-Ajjulでも後期青銅器時代初めの例。[The Jerusalem Post]
▼テル・シロ遺跡関連記事→2019年7月24日
▼テル・ゲゼル遺跡関連記事→2016年11月15日
ベーリング海峡: ベーリング海峡の北側で1994年に採取された海底堆積物が含む窒素15を分析。太平洋から北極海への流れが止まる時期は35700年前で、この時期にベーリング海峡が陸続きになった。13000年前～11000年前には再び海峡となる。陸続きだった間にホモサピエンスがユーラシア大陸から北米大陸に渡ったが、陸続きになって間もなくわたり始めた可能性。[時事通信]
cf. Jesse R. Farmer, Tamara Pico, Ona M. Underwood, Rebecca Cleveland Stout, Julie Granger, Thomas M. Cronin, François Fripiat, Alfredo Martínez-García, Gerald H. Haug, and Daniel M. Sigman (2022) The Bering Strait was flooded 10,000 years before the Last Glacial Maximum. Proceedings of the National Academy of Sciences, Vol. 120, No. 1, e2206742119. [PNAS]

2023年1月7日（土）

シリア: テル・モハンマド・ディヤブ（Tell Mohammed Diyab）で、紀元前2千年紀の殺人現場。建物の床下に彫られていた直径80cm程度の穴の中に2人の遺体。刺し傷があり、手が失われている[Sciences et Avenir]
スペイン: レオン県（Provincia de León） ラス・メドゥラス（Las Médulas）で、ローマ帝国が建設した500マイルに及ぶ水路網。ラス・メドゥラスの金9000ポンドを運ぶため。[El País]
UK（イングランド）: プリマス（Plymouth）のザ・バービカン（The Barbican）の南のコマーシャル・ワーフ（Commercial Wharf）にある英国海軍補給基地跡から、17世紀中ごろの貝殻403枚出土。ほとんどが食用種。1650年ごろにはムール貝が最多。1660年代の層ではムール貝を含まず。17世紀のプリマスの生活の手がかり。
▶Research gives insights into 17th century life in Plymouth [University of Plymouth]
中米: オルメカ（Olmec）とマヤ（Maya）の建物の配置が日の出や日の入りを基準にしている。紀元前1100年～前750年には、すでに260日暦を用いていた。中米の天文学や暦の期限が従来説よりさかのぼる。[Heritage Daily]
cf. Ivan Šprajc, Takeshi Inomata, and Anthony F. Aveni (2023) Origins of Mesoamerican astronomy and calendar: Evidence from the Olmec and Maya regions. Science Advances, Vol 9, Issue 1. [Science Advances]
仏領海外県: フランス領西インド諸島（French West Indies）マルティニーク県（Martinique）レ・トロワ＝イレ（Les Trois-Îlets）のシャトー・ガイヤール（Château Gaillard）で、19世紀のウシなどを利用したトウモロコシ製粉所と18世紀の労働者の家。産業革命や奴隷廃止により、旧来の製粉所は廃止され、労働者は農場の外に住むようになったので、製粉所や労働者小屋は放棄された。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
▶Un moulin à bêtes et une case de travailleurs post-abolition (après 1848) aux Trois-Îlets (Martinique) [INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives]

2023年1月6日（金）

石川県: 金沢市・南新保C遺跡（みなみしんぼしーいせき）で、弥生時代中期～古墳時代のシカのト骨3点。金沢市埋蔵文化財センターの調査。[北國新聞]
▼南新保C遺跡関連記事→2021年12月23日
長野県: 佐久市・香坂山遺跡（こうさかやまいせき）で、旧石器時代・37500年前～37000年前の石棒。結晶片岩製。国内最古の石棒。旧石器時代にさかのぼる石棒は国内では数点しか見つかっていない。[信濃毎日新聞]
▼香坂山遺跡関連記事→2022年9月17日
沖縄県: 沖縄県立博物館・美術館で開催中の写真展「平良孝七展」で展示パネルの一部に「人権上問題がある」として、「平良孝七展の修正を求める会」が1/5記者会見。[琉球新報]
中国: 河南省洛陽市の白草坡東漢陵園遺跡は、後漢の桓帝劉志の陵墓である可能性。巻雲文軒丸瓦や、「光和三年造」の銘文が出土。[中国新聞網]
▼白草坡東漢陵園遺跡関連記事→2020年12月29日
中国: 河南省洛陽市・漢魏洛陽城（かんぎらくようじょう）の千秋門遺跡で、魏晋時代の大規模な地下水道跡を発掘。切石づくりで、磚も用いる。北周時代の整地や北魏時代の磚積み水道により破壊。『水経注』の記載を裏付け。[中国新聞網]
▼漢魏洛陽城関連記事→2019年3月21日
北欧・東欧: 9か国156遺跡の1200点以上の土器を分析。土器製作の知識は、中東からのみでなく、極東からシベリアやカスピ海地域経由で紀元前5900年ごろにヨーロッパに入ってきた。
▶Umiejętność wytwarzania naczyń ceramicznych trafiła do Europy również przez Syberię i rejon Morza Kaspijskiego[Nauka w Polsce]
cf. Ekaterina Dolbunova, Alexandre Lucquin, T. Rowan McLaughlin, Manon Bondetti, Blandine Courel, Ester Oras, Henny Piezonka, Harry K. Robson, Helen Talbot, Kamil Adamczak, Konstantin Andreev, Vitali Asheichyk, Maxim Charniauski, Agnieszka Czekaj-Zastawny, Igor Ezepenko, Tatjana Grechkina, Alise Gunnarssone, Tatyana M. Gusentsova, Dmytro Haskevych, Marina Ivanischeva, Jacek Kabaciński, Viktor Karmanov, Natalia Kosorukova, Elena Kostyleva, Aivar Kriiska, Stanisław Kukawka, Olga Lozovskaya, Andrey Mazurkevich, Nadezhda Nedomolkina, Gytis Piličiauskas, Galina Sinitsyna, Andrey Skorobogatov, Roman V. Smolyaninov, Aleksey Surkov, Oleg Tkachov, Maryia Tkachova, Andrey Tsybrij, Viktor Tsybrij, Aleksandr A. Vybornov, Adam Wawrusiewicz, Aleksandr I. Yudin, John Meadows, Carl Heron & Oliver E. Craig (2022) The transmission of pottery technology among prehistoric European hunter-gatherers. Nature Human Behaviour. [Nature Human Behaviour]
ドイツ: シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン州（Land Schleswig-Holstein）リューベク（Lübeck）のブッデンブロークハウス（Buddenbrookhaus）の拡張工事に伴う発掘調査で、16世紀の市長ハインリッヒ・ブロッケス（Heinrich Brokes）のものとみられる大砲の弾丸。[NDR]
フランス: グラン・テスト地域圏（Grand Est）ムルト＝エ＝モゼル県（Meurthe-et-Moselle）リヴェルダン（Liverdun）で、第二帝政（Second Empire）・1856年に建設が始まった工場の跡地。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
▶La fouille d’une usine sidérurgique à Liverdun (Meurthe-et-Moselle)[INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives]
スカンディナヴィア: スカンディナヴィアで古人骨から得られたDNA297試料を分析し、現代の16638人と比較。ヴァイキング時代のスカンディナヴィアで、例外的に大規模な遺伝子の流入が認められる。バイキング時代以降、ブリテン、アイルランドからスカンディナヴィアへのインパクト。東バルト海からの影響はゴットランド島や南スウェーデンに偏る。現代では南北でウラル系の要素の濃淡がある。
▶DNA from archaeological remains show exceptional immigration to Scandinavia during the Viking era [Stockholms universitet]
cf. Ricardo Rodríguez-Varela, Kristjan H.S. Moore, S. Sunna Ebenesersdóttir, Gulsah Merve Kilinc, Anna Kjellström, Ludvig Papmehl-Dufay, Clara Alfsdotter, Birgitta Berglund, Loey Alrawi, Natalija Kashuba, Verónica Sobrado, Vendela Kempe Lagerholm, Edmund Gilbert, Gianpiero L. Cavalleri, Eivind Hovig, Ingrid Kockum, Tomas Olsson, Lars Alfredsson, Thomas F. Hansen, Thomas Werge, Arielle R. Munters, Carolina Bernhardsson, Birgitte Skar, Axel Christophersen, Gordon Turner-Walker, Shyam Gopalakrishnan, Eva Daskalaki, Ayça Omrak, Patxi Pérez-Ramallo, Pontus Skoglund, Linus Girdland-Flink, Fredrik Gunnarsson, Charlotte Hedenstierna-Jonson, M. Thomas P. Gilbert, Kerstin Lidén, Mattias Jakobsson, Lars Einarsson, Helena Victor, Maja Krzewińska, Torun Zachrisson, Jan Storå, Kári Stefánsson, Agnar Helgason, Anders Götherström (2023) The genetic history of Scandinavia from the Roman Iron Age to the present. Cell. [Cell]
グアテマラ: グアテマラ高地のマヤ文明のキチェ（K’iche’）の都クマルカフ（Q'umarkaj）とその周辺の50遺跡から出土した後古典期（Postclassic）・1200年～1524年の黒曜石を分析。キチェの黒曜石は中央キチェとクマルカフに由来するものが多い。特に価値の高いメキシコのパチュア（Pachua）の黒曜石は中央キチェに集中しており、支配エリートが強く管理していた。しかし、中央から外れると黒曜石の流通には類似性がなく、黒曜石の管理は放任的で、自由な市場交換が行われていた。
▶New study suggests Mayas utilized market-based economics[Washington State University]
▶cf. Rachel A. Horowitz (2022) Economic Integration and Obsidian Consumption in the Late Postclassic Period K'iche’ Region. Latin American Antiquity, First View, pp. 1 - 19. [Cambridge Core]

2023年1月5日（木）

長野県: 長野市・塩崎遺跡群（しおざきいせきぐん）で、弥生時代前期の遠賀川系の土器数百点。表面にもみ跡の残る土器も。遠賀川系土器は西日本に多く出土し、中部・関東地方での出土は珍しい。長野県埋蔵文化財センターの調査。[信濃毎日新聞]
▼塩崎遺跡群関連記事→2016年11月16日
大阪府: 和泉市・信太貝吹山古墳（しのだかいぶきやまこふん）で埴輪列と葺石が良好な状態で出土。和泉市教育委員会の調査。1/11現地公開。
▶信太貝吹山古墳の発掘調査を現地公開します！ [和泉市]
鹿児島県: 西之表市の馬毛島にある旧石器時代の遺跡に関し、防衛省が鹿児島県教育委員会と西之表市教育委員会に対し、工事の許可を求める通知を出していた。[共同通信]
▼八重石遺跡（やえいしいせき）
▼八重石遺跡関連記事→2022年12月12日
中国: 北京市西城区にある、金の中都の光源里遺跡で、河道、道路、井戸、かまど、灰坑など。中国社会科学院考古研究所]
▼金の中都遺跡関連記事→2021年1月13日
中国: 河南省鄭州市・商城（しょうじょう）の書院街墓地（しょいんがいぼち）M2号墓から、金製のマスクや長さ75cmの大型の玉戈。[中国新聞網]
イラン: 東アーザルバーイジャーン州（Ostān-e Āzarbāyjān-e Sharqī；East Azarbaijan）レイラーン（Leylan）にあるテペ・チャマン遺跡（Tepe Chaman）で、新石器時代・紀元前5千年紀の村の範囲が明らかに。[Tehran Times]
イラン: ファールス州（Ostān-e Fārs）パサルガダエ（Pasargadae）タンゲ・ボラギ地区（Tangeh Bolaghi）で、岩に刻まれたサーサーン朝の銘文。橋やダム、道路の建設を記し、建設者への祝福をパフラヴィー文字（Pahlavi script）で記す。[Tehran Times]
ヨーロッパ: ヨーロッパの後期旧石器時代・2万年前の洞窟絵画にみられる点、線、Y字形を初期の文字と見なす研究が発表される。異論も多い。[LiveScience]
cf. Bennett Bacon, Azadeh Khatiri, James Palmer, Tony Freeth, Paul Pettitt and Robert Kentridge (2023) An Upper Palaeolithic Proto-writing System and Phenological Calendar. Cambridge Archaeological Journal, First View, pp. 1 - 19. [Cambridge Core]
イタリア: ヴァレーゼ県（Provincia di Varese）チッティーリオ（Cittiglio）のサン・ビアジョ（San Biagio）の教会で2006年に出土した中世・11～13世紀の殺人犠牲者が、同一の鉄剣による、頭への数回の傷で死亡したことを復元。不意討ちを受けたらしい。19～24歳の男性で、弓の使い手。地元の有力者デ・チッティーリオ家（De Citillio）のメンバーの可能性。[LiveScience]
cf. Chiara Tesi, Stefano Ricci, Jacopo Crezzini, Paola Badino, Roberta Fusco, Chiara Rossetti, Ilaria Gorini, Marta Licata (2022) Wounded to death. Holistic, multimodal reconstruction of the dynamics in a case of multiple perimortem cranial injuries from a medieval site in northern Italy. Journal of Archaeological Science: Reports, Volume 46, December 2022, 103643. [ScienceDirect]
▼ロンバルディア州（Lombardia）
ポーランド: ウッチ県（Województwo łódzkie；Łódź province）ウッチ（Łódź）で、建物の改築中に、第二次世界大戦中の1939年にナチスに奪われないように隠したユダヤ人の貴重品400点が、木箱に納められた状態で発見。[The First News]
ドイツ: マインツ（Mainz）で2008年に出土した中世・12世紀の宝飾品を中性子により透視。内部に布で包んだ骨。[Archäologie in Deutschland]
エストニア: エストニア南部、リヴォニア地方（Livonia）の中世～近世・13～17世紀の都市と農村の墳墓遺跡4か所から176人の子供の骨のコラーゲンについて炭素（δ13C）と窒素（δ15N）を安定同位体分析。陸上のC3食物と動物性たんぱく質を合わせた食生活を主とする。都市と農村で違いがあり、農村間にもわずかな違い。リヴォニア地方では子供の養育に共通の文化伝統があった。母乳で1～2年育て、1歳時に補助食が与えられる。年長になってくると大人の食生活と同等となり、離乳後は働き始め、大人たちと同等の社会的地位を得たことを示す。
cf. Alessandra Morrone, Mari Tõrv, Dario Piombino-Mascali, Tina Saupe, Holar Sepp, Heiki Valk, Martin Malve, Ester Oras (2023) Children of the grave: Investigating non-adult feeding practices in medieval and early modern Estonia through stable isotope analysis. PLOS ONE, 18(1): e0279546. [PLOS ONE]
UK（イングランド）: ノーサンプトンシャー州（the county of Northamptonshire）コービー（Corby）のプライアーズ・ホール（Priors Hall）で、ローマ時代の道路。征服直後頃に作られ、4世紀の修築の跡も。北はラクストン（Laxton）やグレート・カスタートン（Great Casterton）、南はケタリング（Kettering）やアーチェスター（Irchester）につながる。Oxford Archaeology Eastの調査。[Northamptonshire Telegraph]
UK（イングランド）: ハンプシャー州（the county of Hampshire）ポーツマス（Portsmouth）にあるサウスシー城（Southsea Castle）で、19世紀初めの旋回砲の砲座や、17世紀後半の三角形の防御壁。
▶Historic defences revealed near Southsea Castle[Shaping Portsmouth]
サウスシー城はヘンリー8世のとき、フランスや神聖ローマ帝国からの侵略を防ぐため建設。1680年代に拡張し、ナポレオン戦争中の1814年に修築。[Heritage Daily]
▼サウスシー城関連記事→2020年10月14日
メキシコ: メヒコ州（Estado de México）サンタ・イサベル・イスタパン（Santa Isabel Ixtapan）で1954年にマンモスの骨が見つかった場所は、9000年前の狩猟採集民の季節的なキャンプだった。[Mexico News Daily]
メキシコ: タバスコ州（Tabasco）ハルパ・デ・メンデス（Jalpa de Méndez）で、高さ2mのプラットフォーム2基。未知のマヤ遺跡。メキシコ国立人類学歴史学研究所（Instituto Nacional de Antropología e Historia）の調査。
▶Par de plataformas da cuenta de un sitio maya que no figuraba en el Atlas Arqueológico de Tabasco [Instituto Nacional de Antropología e Historia]
ブラジル: アマゾンの先住民が、肥沃な「暗黒の台地」を人工的に作り出していた可能性。クイクロ人（Kuikuro）が灰、食物廃棄物、焼き畑によって肥沃な土壌を作り出しており、その土壌の成分は遺跡付近の肥沃な土壌と合致。[ScienceNews]
cf. Morgan J. Schmidt, Samuel Lukens Lukens Goldberg, Michael Heckenberger, Carlos Fausto, Bruna Franchetto, Jennifer Watling, Helena Lima, Bruno Moraes, Wetherbee Bryan Dorshow, Joshua Toney, Yamalui Kuikuro, Kumessi Waura, Huke Kuikuro, Wate Kuikuro, Maricá Kuikuro, Takumã Kuikuro, Yahila Kuikuro, Afukaka Kuikuro, Wenceslau Texeira, Bruna Rocha, Vinicius Honorato, Hugo Tavares, Marcos Magalhães, Carlos Augusto Palheta Barbosa, João Aires da Fonseca, Kelton Mendes, Luís Reynaldo Ferracciú Alleoni, Carlos E Cerri, Manuel Arroyo-Kalin, Eduardo Neves, J Taylor Perron (2022) Intentional Creation of Carbon-Rich Dark Earth Soils in the Ancient Amazon. American Geophysical Union meeting, Chicago, December 16, 2022.[AGU]

2023年1月4日（水）

韓国: 忠清南道扶余郡扶余邑双北里にある扶余 北羅城から扶蘇山城に連なる城壁で、百済による城壁築造の土木技術を確認。自然地形の違いに応じて盛土方法を変える。[文化財庁]
▼文化財庁は2024年5月17日から国家遺産庁
韓国: 全羅北道長水郡渓南面・好徳里古墳群 （ホドンニこふんぐん）で、加耶の心葉形（ハート形）金製耳飾り。[聯合ニュース]
中国: 河北省邯鄲市臨漳県・鄴城遺跡（ぎょうじょういせき）のうち鄴南城の宮城軸線北部にある206号大殿が、北朝の東魏と北斉の皇帝の寝宮と確定。鄴城は曹魏（三国魏）、後趙、冉魏、前燕（以上、五胡十六国）、東魏、北斉（北朝）の6王朝の都。[中国新聞網]
▼鄴城遺跡関連記事→2017年5月23日
中国: 山西省運城市絳県横水鎮・横水西周墓地のM2022号墓で、帯鉤や、殉葬されたイヌの遺体。西周時代の国君クラスの墓。青銅器1000件。横水西周墓地では西周時代の墓1299基と車馬坑33基が出土している。[中国新聞網]
▼横水西周墓地関連記事→2022年7月5日
イスラエル: Khirbat el-Masaniの教会跡で、鉄の輪に鎖でつながれたビザンティン時代・1500年前の司祭の遺体。極端な禁欲主義を示すか。[Heritage Daily]
ブルガリア: カリアクラ岬（Калиакра；Kaliakra）の北の黒海の海底で、3本マストの沈没船から18世紀末～19世紀初めの大砲や弾丸。[The Sofia Globe]
フランス: オーヴェルニュ＝ローヌ＝アルプ地域圏（Auvergne-Rhône-Alpes）アリエ県（Allier）ネリ・レ・バン（Néris-les-Bains）の古代都市アクアエ・ネリイ（Aquae Nerii）の南東、シュマン・デ・ビュイ（Chemin des Buis）で、ガロ＝ローマ時代の墓廟。オーヴェルニュ地方で同種のものは初の発見。国立予防考古学研究所（INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）の調査。
▶Un mausolée antique découvert à Néris-les-Bains (Allier) [INRAP: Institut national de recherches archéologiques préventives）]
ポルトガル: レイリア（Leiria）のラガール・ベーリョ岩陰遺跡（Lagar Velho）で、2900年前のヒゲワシ（bearded vulture；Gypaetus barbatus）の糞石を多量に発見。ラガール・ベーリョ岩陰遺跡は後期旧石器時代・グラヴェット文化（Gravettian）の小児埋葬などで知られているが、同遺跡は人類が使用しただけでなく、ヒゲワシの巣としても利用されており、遺跡に骨を集めたのはヒゲワシである可能性も。
cf. Montserrat Sanz, Joan Daura, Ana Maria Costa & Ana Cristina Araújo (2023) The characterization of bearded vulture (Gypaetus barbatus) coprolites in the archaeological record. Scientific Reports, volume 13, Article number: 57. [Scientific Reports]
▼ラガール・ベーリョ岩陰遺跡関連記事→2010年1月27日

2023年1月3日（火）

岩手県: 大槌町・吉祥寺で、江戸時代中期・1775年に建てられた宝篋印塔の内部と地下から、大量の一字一石経。塔内に宝篋印塔陀羅尼経を記したとみられる石。地下の石室には、墨書の般若心経の経石と漆書きの金光明最勝王経の経石をそれぞれ納めたかめ。[河北新報]
東京都: 中野区に、故・前田耕作氏が構想した「シルクロード文庫」が3/31開設。東西交流史の研究書など1万点以上収蔵。[中日新聞]
富山県: 富山市・辻ケ堂遺跡（つちがどういせき）で、弥生時代後期の方形周溝墓3基。[北日本新聞]
鹿児島県: 日置市美山の玉山神社で、江戸時代に作られた薩摩焼の仁王像の一部。成分は江戸期の苗代川系の薩摩焼と一致。制作年とみられる「天保十五年」（1844年）や「朴」「鄭」「姜」といった朝鮮名が刻まれている。玉山神社は、朝鮮出兵で島津義弘が連れ帰った朝鮮陶工が美山に移住した後、1605年に創建。祭神は朝鮮の始祖檀君。仁王像は明治初年の廃仏毀釈で破壊されたとみられる。[南日本新聞]
韓国: 青瓦台（チョンワデ：旧大統領府）の圏域で、高麗時代の瓦片など出土。文字が刻まれた石も。従来、青瓦台の一帯は朝鮮時代の景福宮後苑として知られていたが、高麗時代の南京の離宮が所在した。[聯合ニュース]
オマーン: 北シャルキーヤ行政区（Al Sharqiyah North）アル・ムダイビー州（Al Mudhaibi）のAl Gharyein遺跡で、5000年前の集落。塔を中心に、多数の部屋からなる住居が囲み、墳墓なども。600平方メートル規模の大型建物が複数ある。農耕、牧畜、銅の溶解、交易を営む。[Oman Observer]
USA: アメリカ中西部（American Midwest）の中期～後期ウッドランド時代（Woodland）の土器では混和材（temper）が砂粒（grit）から石灰岩に移行。石灰岩を混和材として利用することが土器の重量に与える影響を研究　4.5%の軽量化が実現しており、軽量化が混和材選択の理由と推定。
cf. Anna Mika, Metin I. Eren, Richard S. Meindl, Michael J. O’Brien & Michelle R. Bebber (2023) On the evolution of limestone-tempered pottery in the American Midwest: an experimental assessment of vessel weight and its relationship to other functional/mechanical properties. STAR: Science & Technology of Archaeological Research, Volume 9, 2023 - Issue 1. [Taylor & Francis Online]

2023年1月2日（月）

兵庫県: 尼崎市に、シャレコーベ・ミュージアム。頭蓋骨にかかわるものならなんでも収集。日曜日のみ開館。[神戸新聞]
スリランカ: ミヒンタレー（Mihintale）の僧院で出土した人骨は、アヌラーダプラ（Anuradhapura）のデーヴァーナンピヤ・ティッサ王（Devanampiyatissa；在位紀元前247～前210年）の時代に初めて出家した女性アラハント・アヌラ（Arahant Anula）である証拠はない。[The Island]
タジキスタン: Hisor Sanginov 地域の山中で、岩に刻まれた古代ギリシャ文字の銘文。バクトリア地域に当たる。 [Greek Reporter]
ポーランド: グダニスク（Gdańsk）の市役所地下から930年代の木造の城壁が発見されたという昨年12月の発掘成果に関し、25年前にすでに指摘していると、年輪年代学のトマシュ・ヴァジュニ（Tomasz Ważny）教授が主張。市役所地下の中世初期の建造物を930年から932年の間に比定していた。[Nauka w Polsce]
▼グダニスク市役所関連記事→2022年12月22日
スペイン: アリカンテ県（Provincia de Alicante）ロハレス（Rojales）のカベソ・デル・モリーノ遺跡（Cabezo del Molino）で、ビザンティン時代・6世紀の墓地に、ユスティニアヌス帝のころのペストで死亡したと思われる人の墓30基、62体。家族が抱き合って埋葬されているなどの例がある。スペイン最初のパンデミック。ユスティニアヌス朝のペストの証拠がスペインで見つかるのは初めて。ユスティニアヌス帝によるローマ帝国の復興政策「Renovatio imperium」が、人々の移動によりペストの流行をスペインにもたらした可能性。[El Español]
▼カベソ・デル・モリーノ遺跡関連記事→2022年11月2日
リビア: 海岸地域にあるスルト（Sirte）のサバア地区（Sabaa）にある旧ISの砦で大型墓。遺体18体。スルトは2015年～2016年にISの支配下にあった。 [Ahram Online]

2023年1月1日（日）

静岡市: 駿河区・有東遺跡（うとういせき）で1995年に弥生時代中期の木棺墓1基が出土していた。登呂ムラの人びとの先祖の墓か。静岡市の調査。2月に初公開。[静岡新聞]
沖縄県: 中城村・中城城跡（なかぐすくじょうあと）で15世紀前半とみられる刻印石137個。刻印石は沖縄県内では首里城跡と浦添城跡でも発見されているが、中城城跡が最多。本土よりも200年古い。[沖縄タイムス]
▼中城城跡関連記事→2022年2月24日
イラン: ザンジャーン州（Ostān-e Zanjān）でサーサーン朝の作業城跡。灰、炭とともに、粘土と石による遺構。チェル・アーバード塩山（Chehrābād）との関係を推定。[Tehran Times]
▼チェル・アーバード塩山関連記事→2021年11月27日
ロシア: クラスノヤルスク（Красноярск；Krasnoyarsk）のシンノエ墓地（Шинное；Shinnoye）で、2000年以上前のスキタイ様式のクルガン墓（kurgan）。巨大な墓壙に木材で壁を作り、木の皮で覆う。50人を埋葬し、各種副葬品のほか、シカを表す青銅製品も。タガール文化（Tager）の後期・2400年前～2100年前のものに似る。また、タガール文化から分離されたテシニア文化（Tesinian culture）の可能性も。[Haaretz]

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